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遺留分侵害額請求の時効はいつまで? 期限や時効を止める方法を解説
一定の相続人がとれる最低限度の遺産割合を求める遺留分侵害額請求の期限について弁護士が解説します(c)Getty Images
遺留分を侵害されたら、請求期限はいつまでになるのでしょうか?基本的には「相続開始と遺留分侵害」を知ってから1年以内に請求しなければなりません。遺留分の時効を止める通知を送ったあとにも「金銭債権の消滅時効」が適用されるので注意が必要です。
確実に時効を止めるためには、早めに弁護士に相談することをお勧めします。遺留分侵害額の請求期限や請求のやり方について、弁護士がわかりやすく解説します。
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1. 遺留分侵害額請求権とは
被相続人(亡くなった人)の配偶者、子、両親などには、法律で最低限の遺産相続分が定められており、これを遺留分と言います。遺留分が侵害された場合、不足分を取り戻すために金銭を請求する権利を「遺留分侵害額請求権」と呼びます。
例えば、「財産はすべて長男に相続させる」などの不公平な内容の遺言や、特定の相続人への偏った生前贈与(特別受益)があった場合、ほかの相続人は遺留分を主張することができます。
なお、相続人の兄弟姉妹には遺留分はありません。
2. 遺留分侵害額請求権の時効は1年?5年?10年?
遺留分には請求期限があり、この請求期限のことを法律上「時効」と言います。時効を過ぎると、原則として侵害された遺留分を請求できなくなるため注意が必要です。侵害された遺留分を請求するためにも、請求権を失う時効期間を正確に理解しておく必要があります。
2-1. 相続と遺留分侵害を知ってから「1年」
遺留分侵害額請求権は「相続が開始したことおよび遺留分を侵害する遺贈や贈与などがあったことを遺留分権利者が知ってから1年」の間に行使しないと、時効により消滅します。単に遺贈や贈与などがあったことを知っただけでなく、これらが遺留分を侵害することまで知っていることが必要です。
2-2. 金銭支払請求権は「別途5年」の時効
遺留分侵害額請求権を行使したことで発生する金銭支払請求権は、遺留分侵害額請求権とは別の権利として、原則5年の時効にかかります(民法166条1項1号)。つまり、遺留分侵害額請求権を行使しても、その後5年間何もしなければ、金銭の請求はできなくなってしまいます。
2-3. 遺留分侵害額請求権の除斥期間は「10年」
遺留分侵害額請求権には「時効」以外にも、「除斥期間」という10年間の期間制限もあります。
たとえ、相続が開始したことや遺留分を侵害するような遺贈や贈与などがあったことを遺留分権利者が知らなくても、相続が開始してから10年が経過すると遺留分侵害額請求権は消滅します。
この10年を「除斥期間」といい、時効における「完成猶予」や「更新」に関する規定の適用はありません。相続開始から10年以内に遺留分侵害額請求を行う必要があります。
2-4. 【もっと詳しく】時効と除斥期間の違いとは
消滅時効と除斥期間はいずれも一定期間の経過によって権利が失われる制度です。ただし、下記のような違いがあります。
・消滅時効には「完成猶予」や「更新」がある
消滅時効には時効のカウントダウンを一時的に止める「完成猶予」、時効をリセットしてゼロからカウントし直す「更新」という制度があります。一方、除斥期間にはこれらの制度がありません。
・消滅時効で権利を失わせるには「時効の援用」が必要
「時効の援用」とは、簡単に言うと、「時効期間が過ぎているので支払義務はなくなりました」と債権者に伝える行為です。時効の援用をして初めて支払義務が消滅します。一方、除斥期間の場合、援用は不要です。
遺留分侵害額請求権の時効と除斥期間を図解。相続開始から10年で遺留分侵害額請求権は消滅する
3. 遺留分侵害額請求権の時効を止める方法
では、遺留分侵害額請求権の時効を止めるにはどうしたら良いのでしょうか。その方法を解説します。
3-1. 配達証明付内容証明郵便で通知書を送る
遺留分侵害額請求権の時効が近づいている場合には、相手方に対し、下記の事項を記載した通知書を配達証明付内容証明郵便で送りましょう。
- 請求をする本人と相手方
- 請求の対象となる遺贈、贈与、遺言の特定
- 遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求する旨
- 請求の日時
たとえば、「私は、相続太郎の相続人ですが、貴殿が被相続人相続太郎から令和8年1月20日付遺言書により遺贈を受けたことで私の遺留分が侵害されていますので、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求します。」というように記載します。
配達証明付内容証明郵便にする理由は、「そもそも通知書なんて届いていない」「遺留分侵害額請求を行使するなど書いてなかった」などと争いになった場合に証拠として使えるからです。配達証明を付けることで、通知書が相手方に届いたことを証明できます。また、内容証明を付けることで、通知書が遺留分侵害額請求権を行使する内容であったことを証明できます。
発送方法には、郵便局で手続きする方法と、インターネット上で手続きする方法(e内容証明)があります。文字数や行数などの書式が決まっているので、郵便局のホームページで確認してから通知書を作成しましょう。
なお、内容証明はすべての郵便局で扱っているわけではありません。事前に取り扱いの有無を確認しておきましょう。
3-2. 支払いを求める裁判を起こす
遺留分侵害額請求を行ったものの、5年以内に交渉がまとまらず時効にかかりそうな場合は、遺留分侵害額請求権に基づく金銭の支払いを求める裁判を起こすことで、時効を止めることができます。
