目次

  1. 1. 疎遠の実親が亡くなった事例 「借金返済の督促状」が子どもあてに届いた!
  2. 2. 両親が離婚しても子どもは親の法定相続人になる
    1. 2-1. 親権者かどうかは関係ない
    2. 2-2. 子どもが一方の親の戸籍から抜かれても相続人になる
    3. 2-3. 子どもが再婚相手と普通養子縁組をしても実の親の相続人になる
    4. 2-4. 代襲相続にも要注意
  3. 3. 離婚した親が亡くなったら連絡がくるパターン
    1. 3-1. 親族やほかの相続人からの連絡
    2. 3-2. 役所からの連絡
    3. 3-3. 警察からの連絡
    4. 3-4. 債権者からの連絡
    5. 3-5. 連絡がない場合もある
  4. 4. 離婚した親の死亡連絡を受けて、子が相続人としてすべきこと
    1. 4-1. 関わりたくないなら、すぐ相続放棄
    2. 4-2. 相続を検討するなら、相続人調査や財産調査から
  5. 5. 離婚した親の借金を相続しない方法
    1. 5-1. 3カ月以内に相続放棄
    2. 5-2. 限定承認は手間や費用がかかる
  6. 6. まとめ 子どもが親の借金を確実に免れるためには

たとえば、両親が15年前に離婚し、母親が親権者となった子どもがいたとします。子どもの戸籍は父親の戸籍から抜けて母親の戸籍に入っています。父親とは長年連絡をとっておらず、養育費ももらっていないし、15年間、すっかり忘れて生活していました。

ところが、ある日突然、消費者金融会社から子どもあてに「借金返済の督促状」が届きました。父親が借金していて子どもが相続人になっているとのこと。母親は驚いて「自分が親権者で戸籍も抜いているのに子どもが借金を相続するの!?」と疑問に感じてしまいました。

このように親に借金があった場合、子どもが借金を相続しないためにはどうしたら良いのでしょうか?

両親が離婚すると、父親と母親は互いに配偶者ではなくなるとともに、相続人でもなくなります。しかし、両親が離婚したとしても両親が子どもの親であることに変わりなく、法律上、子どもは親の相続人であり続けます。

たとえば両親が子どもの幼いころに離婚し、片方の親とは長年会っていなかった場合であっても、子どもは父親及び母親の両方の相続人となり、両親の財産を相続します。

子どもが相続人となった場合は、両親のプラスの財産だけではなく借金も相続することになります。つまり、両親が生前に借金していた場合は、子どもが相続人として借金を支払わなければなりません。

以下、離婚後に子どもが相続人になることについての間違いやすい点を説明します。

両親の離婚後に子どもが相続人になる点については、両親が親権者かどうかは関係ありません。親権とは未成年の子どもが不利益を被らないように教育や監護を行い、財産もしっかり守り管理する権限・義務のことです。

両親が離婚する場合、日本の法律では母親か父親のどちらかが子の親権者となります。親権者となった親は、子どもを引き取って一緒に暮らすということがほとんどであるため、親権者でない親と子どもはあまり会わなくなることも多いです。

ただし相続においては、実の親である限り、親権にかかわらず、子どもは実の親の相続人となります。

両親が離婚すると、両親は別々の戸籍となります。子どもの戸籍については、どちらが親権を持つかにかかわりなくそれまでの戸籍に載ったままです。しかし、たとえば母親が親権者となり旧姓に戻る場合は、子どもが父親の戸籍にいると母親と子どもの姓が異なってしまいますので、子どもを母親の戸籍に移すということがよく行われています。

離婚後に子ども戸籍を一方の親の戸籍から抜いたとしても、相続においては、将来、子どもは父親の相続人にもなりますし、母親の相続人にもなります。

両親が離婚し、子どもを引き取った母親が再婚し、子どもが再婚相手と普通養子縁組をしたとしても、子どもは実の親の相続人となります。子どもは実の親である父親や母親の相続人にもなりますし、養親となった再婚相手の相続人にもなります。

なお、養子縁組には、普通養子縁組のほかに特別養子縁組があります。特別養子縁組の場合、子は実の親との親子関係がなくなるため、実親の相続人ではなくなるということになります。ただし、再婚の場合は、特別養子縁組が裁判所で認められることは稀で、子どもと再婚相手は普通養子縁組をするケースがほとんどです。

【関連記事】養子縁組しても元の親の相続はできる? パターン別に解説!

