財産目録がない遺言書は相続トラブルを招く! 財産目録の作成方法も紹介
財産目録なしの遺言書は無効なのでしょうか? 遺言書に財産目録は必須ではありません。しかし、財産目録を添付しておくことで、相続トラブルを防ぐことができますし、相続人が財産調査をする手間も省けます。今回は遺言書に財産目録をつけるべき理由や作成方法を弁護士が解説します。
財産目録なしの遺言書は無効なのでしょうか? 遺言書に財産目録は必須ではありません。しかし、財産目録を添付しておくことで、相続トラブルを防ぐことができますし、相続人が財産調査をする手間も省けます。今回は遺言書に財産目録をつけるべき理由や作成方法を弁護士が解説します。
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財産目録とは、預貯金や不動産など、遺言者の有する財産を一覧にしたものです。特に決められた書式はないので、箇条書きなど何でも構いません。
遺言書に財産目録を添付することは法律上必須ではありません。財産目録がなくても遺言書は有効とされます。
上記のとおり、財産目録は必須ではありません。実際、財産目録がない遺言書も多く存在します。しかし、財産目録がないことで生じるリスクがありますので、解説します。
遺言者本人は自らの財産を把握しています。しかし、相続人である配偶者や子などは遺言者の財産を把握していないことが多いでしょう。
そうすると、遺言者が亡くなったあと、相続人は遺言者の財産調査を調査することになりますが、多種多様な財産があると、大変な手間と時間を要するものです。たとえば、通帳等の手がかりすらなければ、手当たり次第に金融機関に照会をかけるしかないといった事態にもなりかねません。
遺言者と別居していた相続人から「他にも遺産があるのではないか」と疑われてトラブルになる可能性も生じます。また、せっかく相続人同士の間で遺産分割協議が成立しても、後日新たな遺産が発見されることで、再び遺産分割協議をしなければならなくなることもあります。
相続税の申告をしていれば、申告内容の修正も必要になります。財産目録がないことで、以上のような相続トラブルを招いてしまうおそれもあります。
包括遺贈とは、財産内容を指定せずに行う遺贈のこと。包括遺贈をすると、受遺者は負債も含めた相続財産を包括的に引き継ぐことになります。財産目録に負債を書いておかないと、負債の存在に気づかないまま3カ月の期限が過ぎてしまい、放棄できなくなってしまうリスクが生じます(包括遺贈については、「遺贈とは 包括遺贈と特定遺贈の違いや手続きの流れをわかりやすく紹介」などを参考にしてみてください)。
すでに述べたとおり、財産目録がないことで生じるリスクがあることを考えると、財産目録は作成することが望ましいでしょう。あらためて、財産目録をつけるべき理由を整理します。
財産目録があると遺産をすぐに把握できるので、調査する手間が省けます。そのため、相続人や受遺者が不動産の名義変更や預貯金の払い戻しなどをスムーズに行うことができます。
相続が発生すると、相続財産の金額によるものの、相続税の申告を行わなければなりません。申告にあたっては、相続財産を明らかにする必要があります。財産目録があれば、これを参考にして申告ができるので、手間が省けますし、漏れも生じにくくなります。
相続人に代わって遺言の内容を実現する遺言執行者は遺産目録を作成しなければなりません。財産目録があると財産調査が容易になりますので、遺言執行も円滑になり、相続人や受遺者がスムーズに遺産を受け取ることができます。
相続人の一部が作成した財産目録ですと、他の相続人から「他に遺産があるのではないか」と疑われるおそれがあります。しかし、遺言者自身が作成した財産目録であれば、通常、財産を隠して作成することは想定できませんから、信用性があります。そのため、上記のような疑いを抱く相続人が現れずに、遺産分割協議を円滑に進めやすくなるでしょう。
マイナスの財産を記載した目録がなければ、相続人や受遺者が借金などの存在を認識しないままに相続や遺贈の放棄の期限が過ぎてしまい、これらの人に予期せぬ借金などを背負わせてしまうおそれがあります。
相続あるいは遺贈を放棄すべきかどうかの判断材料としてもらうためにも、財産目録を作成して財産に関する情報を提供するほうが良いでしょう。
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相続の相談が出来る弁護士を探す財産目録に記載すべき代表的な財産は以下のとおりです。ただし、下記以外の財産であっても漏れなく記載するようにしましょう。
たとえば、預貯金は通帳を参考に銀行名、支店名、種目、口座番号等を記載し、土地は登記事項証明書を参考に所在、地番、地目(ちもく)、地積等を記載して特定しましょう。地目とは土地の用途によって区分したもの、地積とは登記簿などに記されている面積のことを指します。
負債がある場合は、負債の内容や金額も記載しておくべきです。そうすることで、相続人や受遺者はこれらの情報を参考にして相続や遺贈を放棄するかどうかを決められるので、予期せぬ負担を避けることができます。
近年の法改正では、民法968条1項で、自筆証書遺言「と一体のものとして相続財産(中略)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録においては、自書することを要しない。」と規定され、財産目録は手書きが不要となりました。そのため、下記のような方法で財産目録を作成することが可能です。
ただし、民法968条2項に記されているとおり、手書き以外の方法による財産目録は偽造や変造されるリスクがあることから、財産目録のすべてのページ(両面に記載がある場合は両面とも)に署名・押印をする必要があります。また、同条3項のとおり、加除訂正をする方式も決まっていますので、注意してください。
せっかく遺言書を作成するのであれば、財産目録も作成することがおすすめです。作成方法がわからない場合は、最寄りの法律事務所などで弁護士に相談すると良いでしょう。また、遺言書や財産目録を作成したあと、年数が経過するにつれて財産の内容が変動することは当然あり得ますので、遺言書や財産目録の内容を変更する必要がないか、定期的に見直しをすることが大切です。
(記事は2021年8月1日時点の情報に基づいています)
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