• うちには、どれぐらいの財産があるのかな。

    長男・太郎
  • この家と預貯金だな。あとは、何があるかな。

    父・一郎
  • 太郎さんは、何か気になることがあるようですね。

    ソーゾク博士
  • 気が早いけど、相続になったときに備えて必要な手続きを考えたんです。でも、遺産の内容が分からないと進めようがないと気づいたんです。

    太郎
  • 確かに気がかりですね。そういう時、お父さんのような被相続人に残してほしいのが「財産目録」です。

    博士
  • 財産の内容をまとめたものですか。

    一郎
  • その通りです。遺言とセットで作ることをお勧めします。遺産の内容を把握できれば、分割方法もスムーズに考えることができます。親と同居していた相続人がいる場合、他の相続人は「隠している遺産があるのでは」と疑うかもしれません。でも、被相続人が財産目録を作っておけば、「争族」を避けられます。

    博士
  • 書き方にはルールがあるのでしょうか。

    一郎
  • 預貯金は、通帳をもとに銀行名・支店名・口座番号や種別などを盛り込んでください。土地は、登記事項証明書を見て、所在・地番・地目・地積などを記載してください。負債があれば、必ず書いておきましょう。借金が多いと相続人が相続放棄を検討しますが、それには3カ月の期限があります。財産目録に負債を記しておけば、相続人が早く決断できます。

    博士
  • 遺産がたくさんある人は、すべてを手書きすると大変そうだ。

    太郎
  • 法改正に伴い、遺言とセットの財産目録は、自筆だけでなくパソコンや代理人による作成も可能になりました。預貯金通帳のコピーや不動産の登記事項証明書を添付する形でも構いません。ただ、パソコンで作成したり代理人に作ってもらったりした場合、印刷した全ページに署名・押印が必要です。偽造を防ぐのが目的です。

    博士
  • いったんパソコンで作っておけば、財産が増えたり減ったりしても変更するのに便利そうだ。

    一郎
  • 生きている間は財産は増減するもので、変化がつきものです。財産目録は定期的に見直しすることをお勧めします。定期預金の解約や不動産の売却・名義変更などがあったら、作り直してください。「あったはずの財産がない」と、相続人同士で争いが生じては、元も子もありませんからね。

    博士

財産目録のポイント

・パソコンで作成してもよい

・「争族」の回避にも役立つ

・債務も記しておく

・定期的に内容を見直す

(今回のソーゾク博士=小倉悠治法律事務所・石尾理恵弁護士、構成=相続会議編集部)

(記事は朝日新聞土曜別刷り紙面「be」に掲載した内容を基に掲載しています。2022年2月1日時点での情報に基づきます)