無計画な生前贈与には落とし穴も 重要なのは遺留分に備えた対策
相続の備えとして知られているのが生前贈与です。身近な問題として相続への関心が高まるとともに、注目を集めています。ただ、「遺留分」を考えておかないと、思いがけない落とし穴も。今回記事を監修してくれた「ソーゾク博士」は小倉悠治法律事務所・弁護士、石尾理恵さんです。
相続の備えとして知られているのが生前贈与です。身近な問題として相続への関心が高まるとともに、注目を集めています。ただ、「遺留分」を考えておかないと、思いがけない落とし穴も。今回記事を監修してくれた「ソーゾク博士」は小倉悠治法律事務所・弁護士、石尾理恵さんです。
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相続対策に生前贈与が有効だと、よく聞くようになった。
生きている間に、財産の分け方を見届けられるから一安心だ。
生前贈与は、相続税対策としても徐々に知られるようになってきました。生前に財産を渡すことができますが、とはいえ、注意点もあるので解説しましょう。ポイントになるのは「遺留分」です。
遺留分は、一部の法定相続人に保障されている最低限の取り分ですよね。関わりが生じるのは相続の時じゃないんですか。
特定の人にだけ多くの贈与があった場合、他の相続人の遺留分を侵害する可能性があります。たとえば、次のようなケースが対象になり得ます。(1)相続開始前から1年間に行われた贈与(2)法定相続人が対象であれば、相続開始前10年以内に行われた贈与(3)遺留分の権利者を害すると知って行われた贈与――といったものです。
生前贈与をしていても、遺留分を請求されることがあるんですね。
たとえば、親が特定の子どもに不動産を贈与したり、事業資金を出したりしたケースが考えられます。相場よりも、かなり安い価格で子どもに不動産を売却する場合も該当します。 ただし、「生前贈与が不公平だ」と感じた人が遺留分を請求するには時効もあります。「相続の開始及び遺留分を侵害する生前贈与や遺贈があった事実を知った時から1年間」です。
中小企業を経営しているような場合は、事業資金が必要な時もあるでしょう。厳密に遺留分を求められると、生前贈与を受けた側は、経営に悪影響が及ぶのでは。
そういった時は、財産の所有者が生きている間に対策をしておきましょう。たとえば、法定相続人になる人に遺留分を放棄してもらうのです。そのためには、家庭裁判所に申し立てをして許可を得る必要があります。
そんな手続きがあるのか。
まだ注意が必要です。遺留分の放棄は、相続権の放棄にはなりません。法定相続分を相続する権利は残るのです。遺産分割の方法を記した遺言書を作成しないといけません。
無計画に生前贈与を進めてはいけないんだな。
相続のあり方は、それぞれの家庭で異なってくるでしょう。もしも事情がある場合は、弁護士などの専門家に相談するほうがより確実です。
・生前贈与しても遺留分を請求されることがある
・遺留分の放棄も可能
・遺言書の作成が必要
(今回のソーゾク博士=小倉悠治法律事務所・石尾理恵弁護士、構成=相続会議編集部)
(記事は朝日新聞土曜別刷り紙面「be」に掲載した内容を基に掲載しています。2022年2月1日時点での情報に基づきます)
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