遺留分侵害額請求の請求期限

遺留分侵害額請求権とは

まずは「遺留分侵害額請求権」について理解しましょう。

遺留分侵害額請求権とは、被相続人(亡くなった人)が「一定範囲の相続人に認められる最低限度の遺産取得割合」である遺留分を侵害するような遺贈や贈与などをした場合に、財産をもらった者に対して自己の遺留分に相当する金銭の支払いを請求することをいいます。

従来は「遺留分減殺請求権」と呼ばれていましたが、近年の相続法改正によって「遺留分侵害額請求権」に変わりました。

相続開始と遺留分侵害を知ったときから1年

遺留分侵害額請求権は、相続が開始したこと及び遺留分を侵害する遺贈や贈与などがあったことを遺留分権利者が知ってから1年の間に行使しないと時効により消滅してしまいます。なお、単に遺贈や贈与などがあったというだけではなく、これらが遺留分を侵害すること(たとえば、遺産の大部分が遺贈されていること)までを知っていることが必要です。

遺言の無効が争われた場合

遺言の無効が争われている場合、遺言が無効と考えている立場からすると「遺言は無効なのだから遺留分が侵害されているという認識はなく、時効も進行しない」とも考えられそうです。

しかし、最高裁判所は、事実上及び法律上の根拠があって、遺留分権利者が遺言の無効を信じているため遺留分減殺請求権を行使しなかったことがもっともだと首肯しうる特段の事情が認められない限り、時効は進行すると判示しています。これは最高裁判所昭和57年11月12日判決のとおりです。すなわち、遺言の無効が争われていても、原則的に時効は進行し、例外的に「特段の事情」が認められる場合に限って時効は進行しないということです。

そのため、遺言の無効を争うとしても、予備的に遺留分侵害額請求権を行使しておくことが大切です。そうしておかなければ、遺言の無効が認められなかった場合に、遺留分すら請求できないといった事態が生じてしまうおそれがあります。

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相続開始から10年が経つと請求権が消滅

遺留分侵害額請求権は、相続が開始したことや遺留分を侵害するような遺贈や贈与などがあったことを遺留分権利者が知らなくても、相続が開始してから10年が経過すると消滅します。これは除斥期間と考えられています。

遺留分侵害額請求権の時効を止める方法

では、遺留分侵害額請求権の時効を止めるにはどうしたら良いのでしょうか。その方法を解説します。

配達証明付内容証明郵便で通知書を送る

遺留分侵害額請求権の時効を止めるためには、相手方に対し、下記の事項を記載した通知書を配達証明付内容証明郵便で送りましょう。

  • 請求をする本人と相手方
  • 請求の対象となる遺贈、贈与、遺言の特定
  • 遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求する旨
  • 請求の日時

たとえば、「私は、相続太郎の相続人ですが、貴殿が被相続人相続太郎から令和3年8月18日付遺言書により遺贈を受けたことによって私の遺留分が侵害されていますので、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求します」というように記載します。
配達証明付内容証明郵便にする理由は、後に「そもそも通知書なんて届いていない」「遺留分侵害額請求を行使するなど書いてなかった」などと争いになった場合に証拠として使えるからです。配達証明を付けることで、通知書が相手方に届いたことを証明できます。また、内容証明を付けることで、通知書が遺留分侵害請求権を行使する内容であったことを証明できます。

配達証明付内容証明郵便の発送方法

発送方法としては、郵便局に赴いて手続きする方法とインターネット上で手続きするe内容証明という方法があります。文字数や行数などの書式が決まっていますので、郵便局のホームページで確認してから通知書を作成しましょう。

なお、内容証明はすべての郵便局で扱っているわけではありません。郵便局に赴く場合には、事前に取り扱いの有無を確認しておきましょう。

遺留分侵害額請求権を行使したあとの時効は5年

配達証明付内容証明郵便で通知書を送っておけば時効はもう安心、というわけにはいきません。ややこしいのですが、遺留分侵害額請求権を行使したことで発生する金銭支払請求権は、遺留分侵害額請求権とは別の権利として、5年で時効にかかってしまいます。つまり、遺留分侵害額請求権を行使しても、その後5年間何もしなければ、金銭請求はできなくなってしまいます。

なお、厳密にいうと、遺留分侵害額請求権を行使した時期によって時効期間が変わります。なぜなら2020年4日1日施行の改正法で消滅時効のルールが変わったからです。そのため、2020年3月31日以前に行使していれば10年、同年4月1日以降に行使していれば5年が時効になります。

金銭支払請求権の時効を止める方法

5年以内に交渉がまとまらずに時効にかかってしまいそうな場合は、遺留分侵害額請求権に基づく金銭の支払いを求める裁判を起こすことで時効を止めることができます。

それ以外には、相手方が自らに金銭を支払う義務があることを承認した場合にも、その時点で時効は振り出しに戻ります。ただし、相手方が承認した時点からさらに5年が経過すると再び時効になってしまうので注意してください。

遺留分減殺請求権との違い

従来の遺留分減殺請求権では、贈与などを受けた財産そのものを返還するという「現物返還」が原則で、金銭での支払いは例外的な位置付けでした。たとえば、不動産の贈与などによって遺留分が侵害され、遺留分減殺請求権を行使した場合、その不動産そのものが返還され、その結果、当該不動産は遺留分減殺請求権を行使した者と行使された者との共有になるというのが原則でした。

しかし、現在の遺留分侵害額請求権では、「現物返還」ではなく「金銭請求」に一本化されました。この金銭請求権は5年で時効にかかることになります。

まとめ

遺留分侵害額の請求期限を過ぎてしまったら、遺留分侵害額を払ってもらえなくなってしまいます。そのため、なるべく早めに対応することが大切です。自分で交渉することに躊躇がある人や方法がわからない場合は早めに弁護士に相談しましょう。

(記事は2021年9月1日時点の情報に基づいています)