土地(不動産)の生前贈与手続きは

①贈与契約書の作成

贈与は、贈与する人(贈与者)と贈与される人(受贈者)との契約です。法律上は口頭での約束でも贈与契約は成り立ちますが、名義変更手続きでは「登記原因証明情報」という書類が必要です。贈与契約書も登記原因証明情報に該当します。

その土地の所在地などの情報を正確に記載する必要があるため、あらかじめ法務局で「登記事項証明書」を取得しましょう。

②名義変更の登記

贈与したことを明らかにするため、対象となる土地を管轄する法務局で名義変更の登記を申請します。登記申請は専門家である司法書士に依頼するのが一般的です。申請に必要な書類は以下のとおりです。

・登記申請書
・登記識別情報又は登記済証(一般的に権利書と呼ばれる書類)
・贈与する土地の固定資産評価証明書
・登記原因証明情報(贈与契約書など)
・贈与者の印鑑証明書
・受贈者の住所証明情報(住民票など)
・司法書士に委任する場合は委任状

登記費用、贈与税、不動産取得税…算出法は

土地が贈与されると、贈与された側に不動産取得税と贈与税がかかります。また、土地の登記では登録免許税が発生し、司法書士等に依頼した場合は報酬も必要です。また各種証明書の取得費等の実費がかかります。

①不動産取得税

土地の不動産取得税は、「土地の課税標準額×3%」です。課税標準額とは固定資産税評価額ですが、2021年3月31日までに取得した場合、土地の課税標準額は「固定資産税評価額×1/2」となります。つまり、現在の土地の不動産取得税は「固定資産税評価額×1.5%」で計算できます。不動産取得税は都道府県民税なので、都税事務所や県税事務所等から納税通知書が届きます。

※注:建物の不動産取得税は「固定資産税評価額×3%(非住宅は4%)」です

②贈与税

暦年贈与(通常の贈与、1年ごとの合計額で申告が必要)の場合、基礎控除である110万円を超えた金額に対して、贈与税がかかります。贈与の税率は、直系尊属(祖父母や父母など)から贈与された場合の特例税率と、それ以外の一般税率があり、特例税率の方が少し低くなっています。

たとえば、父親から1,000万円相当の暦年贈与を受けて、他に贈与を受けていない場合、贈与税は「(1,000万円-110万円)×30%-90万円=177万円 と計算されます。

贈与税は、税務署に確定申告をした後、申告した税額を納めます。土地の価格が基礎控除(110万円)を超える場合は、贈与のあった翌年の2月1日から3月15日までの間に申告を行い、贈与税が発生する場合は3月15日までに納めます。申告期限を過ぎると加算税などのペナルティが課されるので注意しましょう。

贈与税の税率と控除額

③登録免許税

登録免許税は「固定資産税評価額×2%(贈与の場合の税率)」です。登記手続きのときに納めます。

④司法書士への報酬や実費

報酬は自由化されています。司法書士によって、またどこまでサポートしてくれるかによっても報酬は異なります。自宅の贈与手続きであれば、贈与契約書の作成や登記手続きを含めて概ね10万円前後が多いようです。また、印鑑証明書や住民票などの発行手数料といった実費もかかります。

贈与税の軽減対策活用も

贈与された時の負担は少しでも軽くしたいもの。贈与税を軽減するための仕組みについて解説します。

①相続時精算課税制度

相続時精算課税制度は、原則として60歳以上の父母又は祖父母から、20歳以上の子または孫に財産を贈与した場合、累計で2,500万円までは贈与税がかからない制度です(2,500万円超の部分については一律20%が課される)。

ただし、相続が発生した後の相続税申告時は、生前贈与された分の金額も戻す形で税額を計算します。この制度を選択すると、利用している人との間(たとえば父親と長男など)では暦年贈与が利用できず、110万円の基礎控除も適用されません。

②贈与税の配偶者控除

婚姻期間が20年以上の夫婦間で、居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合に、最高2,000万円まで控除(配偶者控除)できる制度です。暦年贈与の基礎控除も利用できるので、合計で2,110万円までは贈与税がかかりません。

どちらの制度も、利用する場合には贈与のあった年の翌年の2月1日から3月15日までに贈与税の申告が必要です。

生前贈与と相続の違いは?

生前贈与なら、土地(不動産)の名義を確実に贈与された人のものにできます。また収益物件であれば、贈与したあとの家賃収入等を受贈者の収入にできる点もメリットです。

ただし、相続が起こったときには、生前贈与された分が特別受益とみなされ、土地の評価額の分だけ相続分が減ってしまうことがあります。併せて遺言を残しておくといいでしょう。

一方、相続法の改正で、婚姻期間20年以上の配偶者に生前贈与された自宅(土地および建物)は特別受益の対象外になります。遺留分については気にしなくて済みます。

生前贈与ではなく、遺言でも土地を特定の人に残すことは可能ですが、相続法改正で扱いが変わっている点に注意が必要です。たとえ遺言があっても、法定相続分を超えた部分については、他の法定相続人から権利を得た第三者が先に登記してしまうと、登記の内容が遺言に優先されるルールができました。遺言があるからと安心せず、早めに登記しておくことが重要です。

家族信託の利用も節税に

生前贈与で多額の税金がかかってしまうケースでは、民事信託(家族信託)の利用も一つの方法です。民事信託とは「委託者(たとえば父親)」が「受託者(たとえば長男)」と契約を結び、土地などの財産を受託者に移転して管理を任せるというものです。

所有権(名義)は受託者に移りますが、財産を利用する権利(受益権)は「受益者」という立場の人にあります。この受益者を委託者(両方とも父親)と同一にしておくことで、実質的な権利は委託者(父親)のままになります。この場合、贈与税は発生しません。

受託者死亡時の次の受託者をあらかじめ指定することもできるため、相続対策の選択肢が広がります。民事信託の組成には、数十万円から百万円以上の費用がかかりますが、新たな相続対策として、最近特に注目されています。

生前贈与のメリットと注意点

これまでのポイントを踏まえ、生前贈与のメリットや注意点をまとめました。

《メリット》

・生前に確実に財産を引き継げる
・収益物件では、贈与後の収入を受贈者の収入とすることができる
・相続時の税金を減らせる可能性がある
・婚姻期間20年以上の配偶者への自宅の贈与は特別受益の対象外となるので、配偶者に多く相続させることが可能

《注意点》

・贈与税や登記関係の税金や費用がかかる
・相続時精算課税を利用して贈与税を減らしても、最終的には相続税の対象になるので、税の軽減にはならないことがある
・生前贈与分が特別受益とみなされ、相続分が減ってしまうことがある

共有名義の自宅を贈与した例も

最近の相談事例を紹介します。高齢の母親と長男の共有名義となっている自宅について、相続時の手続きの煩雑さを避けるためと、母親が認知症になった場合に備える二つの目的で、母親名義分を長男に贈与する手続きを手伝いました。

財産はそれほどないため相続時には基礎控除額の範囲内で相続税がかからないこと、相続時精算課税制度を利用することで贈与税がかからないこと、建物の評価額が低く登録免許税が1~2万円で済むこと、そして他の兄弟は長男が自宅を相続するのに同意していることが決め手になりました。

相続で引き継ぐ方が贈与より登録免許税の税率が低くなるというアドバイスもあります。しかし、高齢の親が認知症になったあとに、自宅の修理や活用ができないというリスクにも備えたいときには、どういう方法がベストか、専門家の意見も取り入れながら総合的に考えて判断することが重要です。

(記事は2020年1月1日時点の情報に基づいています)