目次

  1. 1. 遺言書の「検認」とは?
  2. 2. 申立人を除き、遺言書の検認期日は欠席しても構わない
  3. 3. 遺言書の検認期日を欠席するデメリット
  4. 4. 遺言書が無効であると考える場合の対処法
    1. 4-1. 検認を受けても遺言書が有効とは限らない
    2. 4-2. 遺言書が無効になるパターン
    3. 4-3. 遺言書の無効を主張する方法
  5. 5. まとめ

遺言書の「検認」とは、家庭裁判所が遺言書の存在を相続人に知らせるとともに、遺言書の内容を明確にして偽造・変造を防止することを目的とした手続きです(民法1004条1項)。

検認手続きは、大まかに以下の流れで進行します。

①検認の申立て
遺言書の保管者または遺言書を発見した相続人が、遺言者の最後の住所地の家庭裁判所に対して、遺言書の検認を申し立てます。

②検認期日の通知
家庭裁判所が相続人に対して、検認期日(検認を行う日)を通知します。

③検認期日
申立人が家庭裁判所に遺言書を提出し、出席した相続人等の立ち会いの下で、裁判官が遺言書の内容を確認します。

④検認済証明書の作成・発行
家庭裁判所から、検認結果を記した検認済み証明書の発行を受けます。
検認済証明書は、金融機関や法務局等で相続手続きを行う際に、提出が必要となる書類の一つです。

遺言書は検認が必要となるのが原則ですが、例外的に「公正証書遺言」と、「法務局で保管されている自筆証書遺言」については、検認が不要とされています(民法1004条2項、法務局における遺言書の保管等に関する法律11条)。

遺言書の検認が申し立てられた場合、家庭裁判所は相続人に対して検認期日を通知します。
しかし相続人には、検認期日に出席する法律上の義務はなく、欠席しても罰則などのペナルティはありません。

検認期日に出席するかどうかは、あくまでも各相続人の判断に委ねられており、相続人全員がそろっていなくても遺言書の検認は行われます。欠席する旨を家庭裁判所に事前連絡することも不要です。
また、相続人本人は欠席して、弁護士を代理人として出席させることもできます。

ただし、申立人だけは遺言書等を持参・提出する必要があるため、検認期日への出席が義務付けられています。

前述のとおり、遺言書の検認期日を欠席しても、ペナルティを受けることはありません。
ただし検認期日を欠席すると、遺言書を確認するタイミングが遅れる点はデメリットと言えます。

遺言書を早めに確認したい場合には、多少面倒でも検認期日に出席した方がよいでしょう。
どうしても都合がつかない場合には、弁護士に代理出席を依頼することも選択肢の一つです。

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遺言書の検認が行われたとしても、後日遺言書の無効を主張することはできます。
遺言書が無効であると考える場合には、弁護士にご相談のうえで、調停・訴訟を通じた遺言無効確認請求の準備を進めましょう。

検認手続きは、あくまでも検認日時点での遺言書の状態などを確認する手続きであって、遺言の有効性を審査するための手続きではありません。

したがって、検認が完了したからといって、遺言書が有効であると確定するわけではなく、後から遺言書の無効を争うこともできます。

遺言書が無効になる場合の例としては、以下のパターンが挙げられます。

①民法所定の形式によって作成されていない場合
方式ごと(自筆証書・公正証書・秘密証書等)に定められているルールに従って作成しなければ、遺言書全体が無効になります(民法960条)。

②作成時点で遺言能力がない場合
遺言書を作成する時点で、遺言者に意思能力がない場合には、遺言書が無効となります(認知症で判断能力が著しく低下した場合など)。
また、遺言書の作成当時に遺言者が15歳未満だった場合も、遺言能力が認められず、遺言書は全体として無効です(民法961条)。

③遺言書の内容が、遺言者の真の意思に基づかない場合
錯誤・詐欺・強迫を原因として、遺言者の真の意思に基づかずに作成された遺言書は、取り消しの対象となります(民法95条1項、96条1項)。

④遺言書が偽造・変造された場合
遺言者とは別人が遺言書を作成した場合(偽造)、および遺言者の作成した遺言書の内容を第三者が変更した場合(変造)には、遺言書は無効となります。

⑤遺言書の内容が公序良俗に反する場合
遺言書に公の秩序または善良の風俗に反する内容(反社会的な内容など)が含まれる場合、その部分は無効となります(民法90条)。

遺言書の無効を主張するには、まず家庭裁判所に調停を申し立てます。

調停では、調停委員が相続人の主張を公平に聴取し、遺言無効に関する紛争の解決方法を模索します。最終的に裁判官が調停案を提示し、相続人全員が同意すれば、調停は成立です。調停が不成立となった場合は、家庭裁判所に遺言無効確認請求訴訟を提起します。

訴訟では、原告・被告の双方が証拠に基づく主張・立証(反証)を行い、遺言書の有効・無効を争います。審理が熟した段階で、裁判所は判決を言い渡し、判決の確定によって遺言の有効・無効が確定します。

なお、遺言無効確認事件では「調停前置主義」が採用されているため(家事事件手続法244条)、訴訟を提起する前に調停を先行させることが必要です。

遺言無効に関する調停・訴訟を有利に進めるためには、遺言が無効であることを窺わせる事情・証拠をできる限り豊富に収集し、調停委員や裁判官に対して説得的に主張を伝えることが大切です。
調停・訴訟に向けて充実した準備を整えるには、弁護士に依頼することをお勧めいたします。

遺言書の検認期日は、申立人でなければ欠席しても問題ありません。ペナルティもありませんし、後で遺言無効を主張することもできるので、忙しい場合や都合がつかない場合は欠席してもよいでしょう。

遺言無効を主張する場合は、検認期日ではなく、その後の調停や訴訟が「本番」です。調停・訴訟を有利に進められるように、早い段階で弁護士に相談のうえ、周到に準備を整えてから臨みましょう。

(記事は2022年4月1日時点の情報に基づいています。)