遺産分割はお互いの尊重が大切 相続人調査は確実に
遺産相続では、相続人同士で遺産の分け方を決める「遺産分割協議」をします。相続の基本とも言える手続きですが日常生活で考える機会はなかなかありません。朝日さん一家の相続会議でも話題にあがりました。今回も、ソーゾク博士にやさしく解説してもらいました。今回の記事を監修してくれたソーゾク博士は、鳥飼総合法律事務所の弁護士、奈良正哉さんです。
遺産相続では、相続人同士で遺産の分け方を決める「遺産分割協議」をします。相続の基本とも言える手続きですが日常生活で考える機会はなかなかありません。朝日さん一家の相続会議でも話題にあがりました。今回も、ソーゾク博士にやさしく解説してもらいました。今回の記事を監修してくれたソーゾク博士は、鳥飼総合法律事務所の弁護士、奈良正哉さんです。
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遺産相続には具体的にどういう手続きが必要なんだろう。
相続のはじめの一歩として、「遺産分割協議」をしなければなりません。相続人全員で「誰がどの遺産を取得するか」「どのような方法で分けるのか」を話し合って決めるものです。
遺言書があっても話し合う必要があるの?
いい指摘です。相続の方法が書いてある遺言書があれば、遺産分割協議は不要です。
じゃあ、逆に協議が必要なのは、どんな時?
相続人が複数人いたり、遺言書に遺産相続の方法がすべて盛り込まれていなかったりする時が当てはまります。
そうすると、まずは相続人が誰なのかを調べないといけない。
そうなんです。それを「相続人調査」と言います。結構大変な作業ですよ。亡くなった人の本籍地の役所で出生から亡くなるまでの戸籍謄本などを取得して、法定相続人を調べるのです。その結果、判明した相続人全員に声をかけて遺産分割協議を進めなくてはなりません。
じゃあ、本籍地を何度も変えていたら、それだけ調べる手間がかかるってこと……?
そうなんです。戸籍謄本などはすべての役所から取り寄せる必要があります。養子も法定相続人なので、存在が判明したら注意してください。しかも、相続人が1人でも欠けていたら、協議はイチからやり直さないといけません。
それは大変だ! その後の流れはどうなるの?
相続人調査が終わったら、相続人を一つの関係図にまとめましょう。これを「相続関係説明図」と言います。疎遠にしていたり、面識がなかったりする相続人にも、必ず全員に声をかけて遺産分割協議に参加してもらいます。
四十九日の法要が終わった後とかなら、親族が顔を合わせるから話しやすそうだ。
そういったケースが多いみたいですね。遺産分割協議というと、顔を合わせて進めるイメージがありますが、メールや電話でやりとりしても構いません。協議が全てまとまったら、「遺産分割協議書」を作成します。これは、協議の結果をまとめた契約書のような意味合いを持っています。出来上がったら、相続人全員が実印で署名捺印します。
「遺産はいらないよ」という人がいたらどうすればいいの?
その場合は、家庭裁判所で「相続放棄の申述」をしてもらうか、遺産分割協議書に相続しない旨を書いてもらいましょう。この二つは、それぞれ法的効果が違うので、慎重に考えてください。
連絡が取れなかったり、話し合いに消極的な人がいたりすると困るだろうなぁ。うまく進めるために、心がけることはあるのかな?
相続人それぞれが、自分の都合を強調しすぎてまとまらないと、家庭裁判所で「遺産分割調停」を行わなければなりません。調停には、時間も労力もかかるため、話し合いで解決するのに越したことはありません。そのためには、お互いが相手の立場を尊重して話し合い、協議をまとめる姿勢が大切です。
・複数の相続人がいたり、遺言書に遺産相続の方法がなかったりする時は遺産分割協議を行う
・相続人が1人でも欠けると協議をやり直さないといけないので相続人調査は正確に進める
・協議をまとめるには、相続人同士がお互いを尊重することが大事
(今回のソーゾク博士=鳥飼総合法律事務所、弁護士奈良正哉さん、構成=相続会議編集部)
(記事は朝日新聞土曜別刷り「be」に掲載した内容を基に掲載しています。2021年8月1日時点での情報に基づきます)
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