相続税の期限は死後10ヶ月 納付方法や相続人の義務を解説
多額の遺産を相続すれば、相続税の金額もそれだけ多くなります。相続税は、故人の死亡から10カ月以内に現金一括で納税することが原則です。納税の見通しが立たない場合には延納や物納を申請することができますが、どのような場合でも認められるわけではありません。この記事では、相続税の納税方法について詳しくお伝えします。
多額の遺産を相続すれば、相続税の金額もそれだけ多くなります。相続税は、故人の死亡から10カ月以内に現金一括で納税することが原則です。納税の見通しが立たない場合には延納や物納を申請することができますが、どのような場合でも認められるわけではありません。この記事では、相続税の納税方法について詳しくお伝えします。
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相続税の納税期限は、通常、故人が死亡した日の翌日から10カ月以内です。10か月後の月命日と覚えておくとよいでしょう。申告の期限も同じ日です。
10カ月もあればかなり余裕をもって手続きができるように思えますが、いざ相続してみると思いのほか短いことがわかります。
故人が死亡してからしばらくの間は、葬儀や法事で遺産の相続に取りかかることができません。少し落ち着いた頃から、誰がいくら相続するかを話し合って、それぞれの相続税を計算することになります。話し合いがまとまらなかったり、遺産の価値を調べるのに時間がかかったりすれば、期限はあっという間にやってきます。
相続税の納税が期限に遅れた場合は延滞税が課されます。延滞税の税率は2段階あり、納税期限から2か月以内は年2.6%ですが、2か月を超える期間については年8.9%となります(税率は平成30年~令和元年のものです)。
なお、相続税の申告も期限に間に合わなかった場合は、延滞税に加えて無申告加算税(税率5%~20%)も課されます。
相続税の納税は現金一括が原則ですが、クレジットカードの利用もできます。
現金で納付する場合は、通常、金融機関の窓口で手続きをします。現金での納付には納付書が必要になるため、あらかじめ税務署でもらっておきましょう。
申告書を提出した税務署で納付もできますが、現金引き出しの手間や防犯上の観点から、税額が大きい場合にはあまりおすすめできません。
税額が30万円以下であればコンビニエンスストアでの納付もできます。税務署でバーコードが印刷された納付書をもらうか、国税庁ホームページでQRコードを作成して印刷する必要があります。
クレジットカードでの納付は、通常のショッピングと同じように個人の限度額の範囲内で利用できます。
ただし納付する税額とは別に、1万円までごとに76円(消費税別)の決済手数料が必要になるほか、分割払いを指定すると分割払手数料も必要になります。
クレジットカードでの納付は、インターネット上の専用サイトで手続きをします。税務署や金融機関、コンビニエンスストアでは取り扱っていません。詳しくは国税庁ホームページで確認してください。
相続人が複数いると、中には相続税を納税できない人も出てきます。家族どうしであれば、相続税を立て替えたり肩代わりしたりといったケースもあるかもしれません。
一時的に立て替える場合は問題になりませんが、立て替えても催促しない場合や代わりに納税することになった場合は、相続税にあたる金額を贈与したとみなされます。金額しだいでは贈与税がかかる可能性があるため注意が必要です。
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相続の相談が出来る税理士を探す相続税には連帯納付義務があります。納税しない人がいた場合に、他の相続人が連帯して代わりに納めなければならないというものです。
期限までに相続税を納めない人がいれば、まず、その人に督促が行われます。それでも納付されない場合は、他の相続人(連帯納付義務者)に連絡があり、のちに督促が行われます。
連帯納付義務者が他の人の相続税を負担することになっても、相続で取得した財産の価額が限度となります。つまり、自身がもともと持っていた財産を使ってまで他の人の相続税を納めることはありません。
連帯納付義務で他の人の相続税を督促されないようにするには、納税したかどうか相続人どうしで確認し合うといった対策が考えられます。
遺言書で家族以外の第三者が遺産を継いだ場合は、特に注意が必要です。第三者でも遺産をもらった以上は相続税が課税されます。しかし、その人が相続税を納税しなければ、家族が代わりに納めなければなりません。もし逃げられるようなことになれば、代わりに納めた相続税を取り戻すことも困難になります。
多額の遺産を相続したとしても、納税期限までに換金できるとは限りません。期限までに納税できない場合は、税務署に延納や物納を申し出ることができます。
相続税の延納は、最長20年にわたって分割払いできる制度です。税額が10万円を超えて現金一括納付ができないときに申請できます。
申請は本来の納税の期限までにする必要があるほか、延納する税額と利子税に見合った担保(主に不動産)の差し入れが必要です(延納する税額が100万円以下で、かつ延納期間が3年以下の場合は不要です)。
延納をしても現金で納税できない場合や、延納の途中で納税が困難になった場合は、相続した財産をそのまま納める物納の申請ができます。物納できる資産は相続によって得た不動産などに限られ、相続人がもともと持っていた資産を充てることはできません。
物納する財産は相続税評価額で評価されます。不動産は評価額が実際の取引価格より低くなることが多いため、物納に充てるかどうかを慎重に検討する必要があります。
たとえば、物納する不動産の実際の取引価格が1,000万円であっても、相続税評価額が600万円であれば物納に充てても600万円分を納めたことにしかなりません。節税のために特例を適用した場合は特例適用後の価格で評価されるため、価格はさらに低くなります。
延納や物納ができない場合は、金融機関から納税資金を借りることも一つの方法です。借り入れの条件については、金融機関に相談してみるとよいでしょう。
どうしても納税できない場合は、税務署に相談して「換価の猶予」という手続きができます。納税について誠実な意思を示すなど一定の条件を満たせば、相続税を分割で納めるときの延滞税が一部免除され、財産の差し押さえが猶予されます。
相続税は、故人の死亡から10か月以内に納税する決まりです。期限までに納税できない場合は延納や物納を申請できますが、制約が多く手続きの手間もかかります。延納や物納をあてにするのではなく、期限内に納税できるように準備しておくことが大切です。
相続税を納めなければ、延滞税がかかるだけでなく、連帯納付義務で他の相続人に迷惑をかけることにもなりかねません。納税で不安な点があれば、少しでも早く相続税を専門に扱う税理士への相談をおすすめします。
(記事は2019年11月1日時点の情報に基づいています)