元夫の「借金返済の督促状」が子どもあてに届いた!

たとえば15年前に夫と離婚した女性がいるとします。離婚する際に子どもの親権者となり、子どもの戸籍は元夫の戸籍から抜いて自分の戸籍に入れています。元夫とは長年連絡をとっておらず、養育費ももらっていないし、15年間、すっかり忘れて生活していました。

ところが、ある日突然、消費者金融会社から子どもあてに「借金返済の督促状」が届きました。元夫が借金していて子どもが相続人になっているとのこと。驚いて「私が親権者で戸籍も抜いているのに借金を相続するの!?」と疑問に感じてしまいました。

このように親に借金があった場合、子どもが借金を相続しないためにはどうしたら良いのでしょうか? 子どもが親の借金を相続しないためには熟慮期間内に相続放棄か限定承認をする必要があります。限定承認は難しいケースが多いので相続放棄するのが良いでしょう。

1.両親が離婚しても子どもは相手の相続人になる

1-1.離婚しても子どもと親の縁は切れないので子どもは親の相続人になる

両親が離婚したとしても両親が子どもの親であることに変わりはありません。そのため、たとえば両親が子どもの幼いころに離婚し、片方の親とは長年会っていなかった場合であっても、子どもは父親及び母親の両方の相続人となり、両親の財産を相続します。

なお、その場合、両親同士はすでに離婚しているため、元配偶者が亡くなったとしても、相続人にはなりません。

1-2.借金も子どもの相続の対象に

子どもが相続人となった場合は、両親のプラスの財産だけではなく借金も相続することになります。つまり、両親が生前に借金していた場合は、子どもが相続人として借金を支払わなければなりません。

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2.離婚後に子どもが相続人になる「間違いやすいケース」

両親の離婚後に子どもが相続人になる点については、両親が親権者かどうかは関係ありません。

両親が離婚した場合、離婚する際に母親か父親のどちらかが親権者となります。親権者となった親は、子どもを引き取って一緒に暮らすということがほとんどであるため、親権者でない親と子どもはあまり会わなくなることも多いです。

もっとも、相続においては、実の親である限り、両親のどちらが親権者になったかにかかわらず、子どもは実の親の相続人となります。そのため、亡くなった親の財産を相続するかを判断する必要があります。

2-1.子どもが一方の親の戸籍から抜かれても相続人になる

両親が離婚すると、両親は別々の戸籍となります。母親が親権者となり旧姓に戻る場合は、子どもが父親の戸籍にいると母親と子どもの姓が異なってしまいますので、子どもを母親の戸籍に移すということがよく行われています。

両親の離婚後に子どもが父親の戸籍から抜けて、母親の戸籍に移ったとしても、将来、子どもは父親の相続人にもなりますし、母親の相続人にもなります。

2-2.子どもが普通養子縁組をしても相続人になる

両親が離婚し、子どもは母親に引き取られ、母親が再婚して子どもが再婚相手と普通養子縁組をしたとしても、子どもは実の親の相続人となります。子どもは実の親である父親や母親の相続人にもなりますし、養親となった再婚相手の相続人にもなります。

なお、養子縁組には、普通養子縁組と特別養子縁組の2種類があります。特別養子縁組の場合、養子縁組の日から子どもとしての身分を取得する点は普通養子縁組と同じですが、この時点で実の親との親子関係がなくなってしまう点で異なります。そのため、子どもが一方の実親及び再婚相手と特別養子縁組をした場合は、養子縁組をした時点から、他方の実親との親子関係がなくなります。つまり、特別養子縁組をしなかった他方の実親の相続人ではなくなるということになります。

もっとも、再婚の場合は、特別養子縁組が裁判所で認められることは稀で、子どもと再婚相手は普通養子縁組をするケースがほとんどです。

3.代襲相続にも要注意

代襲相続とは、被相続人(亡くなった人)よりも先に相続人となるべき人が死亡している場合に、相続人の子どもが代わりに相続人になることです。たとえば、祖父が死亡した時点で、先に父親が死亡していたという場合は、祖父の孫にあたる子どもが相続権を取得することになります。

そのため、両親が離婚し、母親に引き取られたという場合であっても、子どもは父親の相続人にもなりますし、代襲相続によって、父親の両親の相続人にもなる可能性があるという点に注意が必要です。

たとえば、父親の財産を相続放棄したとしても、その後に父親の両親が亡くなった場合、子どもは代襲相続によって、父親の両親(子どもの祖父母)の財産を相続する権利が発生します。その際、相続したくない場合はあらためて相続放棄しなければなりません。

4.親の借金を相続しない方法

4-1.相続放棄

実親が亡くなり、実親のプラスの財産とマイナスの財産を比べて、借金などのマイナスの財産が多いケースがあります。その場合は、自分が相続人と知ってから3カ月以内(熟慮期間)に相続放棄することで、借金の支払いを免れることができます。

4-2.限定承認

限定承認とは「相続で獲得したプラスの財産の範囲内で亡くなった人の借金を弁済し、プラスの財産が残れば相続する」という方法です。もっとも、限定承認をするには相続人全員の合意が必要であり、裁判所で手続きしなければならないため、時間や手間、費用もかかります。

4-3.ベストな対処方法

限定承認を選べば、少なくとも借金が残ったままになることはありませんが、上記のように、限定承認は時間や手間、費用の点からほとんど利用されていません。そのため、親の借金を相続しないためには相続放棄が最も簡便で、実際にもよく使われている方法であるといえます。

両親が離婚し、プラスの財産とマイナスの財産のどちらが多いかわからないという場合は、弁護士などの専門家に預貯金、不動産、株式、借金等の財産調査を依頼してから相続放棄をするか決めるという方法もあります。

なお、子どもが受取人となっている生命保険金は実親の遺産には入りません。子どもが相続放棄をしたとしても生命保険金を受け取ることができます。

5.子どもが親の借金を確実に免れるためには

子どもが離婚した親の借金を確実に免れるには、早期に相続放棄をする必要があります。長年会っていない親の相続は関係ないと考えるなど間違った知識で放置していると親の借金を相続してしまい、自己破産せざるを得なくなることもあります。そうなってしまう前に早めに弁護士に相談することをおすすめします。

(記事は2021年6月1日時点の情報に基づいています)