代襲相続とは、被相続人(亡くなった人)よりも先に相続人となるべき人が死亡している場合に、相続人の子どもが代わりに相続人になることです。たとえば、祖父が死亡した時点で、先に父親が死亡していたという場合は、祖父の孫にあたる子どもが相続権を取得することになります。

そのため、両親が離婚し、母親に引き取られたという場合であっても、子どもは父親の相続人にもなりますし、代襲相続によって、父親の両親の相続人にもなる可能性があるという点に注意が必要です。

たとえば、父親が亡くなり子どもが父の財産を相続放棄したとしても、その後に父親の両親が亡くなった場合、子どもは代襲相続によって、父親の両親(子どもの祖父母)の財産を相続する権利が発生します。その際、相続したくない場合はあらためて相続放棄しなければなりません。

両親の離婚後、疎遠になっていた親が亡くなった場合、どのように連絡がくるのでしょうか。自動的に連絡がくるわけではなく、以下のような連絡のパターンが考えられます。

兄弟姉妹などの親族から連絡がくることが最も考えられるパターンです。もしくは、離婚後に親が再婚した相手やその子どもなど、顔さえ知らないほかの相続人から連絡があることも考えられます。

一人暮らしをしていた人が亡くなった場合などは、地元の市区町村役所が戸籍をたどって身寄りの調査をし、家族に遺品や遺骨の引き取りの依頼のための連絡をしてくるケースです。

事件や事故に巻き込まれた場合や「孤独死」などの不審死の場合には、警察が死亡時の調査をし、遺品の手がかりから家族に連絡するということもあります。

記事冒頭の事例のように、離婚後に疎遠となっていた親がつくった借金の債権者からの連絡で、初めて親が亡くなったことを知るということもあり得ます(こうした際の対応は後述します)。

離婚した親が亡くなっても、連絡がない場合もあります。再婚した相手やその子どもが、離婚前に子どもがいたことを知らなかったこともあるでしょう。

ただ、逆に離婚して疎遠になっている親が存命かどうかは、親の戸籍を取得して確認することはできます。戸籍は自身の親や祖父母、子や孫などの直系であれば取得が可能です。

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離婚した親が亡くなった、という連絡がきたら、疎遠で長年会ったことがなかったとしても、相続人としての手続きを始める必要があります。

離婚後に疎遠になっていた親とは、一切関わりたくないというケースであれば、すぐに家庭裁判所で相続放棄の手続きをとりましょう。関わりたくないからといって何もしないでいると、親が借金をして亡くなった場合には、その借金を相続することになってしまいます。

相続放棄の手続きは、自分が相続人であると知ってから3カ月以内という期限があるので注意が必要です。冒頭の事例のように、親の借金の債権者からの連絡で親の死亡を知ったという場合は、その連絡を受けてから3カ月以内に相続放棄の手続きをとれば、借金の支払いを免れることができます。

相続するかどうか検討したいという場合、相続人が誰なのかはっきりしていないのであれば、まずは相続人調査をするのがいいでしょう。同時に、借金やローンなどのマイナスの財産も含めてどれだけの財産があるのかを調べる財産調査も必要です。相続人調査も財産調査も、弁護士などの専門家に依頼すれば時間や手間を省くことができます。

財産調査の結果、プラスの財産が十分にあれば、相続手続きを進めましょう。ほかの相続人と協力して進めることが、遺産分割協議でも、その前の財産調査の段階でも不可欠となります。

【関連記事】相続人調査を弁護士に依頼するメリットとは 手続きの流れも解説‌

財産調査をした結果、マイナス財産が多ければ、以下の対応が考えらます。

前述の一切関わりたくない場合と同様に、借金などのマイナスの財産が多いケースでは、自分が相続人と知ってから3カ月以内に相続放棄することで、借金の支払いを免れることができます。

限定承認とは「相続で獲得したプラスの財産の範囲内で亡くなった人の借金を弁済し、プラスの財産が残れば相続する」という方法です。もっとも、限定承認をするには相続人全員の合意が必要であり、裁判所で手続きしなければならないため、時間や手間、費用もかかります。

限定承認を選べば、少なくとも借金が残ったままになることはありませんが、上記のように、限定承認は時間や手間、費用の点からほとんど利用されていません。そのため、親の借金を相続しないためには相続放棄が最も簡便で、実際にもよく使われている方法であるといえます。

なお、子どもが受取人となっている生命保険金は親の遺産には入りません。子どもが相続放棄をしたとしても生命保険金を受け取ることができます。

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子どもが離婚した親の借金を確実に免れるには、早期に相続放棄をする必要があります。長年会っていない親の相続は関係ないと考えるなど間違った知識で放置していると親の借金を相続してしまい、自己破産せざるを得なくなることもあります。そうなってしまう前に早めに弁護士に相談することをおすすめします。

(記事は2023年1月1日時点の情報に基づいています)