条件は30歳未満の子か孫で、学校や塾への教育費

  • 相続も大事だけど、僕の場合、子どもが大きくなり教育費がかかることの方が気になるよ。

    長男・太郎
  • おじいちゃんになったら、子どもの太郎より孫にお金を残してやりたいと思うようになったよ。博士、孫に財産を渡せませんか?

    父・一郎
  • 一郎さん、亡くなった後じゃなくてもお孫さんを援助することはできますよ。「教育資金」として1500万円まで贈与ができます。

    ソーゾク博士
  • 博士、この前、生前の贈与は110万円を超えたら税金がかかると言っていましたよ。1500万円も渡したら、税金が高いでしょう?

    太郎
  • いいえ。教育資金の贈与は、条件さえ整えば、1500万円まで贈与税が非課税になる特例があります。贈与を受ける人が30歳未満の子か孫であること、目的が学校や塾への支払いなど教育費であることです。学校以外に使えるのは500万円までです。

    博士
  • 塾代にもあてられるなんてありがたい。子どもの教育費がかさんで、僕のこづかいが減る一方ですよ。

    太郎
  • 孫に贈与したはずのお金が、お前のこづかいになるのは嫌だな。

    一郎
  • 一郎さん、心配はごもっとも。この制度を使うには、金融機関に専用の口座を開設する必要があります。太郎さんがお子さんの学校などに支払った領収証などを提出するとその分の資金が引き出せるようになっています。少し使い勝手は悪いかもしれませんが、贈ったお金を確実に教育資金として使ってもらえます。

    博士

贈与した人が亡くなった際の残額に注意

  • 僕と妻の家から1500万円ずつもらえば3千万円にもなる。

    太郎
  • いいえ、非課税になるのは子や孫1人につき500万円までです。制度を使うにはほかにも注意点があります。贈与した人が亡くなった時点で残額があった場合、相続税が課税されます。対象は①今年4月以降の贈与分と②2019年4月から今年3月末までの贈与のうち、亡くなる前3年以内の贈与で、いずれも残額があった場合です。また今年4月以降、孫への贈与には相続税が2割加算されます。

    博士
  • 父さんが急に死んだら、孫に贈与した分、相続税が増えるんですか。

    太郎
  • 急死ってねぇ……。でも、確かに死ぬ時期は選べませんよね。

    一郎
  • そのとき、贈与を受けた子や孫が23歳未満か在学中であれば相続税はかかりません。

    博士
  • 子どもはまだ小さいから、その心配はなさそうだ。孫への贈与という方が両親の財布のひもも緩みそうだから、早速、母さんにも伝えよう。

    太郎

教育資金贈与の注意点

・非課税枠は1500万円
・歳未満の子や孫が対象
・学校や塾、習い事の資金に
・専用の口座開設が必要

(今回のソーゾク博士=税理士・鈴木まゆ子さん、構成=相続会議編集部)
(記事は朝日新聞土曜別刷り紙面「be」に掲載した内容を基に掲載しています。2021年10月1日時点での情報に基づきます)