「仲良し家族」が相続では危ない! 漫画「教えて! ソーゾク博士」
「相続のキホン」を漫画で学ぶ「教えて! ソーゾク博士」。連載8回目のテーマは「相続トラブル」です。「家族仲がよい」「大した遺産はない」から、わが家は相続でもめることはない、と高をくくることのリスクについて、弁護士兼マンガ家の赤ネコさんが描きます。
「相続のキホン」を漫画で学ぶ「教えて! ソーゾク博士」。連載8回目のテーマは「相続トラブル」です。「家族仲がよい」「大した遺産はない」から、わが家は相続でもめることはない、と高をくくることのリスクについて、弁護士兼マンガ家の赤ネコさんが描きます。
将来の相続について、興味を持ち始めた朝日家の面々。
とはいえ、父の青治さんも母の朱美さんも50代で、まだまだ元気。「真剣に考えるのはまだまだ先の話よね」「家族仲がよい朝日家で相続でもめるわけはない」「そもそも分ける遺産なんて大してないし」というのが本音です。
お金にがめつい長女の桃さん(20代)と、ちょっと要領の悪い長男の葉介さん(30代)の関係についてもケンカはしつつも仲は良いので「なんやかんや2人で公平にわけてもらえるだろう」と楽観的に2人は考えています。
そんな考えに「甘すぎる!」と渇を入れるのが、近所に暮らす朝日家顧問弁護士の「ソーゾク博士」です。
「家族仲がいいからと油断し、なんの準備もしていなかったばかりに、相続がきっかけで家族仲が壊れるケースもあります。相続はお金が絡み、感情的にもなりやすいため、油断は大敵です」
どういうことでしょうか?
青治さんと朱美さんの楽観的な見込みが外れてしまう恐れを考えてみましょう。
・きょうだい仲がよいから公平に分けてもらえる?
この「公平」がくせ者です。「公平」を巡って相続人同士の感情的な対立が起きる可能性があるためです。
例えば、青治さんは大学までずっと公立学校に進学したのに対し、桃さんは高校から大学まで私立だったとします。当然、桃さんのほうが多くの学費がかかっています。一方で、両親の老後の世話を、桃さんのほうがたくさんしたとします。
さて時は流れ、5000万円の遺産が残ったとします。これを2分の1ずつにわけることが、2人とっての「公平」でしょうか。葉介さんは「桃のほうが学費がかかっているんだから、その分、多く僕がもらってもよいんでは?」、一方の桃さんは「両親の世話をした分、私がたくさんもらうのが、本当の意味での公平よね」と考えるかもしれません。
遺産の分け方を決める遺産分割協議では、こういった「公平」を巡る感情的な対立が生じがちです。いくら仲がよくても、一度感情的に対立すると、お互いに妥協ができず、何年にもわたってもめるなんて事態にもなりかねません。
・「遺産なんて大してない」から大丈夫?
遺産が少ないから、もめないだろうと考える人がいますが、間違っています。遺産が少なくても、相続トラブルが生じます。
特に主な遺産が実家の不動産のケースです。
葉介さんが「自分が家を継ぐ」と主張した場合、葉介さんが不動産を相続する代わりに、桃さんに代償金を払う必要があります。代償金の金額は、民法が定める「法定相続分」に応じて計算します。たとえば4000万円の価値のある不動産だった場合、代償金として2000万円を葉介さんは、桃さんに支払う必要があります。
葉介さんに代償金を支払えるならよいですが、そのような大金を準備することが難しい場合もあるでしょう。桃さんは「代償金を支払えないなら、自宅を売却して、それで得たお金をわけましょう」と訴えるかもしれません。でも、葉介さんは愛着のある自宅を売ることは考えられません。こうした感情的な対立を解消して解決策を見いだすのは、容易ではありません。
・まだ先の話だから、相続について考えなくてよい?
確かに、青治さんも朱美さんも50代とまだ若く、「相続について考えるのはまだ早い」と思うのもごもっともです。しかし、相続について考えるのに「早すぎる」ことはなく、元気なうちに早めに準備したほうがよいでしょう。
リスクの一つが認知症です。認知症になると、生前の相続対策が難しくなってしまいます。
症状が進行し「遺言するのに必要な判断能力が低下した状態」とみなされれば、遺言書を作成することができません。
一方、認知症を発症したばかりで、判断能力がある状態であれば、遺言書を作成することはできます。しかし、このような状態でつくられた場合、遺言の内容に不満のある相続人が「この遺言書は父が認知症の時に作成されたもの。父の意思ではないから無効だ」と訴えるかもしれません。仮に裁判になっても、重度の認知症だったという証拠がなければ、遺言書が無効とされることはないでしょう。とはいえ、相続人同士の争いの種はなくしておきたいところです。
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相続の相談が出来る弁護士を探す相続トラブルを防ぐには、生前の準備が大切です。まずは、家族間でしっかりと相続について話し合っておくことです。
親(遺産を残す側)は、子どもたち(遺産を引き継ぐ側)に遺産内容を伝え、その分け方についての希望や考えをしっかりと共有しましょう。子どもたちも「遺産をどう分けてほしいか」という自分の考えを伝え、意見を交わしておくとよいでしょうか。
こうした話を親が主導してくれればよいのですが、そうでないことも多いでしょう。とはいえ、相続のことは子どもから親に切り出しにくいもの。相続に関するニュースを目にしたときに、話題を振ってみるなどして、少しずつ話を進めていきましょう。
相続トラブルに効果的なのは、遺言書作成です。しかし、極端に不公平な内容にすると、遺言書が逆に、きょうだい仲を引き裂く原因となる恐れがあります。また要式を守らないと「無効」となってしまうので、注意しましょう。
「家族仲がよいから相続トラブルは無縁」と油断するのではなく、「相続をきっかけに家族仲を壊すような悲しいことにならないようにしよう」と考え、元気なうちに相続対策をすることが大切です。
遺言書の書き方がわからない方や、「相続でもめそう」と不安な方は、弁護士へ相談するとよいでしょう。適切な遺言書を作成してくれますし、それぞれの家族の状況に合わせた解決策を考えてくれます。
(記事は2023年4月1日時点の情報に基づいています)
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