目次

  1. 1. 相続放棄とは
  2. 2. 相続放棄をするべきケースは?
    1. 2-1. 相続財産が債務超過の場合
    2. 2-2. 相続トラブルに巻き込まれたくない場合
    3. 2-3. 特定の相続人に遺産を集中させたいケース
  3. 3. 相続放棄の方法、流れ
    1. 3-1. 相続放棄の申述書を提出する
    2. 3-2. 相続放棄の回答書を提出する
    3. 3-3. 相続放棄の受理書が送られてくる
  4. 4. 相続放棄できる期間は「3カ月」
  5. 5. 相続放棄の注意点
    1. 5-1. 生前の相続放棄はできない
    2. 5-2. 遺産を処分すると相続放棄できなくなる
    3. 5-3. 相続放棄は撤回できない
    4. 5-4. 相続人不存在になると管理義務が残ります
    5. 5-5. 熟慮期間を延ばしてもらえる可能性がある

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相続放棄とは、家庭裁判所に申述することによって「一切の資産や負債を相続しない」ことです。相続放棄した人は「はじめから相続人ではなかったこと」になるので、何も相続しません。不動産や預貯金などの資産も承継できませんが、借金などの負債も相続せずにすみます。また遺産分割協議に参加しなくて良いので、相続トラブルに巻き込まれる心配も要りません。

相続放棄をお勧めするのは以下のような方です。

相続が発生したときに通常通り単純承認すると、資産だけでなく負債も全部相続してしまいます。債務超過になっていると遺産の範囲内では負債を支払い切れないので相続人が自己負担で相続債務を払わねばなりません。

通常の借金なら自己破産すれば免除されますが、滞納税や健康保険料などの公的な負債があると自己破産しても免除してもらえません。
相続財産が債務超過状態になっているなら相続放棄をお勧めします。

他の相続人がもめている、誰かが相続財産を隠している場、遺言書が偽物ではないかといわれているなど、相続争いが発生しそうになっていてトラブルに巻き込まれたくなければ、相続放棄が有効です。

長男が事業承継するのですべての遺産(負債も含む)を後継者に集中させたいケースなどでは、他の相続人が全員相続放棄すると自然に後継者にすべての遺産が集中します。

(c)Getty Images

相続放棄を検討した場合は、弁護士への相談・依頼を勧めます。3カ月という期限が設けてあり、家庭裁判所での手続きも必要だからです。もしも弁護士に依頼した場合、どれぐらいの費用がかかるのか、「相続放棄は弁護士に相談を 手続きや気になる費用を解説 」にまとめています。ぜひ、ご覧ください。

相続放棄するには、家庭裁判所で「相続放棄の申述」をしなければなりません。
相続放棄の申述は各相続人が1人でできるので、他の相続人に連絡したり同意をとったりする必要はありません。

具体的な方法や流れは以下の通りです。

まずは被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所に「相続放棄の申述書」を提出する必要があります。こちらに書式があるので利用してみてください。

必要書類
相続放棄の申述には以下の書類が必要です。

すべてのケースで必要な書類

  • 被相続人の住民票除票または戸籍附票
  • 相続放棄する人の戸籍謄本
  • 被相続人の死亡がわかる戸籍謄本

孫やひ孫などの代襲相続人が相続放棄する場合

  • 被代襲者が死亡したことがわかる戸籍謄本

父母や祖父母などの直系尊属が相続放棄する場合、以下の書類が必要です。

  • 被相続人の子どもや代襲者で死亡している人の出生から死亡までの戸籍謄本
  • 相続人より下の代の直系尊属で死亡している人が死亡しているとわかる戸籍謄本

兄弟姉妹や甥姪が相続する場合

  • 被相続人の子どもや代襲者で死亡している人の出生から死亡までの戸籍謄本
  • 被相続人の親や祖父母の死亡の記載のある戸籍謄本
  • 甥姪が相続放棄する場合、被代襲者(兄弟姉妹)の死亡がわかる戸籍謄本

費用
800円の収入印紙。
連絡用の郵便切手も申述時に一緒に提出する必要があります。

相続放棄の申述をすると、家庭裁判所から「相続放棄の照会書」が送られてきます。そこには「いつ頃相続を知ったのか」「被相続人との生前の関係性」などの質問事項が書かれています。回答内容により、相続放棄が受理されなくなるケースもあるので慎重に対応しましょう。
「回答書」は照会書に同封されているので、必要事項を書いて家庭裁判所へ返送します。

相続放棄の回答書を提出すると家庭裁判所で審理が行われます。特に問題なければ相続放棄の申述が受理されて、家庭裁判所から相続人宛てに「相続放棄の受理書」が送られてきます。これを受け取ったら、無事に相続放棄できたということです。

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相続放棄できる期間は「自分のために相続があったことを知ってから3カ月」です。この3カ月間を「熟慮期間」といいます。
配偶者や子どもなどの第1順位の相続人の場合、基本的に「被相続人が亡くなったことを知ってから3カ月」を計算します。親や兄弟姉妹などで次順位以降の相続人の場合「先順位者が相続放棄したことを知ったとき」から3カ月をカウントします。

相続放棄は被相続人の死後にしかできません。生前の相続放棄は認められないので注意が必要です。

預貯金を払い戻して使ったり不動産を売却したりして「遺産を処分、使用」したら相続放棄はできなくなります。相続放棄したければ、遺産に手をつけてはなりません。

相続放棄は基本的に撤回できません。3カ月の熟慮期間中に「本当に相続放棄して良いのか」しっかり考えましょう。

すべての相続人が相続放棄して「相続人不存在」の状態になると、相続放棄者には相続財産の管理義務が残ります。適切に管理しないで人に迷惑をかけると被害者から損害賠償請求される可能性もあります。管理義務を免れるには家庭裁判所で「相続財産管理人」を選任しなければならないため、手間と費用がかかります。

相続人が海外居住、あるいは不動産や負債の数が多くて遺産調査に時間がかかるなどの事情があって相続放棄するか決めにくい場合には「3カ月の熟慮期間」を延ばしてもらえる可能性もあります。
相続放棄には3カ月の熟慮期間が適用されるので急ぐ必要がありますが、半面、慎重に対応することが必要です。

(記事は2020年2月1日時点の情報に基づいています)

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