養子縁組を養親の死亡後に解消しても相続できる? 死後離縁の手続きや養親の親族の扶養義務も解説
養子縁組をした養親の死亡後に離縁(死後離縁)したら、養親の遺産は相続できないのでしょうか? 実は、死後離縁しても離縁前の法律関係には影響がないため、養親の遺産は相続できます。また、死後離縁によって、養親の親族との関係で扶養義務や相続を巡る問題は生じなくなります。養親の死亡後に離縁する方法やその法的効果を弁護士が解説します。
養子縁組をした養親の死亡後に離縁(死後離縁)したら、養親の遺産は相続できないのでしょうか? 実は、死後離縁しても離縁前の法律関係には影響がないため、養親の遺産は相続できます。また、死後離縁によって、養親の親族との関係で扶養義務や相続を巡る問題は生じなくなります。養親の死亡後に離縁する方法やその法的効果を弁護士が解説します。
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離縁とは、養子縁組を解消することです。そして、養親が亡くなった後に離縁することを死後離縁(しごりえん)といいます。
当事者の一方が亡くなっても、当然のようには養子縁組は終了しません。死後離縁の手続きをすることによって初めて養子縁組は終了し、養親側の親族と養子との親族関係が消滅します。
養親が死亡した時点では養子縁組は有効に成立しており、これが死後離縁をしたとしても、さかのぼって消滅するわけではありません。そのため、死後離縁しても、養親の遺産を相続することはできます。
遺産分割協議は、相続人全員で成立させる必要があります。養親が亡くなった場合、養親に配偶者や実子がいれば、これらの人も相続人になりますので、全員で遺産分割協議をする必要があります。養子と養親の親族との関係が良好でない場合、遺産を巡って紛争になることは少なくありません。
民法877条は、下記のとおり、親族間の扶養義務について定めています。
1項 直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養する義務がある。
2項 家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。
養子縁組によって、養子は、養親及び養親の血族との間に、血族間におけるのと同一の親族関係が生じます(民法727条)。そのため、例えば、養子は、養子縁組によって、養親の親とは祖父母・孫の関係に、養親の実子とは兄弟姉妹の関係になるため、互いに扶養する義務を負います(民法877条1項)。養親が亡くなっても、当然のようには、この親族関係はなくなりません。したがって、養子は、養親が亡くなってからも、養親自身の親や実子の扶養義務を負い続けることになります。
一方で、死後離縁をすれば、養親の血族との親族関係は消滅しますので、養親の親や実子に対する扶養義務はなくなります。
上記のとおり、死後離縁によって、養親の血族との親族関係が消滅しますので、相続関係も生じなくなります。そのため、養親の血族の遺産が養子に承継されることはありませんし、逆に、養子の遺産が養親の血族に承継されることもありません。
養親の親や実子たちの親族と折り合いが悪く、養親が亡くなった以上、もう関わりを持ちたくないという方もいらっしゃいます。
その場合、死後離縁をすることで、扶養義務や相続関係がなくなりますので、関わりを持つ必要性はなくなります。例えば、扶養義務がなくなることで、将来、養親の親族が経済的に困ったときや介護が必要になったときなどに、法的に協力する義務はなくなります。また、相続関係がなくなることで、養親の親族が亡くなった際の相続トラブルに巻き込まれることもなくなります。さらに、法要への出席など、事実上の親族付き合いも気にする必要がなくなるでしょう。
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相続の相談が出来る弁護士を探す死後離縁をするには、家庭裁判所の許可が必要です。具体的には、申立人の住所地を管轄する家庭裁判所に、死後離縁許可審判申立書、養親の戸籍謄本、養子の戸籍謄本を提出し、家庭裁判所の許可を求めることになります。
その後、家庭裁判所から許可が出たら、審判書謄本と確定証明書を持って、市区町村役場に養子離縁に届け出をします。確定証明書は、審判をした家庭裁判所に交付の申請をして取得しましょう。
死後離縁の申し立てにかかる費用は、収入印紙800円分と連絡用の郵便切手分です。連絡用の郵便切手の料金は、裁判所によって異なりますので、管轄の裁判所に問い合わせて確認しましょう。
死後離縁は、申し立てが特に恣意的・濫用的でない限りは、基本的に許可されているようです。ある裁判例(福岡高等裁判所平成11年9月3日決定)では、死後離縁について定めた「民法811条6項は、養親又は養子が死亡後に他方当事者を法定血族関係で拘束することが不相当になった場合、生存当事者の利益を考慮して死後離縁を認めることとし、その際、道義に反するような生存当事者の恣意的離縁を防止するために、死後離縁を家庭裁判所の許可にかからしめたものと解するのが相当である。」と判示しています。
例えば、養親の死亡によって多額の財産を相続しておきながら、専ら養親の親族に対する扶養義務や祭祀を免れようとする場合には、死後離縁の申し立てが恣意的・濫用的であるとして、許可されない可能性があると思われます。
ただ、死後離縁の許可を申し立てるケース自体が非常に少ないため、参考となる裁判例が少なく、見通しを立てづらいのが実情です。
養親の親族と遺産分割協議をしたくない場合や養親が借金を残した場合など、養親の遺産を相続したくない場合は、相続の開始があったことを知ったときから3カ月以内に相続放棄をしましょう。
相続放棄は、亡くなった養親の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に相続放棄の申述書を提出します。一般的な必要書類は、下記のとおりです。
・被相続人の住民票除票又は戸籍附票
・申述人(放棄する方)の戸籍謄本
・被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本
養親が死亡した後、養親の親族と関わりたくなければ、早めに死後離縁の手続きをすべきです。ただ、手続きをすれば当然のように離縁ができるわけではなく、家庭裁判所の許可が必要です。手続きを進めるにあたって、疑問点が生じたときは、弁護士に相談する方が良いでしょう。
(記事は2021年5月1日時点の情報に基づいています)
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