遺留分額を計算する4ステップ

遺留分の基本については、以下の記事を参考にしてください。
遺留分とは 相続で最低限もらえる遺産 請求できる相続人の範囲と割合

遺留分侵害額は以下の計算式で算出します。

【遺留分侵害額の計算式】
遺留分侵害額=遺留分額-(遺留分権利者が被相続人から相続で取得すべき財産額)-(遺留分権利者の特別受益額+遺留分権利者が受けた遺贈額)+(遺留分権利者が相続分に応じて承継した相続債務の額)

複雑で計算するのが大変そうと思われるかもしれません。ただ、計算式の最初の「遺留分額」が「遺留分侵害額」と一致するケースも多いので、まずは「遺留分額」の計算方法を押さえましょう。同じような言葉で混同しやすいですが、「遺留分額」と「遺留分侵害額」は別の意味ですので注意してください。請求できるのは「遺留分侵害額」の方です。

遺留分額は「遺留分算定の基礎となる財産額×遺留分の割合」という計算式で算出します。それぞれの計算式は下記の通りです。

【遺留分算定の基礎となる財産額の計算式】
遺留分算定の基礎となる財産額=被相続人が相続開始時に有していた財産(①)+贈与財産の価格(②)-相続債務の全額(③)

【遺留分の割合の計算式】
遺留分の割合(④)=総体的遺留分×法定相続分の割合

以下で①から④までのそれぞれのステップを詳しく見ていきましょう。

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①被相続人が相続開始時に有していた財産を明らかにする

被相続人が相続開始時に有していた財産は遺留分算定の基礎とされます(民法1043条1項)。預貯金は通帳や残高証明書の記載から価額が明らかになるものの、不動産などの場合、価額が一律に明らかにならないため、評価をしなければなりません。たとえば、不動産については、地価公示・都道府県地価調査(土地)や相続税路線価(土地)、固定資産税課税評価額(土地・建物)、不動産鑑定評価額(土地・建物)、不動産業者の査定価格(土地・建物)など評価方法が複数あるため、相続人間で争いになりやすいので注意しましょう。なお、評価の基準時は相続開始時であって遺留分侵害額請求時ではないので、注意してください。

②贈与財産の価格を足し算する

以下の贈与も遺留分算定の基礎とされます。なお、評価の基準時は相続開始時です。

 A) 相続開始前の1年間にされた贈与(民法1044条1項第1文)
 B) 当事者双方が遺留分権利者に損害を与えることを知ってなされた贈与(同項第2文)
 C) 不相当な対価でなされた有償処分であって、当事者双方が遺留分権利者に損害を与えることを知ってしたもの (民法1045条2項)
 D) 相続開始前の10年間に「婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本」としてされた相続人に対する贈与( 民法1044条3項)

③負債を差し引く

被相続人に負債がある場合、その全額を差し引きます。被相続人の借金や医療費などの未払金は差し引けますが、葬儀費用は差し引けません。葬儀費用は相続人が負担するもので、被相続人の負債ではないからです。

④遺留分の割合を掛け算する

上記の①から③で算出した金額に、遺留分の割合を掛け算します。パターンごとの遺留分の割合は下記の表の通りです。総体的遺留分は原則として2分の1であり、直系尊属(父母や祖父母など)のみが相続人の場合に限って3分の1です。

相続人ごとの法定相続分と遺留分の割合
相続人ごとの法定相続分と遺留分の割合

上記の①から④で「遺留分額」を算定することができます。そして、遺言で相続した財産や生前贈与などがあれば反映させて「遺留分侵害額」を算定することになります。

遺留分侵害額計算の具体例

ここからは、遺留分侵害額計算の具体例をお示しします。

ケース1 不相当な対価でなされた有償処分があった場合

【相続関係】
被相続人 A
相続人 子B・C・D

【相続財産関係】
預貯金1000万円
有償処分 子Bに1000万円の土地を200万円で売却(亡くなる9年前)

Aが亡くなり、子B・C・Dが相続するケースを考えてみましょう。Aの相続財産は預貯金1000万円のみで、亡くなる9年前に1000万円の価値がある土地をBに200万円で売却しました。この場合、AB双方が遺留分権利者に損害を与えることを知ってしたものであれば「不相当な対価でなされた有償処分」として本来の価値との差額800万円が加算されます。計算式は下記の通りです。

【計算式】
遺留分算定の基礎となる財産額=1000万円+800万円=1800万円
遺留分の割合=6分の1
遺留分額=1800万円×6分の1=300万円

したがって、例えば、AがBに全財産を相続させる遺言があった場合、CやDはBに対して300万円の遺留分侵害額請求ができます。

ケース2 遺留分権利者が被相続人から相続で取得すべき財産額があった場合

【相続人】
被相続人 A
相続人 子B・C

【相続財産関係】
預貯金 500万円
分譲マンション 2000万円
賃貸マンション 8000万円
借金 500万円

Aが亡くなり、子B・Cが相続するケースを考えてみましょう。Aの相続財産は預貯金500万円と分譲マンション2000万円、賃貸マンション8000万円、借金500万円です。計算式は下記のとおりです。

【計算式】
遺留分算定の基礎となる財産額=(500万円+2000万円+8000万円)-500万円=1億円
遺留分の割合=4分の1
遺留分額=1億円×4分の1=2500万円

したがって、例えば、AがBに全財産を相続させる遺言があった場合、CはBに対して2500万円の遺留分侵害額請求ができます。

他方、AがCに分譲マンションを、Bにその他の全財産を相続させる遺言があった場合、分譲マンションは「遺留分権利者が被相続人から相続で取得すべき財産額」として遺留分額から差し引かれますので、Aは500万円(2500万円-2000万円)の遺留分侵害額請求ができるにとどまります。

ケース3 遺留分権利者の特別受益額があった場合

【相続関係】
被相続人 A
相続人 妻B 子C・D

【相続財産関係】
自宅不動産 3000万円
預貯金 500万円
株式 1000万円
生前贈与 子Cに750万円、弟Eに750万円(いずれも死亡日から6か月前)

Aが亡くなり、配偶者Bおよび子C・Dが相続するケースを考えてみましょう。
Aの相続財産は自宅不動産3000万円、預貯金500万円および株式1000万円です。また、Aは、生前、Cに対してCの婚姻の際に750万円を、弟Eに対して750万円を贈与しました。計算式は下記の通りです。

【計算式】
遺留分算定の基礎となる財産額
=(3000万円+500万円+1000万円)+(750万円+750万円)=6000万円
Bの遺留分の割合=4分の1
Bの遺留分額=6000万円×4分の1=1500万円
C・Dの遺留分の割合=8分の1
C・Dの遺留分額=6000万円×8分の1=750万円

したがって、たとえば、Aが全財産をCに相続させる遺言があった場合、BはCに対して1500万円、DはCに対して750万円の遺留分侵害額請求をすることができます。

他方、Aが全財産をBに相続させる遺言があった場合、DはBに対して750万円の遺留分侵害額請求ができますが、CはBに対して遺留分侵害額請求はできません。なぜなら、Cが受けた生前贈与は「遺留分権利者の特別受益額」として遺留分額から差し引かれるため、Cの遺留分侵害額は0円(=750万円-750万円)となるからです。

まとめ

遺留分の計算方法は複雑で間違ってしまう人も多いです。迷ったら弁護士に相談してみると良いでしょう。

(記事は2021年11月1日時点の情報に基づいています)