目次

  1. 1. 相続税には連帯納付義務がある
    1. 1-1. 連帯納付義務とは? 時効はある?
  2. 2. 「連帯保証」との違いは?
    1. 2-1. 相続税の連帯納付義務がある人
    2. 2-2. 相続を放棄するとどうなる?
  3. 3. 相続税の連帯納付で払う金額は?
    1. 3-1. 納付期限を過ぎたら、利子税・延滞税が加算
  4. 4. 連帯納付義務の流れ、税務署からのアプローチ
    1. 4-1. 税務署から「未納」の通知が届く
    2. 4-2. 納税を求める通知書が届く
    3. 4-3. 督促状が送付される
  5. 5. 相続税の連帯納付義務の注意点

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相続税は本来、相続した財産に応じて税額が決まります。基本的に、相続財産の金額の一部を相続税にあてれば足りることが多く、納税だけで相続財産を使い切ることはありません。しかし、「連帯納付義務」が適用された場合は、相続財産のすべてが相続税の納税にあてられる可能性があります。

連帯納付義務とは、「相続税について、各相続人がお互いに連帯して納付しなければならない」という相続税法のルールです。たとえば被相続人である父または母の、長男と次男に相続税が生じた場合、もし長男が相続税を納付しなければ、長男が納めるべき相続税を次男が納付しなければなりません。

連帯納付義務は、「相続人本人が納税をした」「相続人本人が納税猶予や延納の手続きをした」「納期限から5年が経過し、時効となった」という場合を除き、必ず適用されます。相続人が複数いる場合は、連帯納付義務から免れることは難しいでしょう。また、督促を受けたら時効は中断されるため、時効の到来を待つのも現実的ではありません。

なお、相続税の連帯納付義務は、借金などの債務整理に適用される「連帯保証」とは異なります。連帯保証の場合は、あらかじめ連帯保証人となる手続きが必要ですが、連帯納付義務はそうした手続きはなく適用されます。また、債務を負う限度額についても違いがあります。次の項からさらに詳しく連帯納付義務のルールを見ていきましょう。

最初に、連帯納付義務の対象となる人(連帯納付義務者)について説明します。相続税法第34条の規定では、同一の被相続人から相続または遺贈により財産を取得した人が、連帯納付義務の対象として定められています。さらに、その被相続人から生前贈与を受け、相続時精算課税制度を利用していた人も、連帯納付義務の対象に含まれます。

ただし、上記に当てはまる人でも、連帯納付義務から外れる方法があります。「相続放棄をする」という方法です。被相続人からの相続の一切を放棄することで、連帯納付義務を免れることができます。

相続放棄を選択する場合に注意したいのは、「家庭裁判所での手続きが必須」であることです。原則として相続開始日から3ヶ月以内に家庭裁判所で手続きをしなければ、相続放棄は認められません。たとえ遺産分割協議の席で「私は相続を放棄する」と宣言しても、家庭裁判所の手続きがなければ、連帯納付義務が適用されてしまうので注意してください。

なお、相続放棄をしても、被相続人の死亡にともなう死亡保険金や死亡退職金を受け取ることは可能です。この場合は受け取った死亡保険金や死亡退職金は、連帯納付義務の対象となります。

相続税の連帯納付義務は、当事者となる各相続人が平等に負うことになりますが、納付を求められる税額には限度が設けられています。限度額は、以下の算式で計算します。

連帯納付義務の限度額=相続した遺産額-納付済の相続税額

たとえば相続財産として2000万円を受け取り、自身の相続税として300万円を納付した場合、連帯納付義務の限度額は1700万円となります。つまり、相続で得た利益を限度として、連帯納付義務が適用されるということです。

しかし、連帯納付義務の場合も、納税すべき期限が定められるため、期限を過ぎると税額が増えてしまいます。その場合に加算される税は「利子税」と「延滞税」です。

利子税とは、未納分の相続税に対して、遅れた日数に応じて支払うものです。連帯納付義務の場合は、連帯納付義務者に督促状が届いた日(納付基準日)からカウントされます。利子税の税率はその年により変わり、令和3年は年率1.0%に設定されています。

さらに、納付基準日から2ヶ月を経過しても完納できないと、延滞税が適用されます。延滞税は利子税と同じく、遅れた日数に応じて課せられるものですが、税率が高い点に注意が必要です。令和3年の延滞税の税率は年率8.8%となっています。

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では、連帯納付義務の手続きのおおまかな流れについて説明します。相続税の納付期限は、申告期限と同じく、相続開始日から10ヶ月以内です。この期限内に納税がなければ、税務署から滞納している本人に督促状が送付されます。

督促を受けても納税をしなかった場合、本人に対して財産調査が実施され、場合によっては財産の差し押えや競売といった滞納処分が行われます。しかし、滞納者本人がすでに相続財産を使い切るなどして、納税するお金(財産)がないというケースがありえます。そうした場合は連帯納付義務者として、ほかの相続人に納税が求められます。

連帯納付義務者に対する税務署からのアプローチは大きく分けて3段階あります。まずは、滞納者に督促したにもかかわらず納税がなされない場合、ほかの相続人に「完納されていない旨のお知らせ」という書面が届きます。この時点では、納税を求められませんので、連帯納付義務を求められる前に相続人同士で解決をはかることをおすすめします。

その後、相変わらず滞納者本人から納税がなされないと、ほかの相続人に「納付通知書」という書面が送付されます。この納付通知書は、連帯納付義務者に対して納税を求める内容となっており、納付すべき税額や期限が記載されています。

さらに、連帯納付義務者に対して納付通知書が送付された日から2ヶ月を経過しても完納されない場合は、連帯納付義務者に対して督促状が送付されます。その後は、連帯納付義務者も滞納処分の対象となり、財産の差し押えなどが行われる可能性があります。

連帯納付義務は、現金一括の納付が原則となっています。本来、相続税には「延納」や「物納(税金を金銭以外で納める方法)」など、ほかの納付方法があるのですが、連帯納付義務の場合は利用できません。また、連帯納付義務を負ったまま相続人が亡くなると、その納付義務は家族に相続されることになります。

連帯納付義務者が納税をする場合の注意点もあります。この場合、相続税を肩代わりしたことになるため、贈与税の問題が生じます。この問題を避けるには、当事者同士で、「贈与ではなく金銭の貸し借りである」といった合意が必要です。

このように、連帯納付義務についてはさまざまな問題がからむことから、安易な判断は危険です。どのように対処すべきか悩んだら、専門家に相談するようにしましょう。

(記事は2021年5月1日時点の情報に基づいています)

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