また、相手方が自らに金銭を支払う義務があることを承認した場合にも、その時点で時効は振り出しに戻ります。ただし、相手方が承認した時点からさらに5年が経過すると、再び時効になるため注意してください。
3-3. 遺言の無効が争われても時効はストップしない
遺言の無効が争われている場合、「遺言は無効なのだから、そもそも遺留分が侵害されているという認識はなく、時効も進行しない」と考えられそうです。
しかし、法改正前の遺留分減殺請求権について最高裁判所は、「事実上及び法律上の根拠があって、遺留分権利者が遺言の無効を信じているため遺留分減殺請求権を行使しなかったことがもっともだと首肯しうる特段の事情が認められない限り、時効は進行する」と判示しています(最判昭和57.11.12)。
判例によると、遺言の無効が争われていても原則的に時効は進行し、例外的に「特段の事情」が認められる場合に限って時効は進行しない、ということになります。
そのため、遺言の無効を争う場合でも、予備的に遺留分侵害額請求権を行使しておくことが大切です。そうしておかなければ、遺言の無効が認められなかった場合に、時効により遺留分すら請求できないといった事態が生じてしまうおそれがあります。
4. 遺留分について弁護士に相談・依頼するメリット
4-1. 遺留分侵害額請求が時効にかからないように対処してもらえる
前記のとおり、遺留分侵害額請求は消滅時効によって権利が消滅してしまう可能性があるため、早めの対応が必要です。弁護士に依頼すれば、内容証明郵便の送付など的確に時効の完成を阻止する手続きをしてくれます。
特に相手方が金銭支払に応じずに訴訟をせざるを得ない場合、訴訟の準備にはかなりの手間がかかるため、専門的な知識がなければスムーズに対応することは困難です。弁護士に依頼していれば、当初の請求からその後の訴訟対応まで一貫して任せられるので安心です。
4-2. 適切な遺留分を他の相続人に請求できる
遺留分侵害額を計算するには遺産の総額を明らかにすることが必要ですが、遺産の全容がわからないこともあるでしょう。弁護士に依頼すれば、相続財産の調査を代行してもらえます。
また、生前に贈与がなされていたり、遺言で複数の相続人に相続がなされていたりすると、遺留分侵害額の計算はかなり複雑になるため、正確に計算することは大変です。見落としがあると、本来請求できる金額よりも少なく請求してしまうこともあるでしょう。弁護士に依頼すれば、法的知識に基づいて遺留分侵害額を正確に計算してもらえます。
4-3. 請求にかかる手間やストレスを軽減できる
相続人同士で直接やり取りをすると、感情的になりがちで、泥沼化するおそれがあります。また、相手方との交渉の手間やストレスも軽視できません。
弁護士が介入することで冷静な話し合いができ解決に至ることが期待できるうえ、代理で相手方とやり取りをしてくれるため手間やストレスが軽減されます。サポートしてくれる味方がいることは、大きな心理的支えにもなります。
加えて、弁護士が介入することで相手方に本気度が伝わり、任意に支払ってくれる可能性が高まるでしょう。
5. 遺留分の時効に関する法改正
5-1. 従来の遺留分減殺請求権との違い
遺留分侵害額請求権は、2019年の法改正前までは「遺留分減殺請求権」との名称でした。
従来の遺留分減殺請求権では、贈与などを受けた財産そのものを返還するという「現物返還」が原則で、金銭での支払いは例外的な位置付けでした。たとえば、不動産の贈与などによって遺留分が侵害され、遺留分減殺請求権を行使した場合、その不動産そのものが返還され、その結果、当該不動産は遺留分減殺請求権を行使した者と行使された者との共有になるというのが原則でした。
しかし、遺留分侵害額請求権では「現物返還」ではなく「金銭請求」に一本化され、トラブルが生じやすい不動産の共有を避けることができるようになりました。
5-2. 金銭支払請求権の時効の変更
遺留分侵害額請求権を行使したあとの金銭支払請求権は、遺留分侵害額請求権を行使した時期によって時効期間が変わります。なぜなら2020年4日1日施行の改正法で消滅時効のルールが変わったからです。そのため、2020年3月31日以前に行使していれば10年、同年4月1日以降に行使していれば5年が時効になります。
6. 遺留分侵害額請求の時効に関してよくある質問(Q&A)
Q. 時効が過ぎたら完全に請求できなくなる? 例外は?
時効期間が経過しても相手方から時効の援用がなされなければ請求できます。ただし、相手方から時効の援用がなされ、請求できないケースがほとんどでしょう。例外として時効の「完成猶予」や「更新」によって時効が完成していなければ、請求できます。
Q. 時効が迫っているとき、まず何をすべき? 通知だけで間に合う?
どの時効が迫っているのかによって対応が異なります。たとえば、遺留分侵害額請求権の時効(1年)の場合、配達証明付内容証明郵便で通知書を送るなどしておけば足り、訴訟は不要です。 一方、金銭支払請求権の時効(5年)の場合、通知書で催告するだけでは時効の完成猶予にしかならないので、訴訟をすべきです。
Q. 遺産分割協議中なら時効は進まない?
「遺産分割協議中であるから」という理由だけでは時効は止まりません。遺留分侵害額請求権や金銭支払請求権のいずれも法律の規定に沿って時効が進んでしまいますので、時効が完成してしまわないように対応が必要です。
7. まとめ 遺留分の時効は複雑 早めに弁護士に相談を
遺留分侵害額請求権の期限を過ぎてしまうと、侵害された遺留分を払ってもらえなくなってしまいます。時効を止めるための対応は的確に行う必要があるうえ、いつから時効を計算するかの判断が難しいケースもあります。遺留分を含む遺産相続でもめたら、なるべく早めに行動することが大切です。親族との交渉がうまく行かない場合や交渉をまとめる方法がわからない場合は、早めに弁護士に相談しましょう。
(記事は2026年7月1日時点の情報に基づいています)
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