相続税の納付が遅れると延滞税が増える カギは納税資金の準備
相続税の支払い期限は、相続が発生してから10カ月以内です。この期限までに、相続税の申告とともに納税も済まさなくてはなりません。今回は、相続税の納税が遅れた場合のペナルティや、納税をしないままでいた場合の「滞納処分」などについて、元東京国税局国税専門官のライターが解説します。
相続税の支払い期限は、相続が発生してから10カ月以内です。この期限までに、相続税の申告とともに納税も済まさなくてはなりません。今回は、相続税の納税が遅れた場合のペナルティや、納税をしないままでいた場合の「滞納処分」などについて、元東京国税局国税専門官のライターが解説します。
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前回の記事では、相続税の申告が遅れる、または申告漏れの財産があった場合のペナルティを解説しました。本来申告するべき税額に対して不足があれば、その不足分に対して、「加算税」が課せられます。
しかし、気をつけるべき点は加算税だけではありません。たとえ正しい申告を期限内にしたとしても、納税が遅れれば、別途、「延滞税」が課せられるからです。延滞税については後ほど解説しますが、その前にどれくらい相続税の滞納が起きているかを見ておきましょう。
国税庁が発表した「平成30年度租税滞納状況」によると、平成30年度中に新規発生した相続税の滞納額は308億円です。相続税は、基本的に相続した財産の一部を納税に充てれば滞納になることはないのですが、事実として毎年数百億円単位の滞納が生じています。
前述のとおり、相続税の支払いが遅れる、つまり滞納をすると「延滞税」が課せられます。延滞税の計算は、CDなどをレンタルしたときの遅延金をイメージするとわかりやすいと思います。期限から遅れれば遅れるほど、延滞税の金額が増えていきます。
ここでポイントとなるのは、納期限から2カ月を経過する日までと、それ以後では延滞税の率が大きく違うという点です。まず次の算式を見てください。
【納期限の翌日から2月を経過する日まで】
年「7.3%」と「特例基準割合+1%」のいずれか低い割合
【納期限の翌日から2月を経過する日の翌日以後】
年「14.6%」と「特例基準割合+7.3%」のいずれか低い割合
上記の算式にある「特例基準割合」とは、財務大臣が年に1度告知する割合に基づき決まるものです。そのため、特例基準割合の見直しに伴って、延滞税の率も年に1回変わることになります。
ただし、平成30年1月1日から令和2年12月31日の3年間については、特例基準割合が変わらず、延滞税の率は以下のとおりです。
納期限の翌日から2月を経過する日まで:2.6%
納期限の翌日から2月を経過する日の翌日以後:8.9%
このように、納期限から2カ月以内に完納するか、それ以上に遅れるかによって延滞税の割合は変わります。そのため、まずは納期限に間に合わせるのが第一ですが、間に合わない場合も、2カ月以内に完納するようにしましょう。
期限までに納税をしないでいると、税務署から滞納者に対して督促状が送られます。それでも納税をせずに放置していると、「滞納処分」が執行されます。
滞納処分には、「差押」「換価」「配当」という3段階があります。単純に説明すると、財産を強制的に差し押さえられ、公売にかけられ、滞納税額に充てられるということです。
ここで差し押さえられる財産は主に不動産ですが、ときには滞納者が所持する動産や有価証券、預金などの債権が差し押さえられることもあります。なお差し押さえられる財産は、納税者が選ぶものではなく、徴収職員の裁量により決まります。
ただし、差押財産を選択するときのルールとして、「滞納者の生活の維持等」というものがあり、基本的には滞納者の生活の維持や、事業の継続に影響が少ない財産から選択されるため、いきなり自宅や会社の土地家屋を差し押さえられるといったことは考えにくいでしょう。
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相続の相談が出来る税理士を探す延滞税や滞納処分を避けるには、とにかく期限までに納税を済ませなくてはなりません。そのためには、計画的に納税資金を準備しておく必要があります。
さしあたって必要となるのは、できるだけ早い段階で相続財産の内訳を把握しておくことです。もし、相続財産の多くが現金や預貯金、換金しやすい有価証券であれば、納税は容易です。しかし、不動産が大半だった場合には、納税をするための資金が不足してしまう可能性があります。
相続の後にあわてて不動産を売ろうとしても、相続税の支払期限までに売れるという保証もないため、注意が必要です。このように相続財産の多くを換金しにくい財産が占める場合は、相続前から財産の一部を売却したり、生命保険に加入したりといった対策が必要です。
このような対策が取れない事情があれば、相続税の支払期限までに、税務署に相談しておくことをお勧めします。相続税には、担保を提供することで、分割払いにできる「延納」や、不動産を納税に直接充てる「物納」といった制度が用意されているため、こうした制度もうまく活用し、滞納になるのを防ぎましょう。
(記事は2020年2月1日時点の情報に基づいています)
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