兄弟で二次相続する場合の注意点 揉めやすいポイントを弁護士が解説
兄弟で二次相続する場合、相続トラブルが起こりやすいので注意が必要です。揉めたまま相続税の申告時までに遺産分割ができないと、控除を適用できない可能性もあります。今回は兄弟が二次相続する場合の注意点や、スムーズに進めるためのポイントを弁護士が解説します。
兄弟で二次相続する場合、相続トラブルが起こりやすいので注意が必要です。揉めたまま相続税の申告時までに遺産分割ができないと、控除を適用できない可能性もあります。今回は兄弟が二次相続する場合の注意点や、スムーズに進めるためのポイントを弁護士が解説します。
目次
「相続会議」の弁護士検索サービスで
例えば、父親と母親と息子2人の家族がいるとします。
父親が死亡し、母と息子2人が相続した後、父の相続についての遺産分割が未了の間に、母が死亡しさらに相続が発生し、息子2人が相続するような場合を二次相続と言います。
このようなケースでは、父親の相続についての遺産分割の問題と、母親の相続についての遺産分割の問題と2つの問題が含まれており、法律関係が煩雑になります。その上、それまで仲裁役であった両親がいなくなり、兄弟間で遺産を分けることになるので利害対立が激しくなり、感情的にも非常に揉めやすいといえます。
例えば、上記事例では、父の相続についての法定相続分は、母が2分の1、兄4分の1、弟4分の1です。
その後の母の相続について法定相続分は、兄と弟はそれぞれ2分の1ずつとなります。
母の相続の際に、父の遺産分割の問題も含めて解決することになるので、父の相続についての母の法定相続分2分の1についても基本的には兄と弟それぞれ2分の1ずつで分けるということになります。
(1)二次相続の際、自己の遺留分が侵害される場合
二次相続に限ったことではありませんが、生前贈与や遺言などにより自己の遺留分が侵害されるような場合は、遺留分侵害額請求をすることができます。
二次相続の問題では、特に兄弟姉妹間で争われるようなケースが想定されます。両親が特に可愛がっている子どもにのみ財産を多く与えて、他の兄弟が不公平な扱いを受けるというようなケースなどでは、特に遺留分侵害額請求など検討が必要かもしれません。それ以外では、このような不公平の解消手段として、遺産分割協議の際に特別受益の主張をすることなども検討されます。
(2)遺留分侵害額請求権の相続について
例えば、上記事例の一次相続で母が遺留分を侵害されていたとします。そして、その後、時効期間の1年を経過しないうちに母が亡くなった場合、一次相続の際に発生した母の遺留分侵害額請求権は二次相続の際に子どもらに相続されます。
二次相続の場合、一次相続の場合と比べると相続税が多額になることが多いです。
理由としては、以下のようなものが考えられます。
①相続人の人数が一次相続の場合と比べると少ないこと
相続税を計算する際の基礎控除は、「3000万+(600万×法定相続人数)」です。そのため、法定相続人の数が少なくなれば、その分、基礎控除額も少なくなるため、相続税として納付しなければならない金額も増えるということです。
②配偶者控除が使えないこと
相続税では、「配偶者控除」があります。
これは「1億6000万円と法定相続分のいずれか大きい金額まで課税されない」という制度です。しかし、一次相続の際には使えた配偶者控除は、二次相続ではその配偶者も亡くなっているため使うことができません。そのため、一次相続の際に配偶者が相続した財産に配偶者自身の財産を加えた金額に課税されることになります。
③小規模宅地等の特例が利用できない可能性があること
自宅不動産の相続の場合、「小規模宅地等の特例」という制度により一定の面積までは宅地の相続税評価額を80%減できることがあります。
一次相続の場合は、配偶者が自宅不動産を相続することで小規模宅地等の特例を使えることが多いです。しかし、二次相続の際は、子どもが自宅不動産を相続するというケースになります。その場合、前記特例の適用を受けるためには、子どもが親と同居していることが必要となるなど、相続税を減額できる要件が厳しくなっています。そのため、結果的に特例が適用されず、納付額が増加する可能性があります。
以上のような理由から、二次相続においては一次相続の場合よりも相続税の納付額が高くなってしまうことが想定されます。そのため、事前に相続税対策をすることが不可欠です。
事前の対策としては、以下のようなものが考えられます。
①生前贈与を行うこと
生前贈与とは、生前のうちに遺産となる財産を相続人に贈与してしまうことです。
贈与をする場合、贈与税が課されますが、贈与税は年間110万円までは基礎控除が認められています。ただし、10年間にわたって毎年100万円を贈与するなど、定額で贈与することを決めてしまうと、最初から1000万円贈与するつもりであったとして、1000万円に贈与税が課される可能性があるため注意が必要です。
②配偶者の資産を増やさないようにすること
例えば、一次相続の際に配偶者の相続分をあまり多くしないようにするなどして、配偶者の資産をなるべく増やさないようにする工夫が必要です。配偶者の資産が増えれば二次相続での相続財産も増え、上記の通り、配偶者控除が使えず納付額も高くなるためです。
③小規模宅地等の特例を受けられるよう親と同居する
小規模宅地等の特例との関係で、親の近くに住んでいる子どもの場合、親と生前から同居することで特例の要件を満たすように工夫することも考えられます。
④生命保険に加入する
保険金はみなし相続財産として相続税の課税対象となりますが、死亡保険金には「法定相続人の数×500万」という非課税枠があります。そのため、生命保険に加入することで相続税の負担を軽くすることができます。
以上が相続税対策の大枠ですが、具体的な相続税の額や対策については税理士等の専門家に相談することをおすすめします。
全国47都道府県対応
相続の相談が出来る弁護士を探す二次相続対策としては、相続は家族間の問題であることから、問題が起こる前になるべく話し合いをして将来どうするか決めておくことが大切です。
ただ、二次相続についての問題を意識していない場合、なかなか事前に話し合いをするということは難しいかもしれません。
二次相続については、事実上、揉めるケースが多いです。ただ、法律問題としては通常の相続と異なる特有の問題は少ないかもしれません。むしろ、税務上の問題や相続税対策が特に問題となると思われます。税務上の問題がある場合は税理士に、相続人の間で揉めそうな場合は弁護士に相談するといいでしょう。
(記事は2021年10月1日時点の情報に基づいています。)
「相続会議」の弁護士検索サービスで