目次

  1. 1. 二重相続資格者とは
    1. 1-1. 孫が祖父の養子になっている
    2. 1-2. 二重相続資格者にならない場合
  2. 2. 二重相続資格者の法定相続分
    1. 2-1. 2人分の相続分が認められる
    2. 2-2. 二重相続資格者の法定相続分を具体例で確認
  3. 3. 二重相続資格者の相続放棄
    1. 3-1. 基本的な考え方
    2. 3-2. 異なる順位の相続資格がある場合
  4. 4. 二重相続資格者と相続税の基礎控除
  5. 5. まとめ

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「二重相続資格者」とは、1人に2人分の相続資格が認められる相続人のことです。

たとえば祖父が亡くなったときに孫養子が代襲相続人になると、孫は「子ども(養子)」としての相続人の地位と「代襲相続人(孫)」としての相続人の地位の両方を取得します。このように「子ども」と「代襲相続人」の地位が併存する場合が二重相続資格者の典型例となります。以下で具体例をみて理解を深めましょう。

孫が祖父の養子になっており、父親が祖父より早く死亡した例を考えてみましょう。すでに述べたとおり、この場合、祖父が死亡すると孫は「子ども(養子)」であり、かつ「代襲相続人(孫)」となります。

つまり孫には「子ども」と「孫」という2つの相続資格が併存します。この場合の孫が二重相続資格者です。

二重相続資格者となるには「同一順位の相続資格」が併存する必要があります。

2つ以上の相続資格があっても、順位が違ったら二重相続資格者にはなりません。以下で間違いやすいケースを確認しましょう。

◎ 兄弟姉妹が養子となった

被相続人(亡くなった方)に「子ども」がいる場合、被相続人の「兄弟姉妹」には相続資格が認められません。子どもは第1順位、兄弟姉妹は第3順位であり優先順位が異なるためです。

ただし、兄弟姉妹が養子に入っている場合は、「子ども(養子)」としての地位でのみ相続します。兄弟姉妹としての相続資格は問題にならないので、二重相続資格者にはなりません。

◎ 妻が夫の親の養子となり夫が死亡(親はすでに他界)

妻が夫の親の養子となり夫が亡くなった場合、夫婦に子どもがいなければ「配偶者(妻)」と「兄弟姉妹」が夫の相続人になります。妻には「配偶者」と「兄弟姉妹」の地位が併存するように思えますが、配偶者と兄弟姉妹は同一順位ではなく「配偶者」が優先されます。妻は「配偶者」としての地位のみが認められ、二重相続資格者にはなりません。

二重相続資格者にはどのくらいの法定相続分が認められるのでしょうか?

たとえば孫養子が代襲相続人となって子どもと代襲相続人の地位が認められる場合を考えてみましょう。遺産分割協議を進める際、孫養子には「子ども1人分」か「子ども2人分」のどちらの相続分が認められるのか、判断しなければなりません。

結論からいえば、二重相続資格者には「2人分」の相続分が認められます。相続資格が2人分ある以上、相続分も2人分と理解すべきだからです。

たとえば、孫が祖父の養子になっており、祖父には3人の子どもがいたとしましょう。

孫は祖父と養子縁組を行い、孫の父親(祖父の次男)は先に他界しました。その後祖父が死亡したら、孫養子の法定相続分はどうなるのでしょうか?

この場合、祖父の「子ども4人」としてカウントします。長男、次男(父親の代襲相続人としての孫)、三男、孫養子の4人です。相続割合はそれぞれ4分の1ずつです。ただし、孫は代襲相続人と養子の2つの資格を持っているので、合算して2分の1の相続資格を取得します。

孫が祖父の養子としての立場と、次男の代襲相続人としての立場を合算して相続します
父親がすでに亡く祖父の養子となった人は、祖父の養子としての立場と、次男の代襲相続人としての立場を合算して相続します

結果的に法定相続分は「長男が4分の1、三男が4分の1、孫養子が2分の1」となります。

次に二重相続資格者が相続放棄したらどうなるのか、みてみましょう。

二重相続資格者が相続放棄すると、基本的には「両方の被相続人について相続放棄」した扱いになります。「一方のみ相続放棄」したい場合には、相続放棄の際にその旨を留保しなければなりません。

たとえば孫養子が相続放棄すると、何も留保しなければ代襲相続人としても養子としても相続放棄の効果が発生してしまいます。養子としてのみ相続放棄したい場合は、その旨を留保する必要があります。留保が認められると代襲相続人1人分の地位でのみ相続が可能となります。

次に兄弟姉妹が養子になっているケース(養子であり、かつ兄弟姉妹)のように、「異なる順位の相続資格を保つ場合」の相続放棄の効果を考えてみましょう。

この場合、先順位の相続人の地位で相続放棄をしても、後順位の資格では相続放棄したことになりません。何も留保しなければ先順位の相続放棄しか認められないので、後順位の地位で相続する可能性があります。たとえば先の例の場合、「養子」として相続放棄しても「兄弟姉妹」として相続するということです。

両方の資格で相続放棄するには、相続放棄の申述の際に「養子としても兄弟姉妹としても相続放棄します」と意思を明らかにしなければなりません。

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二重相続資格者が相続人となる場合、「相続税の基礎控除」にも注意が必要です。

相続税の基礎控除の金額は「3000万円+法定相続人数」。この「法定相続人数」に何名の相続人を含められるかが問題となります。

実は相続税の計算においては、二重相続資格者は「1人分」として算定されます。たとえば孫養子が代襲相続人となる場合、1人分の控除しか認められません。「法定相続分」のように2人分にはならないので、間違えないように注意しましょう。

「生命保険の控除計算」についても同じです。生命保険金を受け取る場合、「法定相続人数×500万円」の相続税控除が認められますが、このときの「法定相続人数」も1人分として計算しなければなりません。

つまり「税務上の相続人の数え方」は、「二重相続資格者であっても1人」とされているのです。法律上の法定相続分とは異なるので、正しく認識しておきましょう。

二重相続資格者がいる場合の法定相続人や法定相続分、相続放棄などの考え方は複雑です。自己判断で間違うと高いリスクが発生してしまいます。

孫養子が代襲相続人になる場合、配偶者が養子縁組している場合など、1人に異なる相続資格が認められる場合には、早めに弁護士に相談してアドバイスを受けながら対応しましょう。

(記事は2021年4月1日時点の情報に基づいています)

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