相続税の物納とは 物納できる条件と財産の種類、手続き方法を解説
相続税は「現金で一括納付」が原則です。しかし、お金で納めるのがどうしても難しい場合、株式や不動産といったお金以外の財産で納める「物納」が認められます。ただし、どんな財産でも受け入れられるわけではありません。また、認められるのは非常に限定的です。物納の条件や対象となる財産、手続きについて税理士が解説します。
相続税は「現金で一括納付」が原則です。しかし、お金で納めるのがどうしても難しい場合、株式や不動産といったお金以外の財産で納める「物納」が認められます。ただし、どんな財産でも受け入れられるわけではありません。また、認められるのは非常に限定的です。物納の条件や対象となる財産、手続きについて税理士が解説します。
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亡くなった親などから、お金や土地などの財産を受け継いだ場合、その受け取った財産にかかるのが相続税です。相続税は金銭で納付することが原則ですが、一括納付によっても、分割払いによる延納によっても金銭で納付することが困難な場合は、納税者の申請により、その納付が困難な金額を限度として相続財産で納付することが認められています。これを物納と言います。
物納は下記のすべての要件を満たしている場合に許可を受けることができます。
物納は延納によっても金銭で納付することが困難な場合に、その困難とする金額を限度として物納の申請することが要件になります。
物納できる財産は相続で取得した国内の財産のみに限定されています。相続時精算課税制度を使った贈与によって取得した財産は含みません。相続時精算課税制度とは、贈与額が2500万円に達するまでは贈与税はかからず、2500万円を超えた部分は贈与税率20%で課税される制度のことです。さらに、物納に充てる財産には優先順位がありますので自由に物納財産を選定することができません。
物納しようとする相続税の納期限または納付すべき日(物納申請期限日)までに、物納申請書に物納手続関係書類を添付して税務署へ提出する必要があります。
物納に充てる財産の種類は、不動産、船舶、国債証券、地方債証券、上場株式といった第1順位から優先的に物納申請をしますが、その財産が財務局などによって管理や処分に向かない財産と見なされ、「管理処分不適格財産」に該当する場合は物納申請ができません。また、財産が自由に使用や処分しづらい「物納劣後財産」に該当する場合は、ほかに物納に充てるべき適当な財産がない場合に物納申請が認められます。
後順位の財産は、税務署長が特別の事情があると認める場合及び先順位の財産に適当な価額のものがない場合に限って物納に充てることができます。ただし、重要文化財として指定された絵画などの特定登録美術品は上記の順位にかかわらず一定の書類を提出することにより物納に充てることができます。
財産が自由に使用や処分しづらいなど、ほかの財産と比べて売却などが難しい財産を物納劣後財産と言います。そのため、ほかに物納にあてるべき適当な財産がある場合には物納劣後財産を物納にあてることができません。下記のような不動産は物納劣後財産になります。
管理や処分に向かず、物納にできない財産のことを管理処分不適格財産と言います。下記のような不動産は管理処分不適格財産になります。
物納財産を国が収納するときの価額は、原則として相続税の課税価格に算入した価額になります。ただし、実際に収納されるまでに財産の状況に著しく変化があった場合には、収納時の現況により税務署長が収納価額を決定します。なお、小規模宅地等の特例を適用する場合は、特例適用後の価額が収納価額となります。
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相続の相談が出来る税理士を探す物納申請をする場合、相続税の納期限または納付すべき日までに物納申請書及び物納手続関係書類を税務署長に提出する必要があります。
ただし、物納申請期限までに物納手続関係書類の提出が難しい場合は、物納手続関係書類提出期限延長届出書を提出することで1回の届出書につき3カ月を限度として、最長で1年間の提出期限を延長することができます。
なお、物納申請書が提出された場合、税務署長はその物納申請に係る調査を行い物納申請期限から3カ月以内に許可または却下します。ただし、申請財産の状況によって許可または却下の期間が最長9カ月まで延長する場合があります。
物納申請書(各種確約書を含む)
物納申請書は物納を申請するための書類です。この書類には物納を申請する税額などを記載します。併せて物納する申請税額の根拠を示すため、「金銭納付を困難とする理由書」を添付します。この理由書には金銭で支払うことが困難である旨を具体的数字に置き換えて記載します。
物納財産目録
物納財産目録は物納しようとする財産の詳細な情報を記載します。財産の種類によって書式が異なります。
物納劣後財産等を物納に充てる理由書
物納劣後財産を物納に充てる場合にはこの理由書を添付します。
物納手続関係書類
物納する財産ごとに必要書類が異なります。物納手続関係書類チェックリストに基づいて必要書類を準備します。
物納の許可があった場合には相続税の納期限または納付すべき日から収納の日までの期間について利子税がかかります。また、物納が却下された場合などは却下された日までの期間について利子税がかかります。
納税資金がない場合、物納を選択する方法と不動産を売却して現金化する方法を比較検討するケースがよくあります。
物納申請は条件が非常に厳しく、かつ、物納申請をするための判断や準備に時間を要するため、物納申請は年間100件もないのが現状です。そのため、納税資金が不足する場合は不動産を売却して現金化したうえで納税する方法を選択することが実務上多くなっています。
ただし、納税資金を売却する方法に限定してしまうといざ売却できなかったときのリスクが出てしまうため、物納も視野に入れながら相続手続きをしたほうが良いでしょう。そのためにも、納税資金に困りそうなときは物納手続きなど相続に強い税理士に早めに相談することをお勧めします。
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(記事は2023年2月1日時点の情報に基づいています)
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