目次

  1. 1. まだ元気だから相続の準備をするのは少し先でも大丈夫。
  2. 2. 相続手続きといっても、それほど大変なこととは思えない。
  3. 3. 子どもたちは仲が良いし、自分が相続の準備をしなくても大丈夫。
  4. 4. 自宅と多少の預貯金くらいしかないから、相続で揉めることはない。
  5. 5. 子どもたちが話し合って法律どおりの法定相続分で分けてくれればよい。
  6. 6. 自分には法定相続人がいないから、相続の準備をする必要がない。
  7. 7. 遺言は自分の思いをメモ程度に残しておけばよい。
  8. 8. 遺言書は私の意思を尊重するものだから、どのような内容でも問題ない。
  9. 9. 既に生前に財産を贈与しているから、相続手続は関係ない。
  10. 10. 介護を手伝ってくれている息子の嫁がいるが、相続人ではないから関係ない。

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相続について話し合うには、まず自分の財産が「どこに」「何が」「どれだけ」あるのかを確認する必要がありますが、その前にちょっと深呼吸。チェックシートで自己診断して、相続でもめやすいポイントを確認しましょう。

「自分はまだ大丈夫、元気なのに死んだ後の話なんて縁起でもない」と、相続問題に手をつけないまま、不慮の事故などで突然亡くなると困るのは残された家族です。最近増えているのが、相続を先送りにしたまま認知症になるケースです。医師により認知症と診断され症状が進行してしまった場合は、たとえその後に遺言書を作成しても、意思能力がないとみなされ、無効とされてしまう可能性があり、相続人は為す術がなくなってしまいます。軽度の認知症であれば、意思能力を喪失しているほどではないといえることも多いですが、症状が進行してしまうと、周囲とのコミュニケーションも取れなくなり、意思能力がないと判断されることがあります。また、相続人に認知症などで意思能力がない人がいる場合は、遺産分割協議に参加することができないため成年後見人を選ぶ必要があります。手遅れになってしまわないためにも早めの対策が大切です。

遺産相続の手続きは、遺言書の有無の確認に始まり、相続人や相続財産の調査、そして遺産分割協議、相続税の申告、遺産分割協議書の作成、相続登記など、様々な手続きが必要です。被相続人の預貯金が複数の金融機関に分散しているような場合などは、さらに複雑で手間のかかる手続きが必要になります。一人っ子で、自分が相続人として比較的スムーズな相続を経験した人が陥りやすいポイントです。

普段は仲のよいきょうだいでも、揉めやすいのが遺産分割です。まして普段は疎遠で意思の疎通ができていない関係なら尚更のこと。普段は言葉には出さないけれど、相続の話し合いになると、内々に感じていた小さな疑問や不満が顕在化してしまうのです。たとえば被相続人と同居している兄は、「親の世話や介護をしたのだから弟より多く相続したい」、対して独立した弟は、「兄は一緒に旅行したり、小遣いをもらったりして、むしろ利益を得ていた」と兄の特別受益に関して主張するなど、平時には思いもよらなかった争いが生じてしまいます。

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私の経験では、相続で揉める原因は遺産金額の多い少ないに関係ないという印象です。なかでも不動産しか遺産がない場合は、売却してそのお金を分割するか各相続人の共有不動産にする方法、あるいは相続人の誰かが当該不動産に住んでいる場合は、その人が相続して他の相続人に金銭で清算する場合もあります。売却といってもすぐに売れない場合もあり、共有の場合は権利関係が複雑化する問題も出てきます。金銭による清算は、そのお金を準備できなければ成立しないというデメリットがあります。“争続”に財産の規模は関係ありません。

法定相続分とは、それぞれの相続人が取得する相続財産の民法に定められた相続割合。ところが、遺産の評価方法が変わるとその割合も変化します。不動産を例にすると、固定資産税評価、相続税評価、不動産の鑑定など様々な評価方法があり、異なる方法で評価すると有利不利が生じ、遺産分割調停で問題になりやすいのです。

少子高齢化や生涯未婚率の上昇などにより相続人不存在の相続が増えています。法定相続人がいない場合は、相続財産管理人が専任され、相続人を探しますが、選任から最終的な手続きまで1年以上かかることが多く、最終的には国に財産が帰属します。第三者の遺贈や寄付などの意思があれば遺言書に残しておきましょう。

自筆証書遺言の場合、「相続させる」と書くべきところを「まかせる」「委ねる」など表現が曖昧であったり、「自宅を私がお世話になった恩人に譲る」といったように、正確な不動産やそれを受け取る人が特定できないような表記は、文言の解釈で紛争になるばかりか、形式的な要件が満たされていないと無効になってしまう危険性もあります。自筆証書遺言がなければ法定相続分で分割できたのに、曖昧な遺言書があるばかりに争いが複雑化するケースもあります。

基本的に自分の思いを託すのが遺言書なので、相続分を自由に決めることができます。「全財産を長男に相続させる」という内容でもよいのですが、法定相続人が最低限の財産をもらえるように定めた「遺留分」という制度があり、内容に不満をもった他の相続人から遺留分侵害額請求をされることがあります。

長男にはマイホームの購入資金の援助、長女には留学費用など、相続人へのまとまった額の生前贈与は遺産の先取りとみなされ、相続人の特別受益となります。過去10年分は遺留分算定の基礎財産になるので、相続人間で不公平があると、それ含めて遺留分侵害額請求の対象となります。

被相続人の息子の妻が長年介護に貢献していても、既に息子が亡くなっていた場合、妻は遺産を手にすることができないという不公平をなくすため、民法改正により特別寄与料が設けられ、寄与に相当する金銭を請求できるようになりました。

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そのほかにも、争いが起こりやすいのがきょうだい間の相続と代襲相続、つまり被相続人より先に相続人が亡くなっている場合です。配偶者も子どもなく、きょうだいが相続するケースでは、相続人も高齢になっている場合が多く、被相続人との関係性も希薄になっています。きょうだいが多いとさらに複雑化し、先に亡くなっているきょうだいがいる場合は、被相続人の甥や姪が相続人となる代襲相続となり紛争化することもあります。いずれの場合も専門家の目を通した遺言書があればトラブルを回避することが可能です。

「なんとかなる」と先送りにしていると、どんどん煩雑な手続きが増えるのが相続です。相続は自分が亡くなった後の話なので、見て見ぬ振りをしたい気持ちもあるでしょうが、“争続”を未然に防ぐために早め早めの対策が大切です。重くとらえずに、フラットな気持ちで家族と話し合ってはいかがでしょうか。

(記事は2020年8月1日現在の情報に基づきます)

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