祖父名義のままにするデメリットは?

今回の具体的な事例を考えると、次のようなケースです。
例えば、祖父名義の土地に父親が家を建て、祖父が亡くなった後は、父親と長男夫婦がその家に同居し、次男は独立して暮らしています。その後、父親が亡くなって相続が発生。遺産を整理する段階で、敷地が祖父名義のままだったことが判明するという事例です。
次男としては、父親を介護してくれた長男夫婦に遺産を全て渡そうと思った場合、祖父名義の土地について、どのような手続きをすればいいのでしょうか。

「長年祖父名義のままだったのだから、あえて名義変更する必要はないのでは?」と思う方もおられるかもしれません。確かに現状(令和3年3月時点)では法的に問題はありません。しかし、様々な弊害が生じる可能性があります。

売却ができない

父親名義の建物だけ長男が相続した上で、そのまま長男夫婦が住み続けることに問題はないでしょう。しかし、その長男夫婦が引越しや施設へ入居することになった場合に、祖父名義のままでは売却できません。建物と土地は別の不動産ですが、実際は一体のものとして売却する必要があるところ、祖父名義の土地を売却する権限が長男にはないからです。

建て替えられない

長男が建物を建て替える際にも問題が生じます。建物自体を建て替えることは名義人である長男の判断で可能ですが、その敷地が祖父名義だと、建築業者が後々のトラブルを恐れて、名義を変更した後でないと建築を引き受けてくれない可能性があります。
また、お金を借り入れて建て替える場合には、その金融機関が建物と土地に抵当権を設定しますが、祖父名義の土地には抵当権を設定できないため、借り入れ自体ができなくなります。
長男と次男の間で、土地は「事実上長男のもの」と認識していても、名義が祖父名義である以上、売却や担保設定できないのは大きなデメリットです。

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祖父名義の土地を長男名義にする手続き

土地の相続登記を申請する際には「相続人全員による遺産分割協議」が必要です。では、祖父名義の土地に関する相続人とは「父親の相続人」でしょうか。それとも「祖父の相続人」でしょうか。整理しながら考えていきます。

祖父の相続人全員による遺産分割協議が必要

正解は、当然「祖父の相続人」です。
祖父の相続人は祖父の配偶者及び子どもですが、配偶者は既に亡くなっていることがほとんどなので、祖父の子ども、つまり「父親の兄弟と遺産分割協議」を行う必要があります。また、その兄弟姉妹が既に亡くなっていれば、「兄弟姉妹の子どもとの遺産分割協議」が必要です。事情がどうであれ「名義人」の相続人全員による遺産分割協議が必要になるのがポイントです。

次男は父親の財産を相続放棄する

次男が祖父の相続放棄の申立てをすることはできません。次男は祖父の直接の相続人ではなく、「祖父の相続人たる父の相続人」に過ぎないからです。
では、祖父名義の土地の相続放棄申立てができないかというと、そんなことはありません。父親の死亡を知ってから3か月以内に「父親の相続放棄申立て」をすれば、次男は父親の相続人ではなくなります。父親の相続人ではないということは、祖父名義の土地を相続する権利もなくなることを意味します。結果的に、祖父の相続放棄をしたのと同じことになります。なお、相続放棄の申立ては家庭裁判所で行い、預貯金も含めた全ての財産を相続することができなくなるので注意が必要です。

遺産分割協議で全て長男が相続する

相続放棄の申立てをしなくても、長男との間で「父の遺産は全て長男が相続する」旨の遺産分割協議が成立すれば、事実上祖父名義の土地を相続放棄したのと同じことになります。次男が父親から相続する財産がないのであれば、祖父名義の土地を相続することもないからです。ただし、祖父名義の土地を長男名義にするためにはあくまで「祖父の相続人全員の遺産分割協議」が必要なのは前述のとおりです。もちろん、祖父の相続人全員とは、父親のきょうだいにあたる、おじやおばも入ります。おじやおばも亡くなっていたら、さらに、その子ども、つまり、いとこたちとも協議しないといけないかもしれません。

家系図をもとに解説すると、以下のようになります。

祖父の土地を相続できるかどうか、家系図をもとにまとめました
祖父の土地を相続できるかどうか、家系図をもとにまとめました

次男の二郎が祖父名義の土地を相続放棄する場合は、以下の三つに整理できます。
方法①
祖父の相続人に当たる一郎・二郎・和子・礼子による遺産分割協議で祖父名義の土地を一郎名義にする

方法②
太郎(父親)の相続に関する遺産分割協議は一郎と二郎のみで可能。その遺産分割協議の中で「太郎の遺産は全て一郎が相続する」としておけば、二郎が祖父名義の土地を相続することはない。

方法③
二郎は祖父の直接の相続人ではないため、「祖父の相続放棄申立」はできないが、「太郎(父親)の相続放棄申立」は可能。結果として祖父の土地を相続することはできなくなる。

相続手続きの原則は「速やかに行う」

相続人は雪だるま式に増える

現状(令和3年3月時点)では相続登記は義務化されていないため、とりあえず故人名義のままにしておいても、ただちに大きな問題は生じません。しかし、相続登記には「名義人の相続人全員による遺産分割協議」が必要です。相続登記を済ませないで放置しておくと、相続人は雪だるま式に増え、遺産分割協議をまとめることが困難になります。筆者の経験では相続登記を放置していた結果、相続人が50人を超えていたというケースもありました。
ここまで増えると相続人同士の面識がないことが多く、遺産分割協議をまとめるのは困難を極め、場合によっては莫大な費用がかかることになります。

四十九日法要を一つの目安に

かといって、家族が亡くなった後、すぐに手続きをとるのは精神的に辛いと思います。その場合は四十九日の法要を一つの区切りとして相続登記をすることをおすすめします。ただし、被相続人に負債等がある場合は相続放棄の申立て期限があるので注意が必要です。

まずは専門家に相談を

相続登記は、相続人自ら申請することが可能です。しかし、今回の事例のように祖父名義の相続となると、相続関係が複雑になり、相続人の調査や遺産分割協議の作成に、大量の時間を要するとともに高い専門性も必要です。自分で相続登記を試みたものの、手続きが煩雑なので途中で頓挫した結果、名義が放置されるというケースも散見されます。
このようなケースではまずは相続・登記の専門家に相談されることを強くお勧めいたします。

(記事は2021年3月1日現在の情報に基づきます)