停止条件付遺贈とは 「結婚したらあげる」などと条件を付けて財産を遺贈するには
遺言で財産を渡す際、「孫が結婚したら家をあげる」などと条件を付けることが可能です。このように、遺言で条件を定めて、その条件が成就した場合に限って財産を渡すことを「停止条件付遺贈」といいます。遺言に詳しい弁護士が、停止条件付遺贈の具体例や注意点をまとめました。
遺言で財産を渡す際、「孫が結婚したら家をあげる」などと条件を付けることが可能です。このように、遺言で条件を定めて、その条件が成就した場合に限って財産を渡すことを「停止条件付遺贈」といいます。遺言に詳しい弁護士が、停止条件付遺贈の具体例や注意点をまとめました。
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遺贈とは、遺言によって相続財産を渡すことをいいます。渡す相手(=法律上の用語で「受遺者」)は、法定相続人以外でも構いません。例えば、お世話になった知人や友人、あるいは学校や福祉施設などにも相続財産を渡すことができます。
相続財産の全部または割合的に一部を渡すことを「包括遺贈」、特定の相続財産を渡すことを「特定遺贈」といいます。
例えば、遺言書で「相続財産の全部を息子Aに相続させる」「相続財産の3分の2を孫Bに、残る3分の1を友人Cに遺贈する」など、相続財産をすべて渡すか、あるいは割合を指定して渡すような場合が包括遺贈です。他方「甲不動産を息子Aに相続させる」など、財産を特定して渡すような場合が特定遺贈です。
遺贈には、「負担」や「条件」を付すことができます。まず「負担」とは、例えば夫が「妻の介護をすること」という負担を付して子どもに遺贈をするケースです。これを負担付遺贈といいます。次に「条件」とは、例えば祖父が「孫が婚姻していること」という条件を付して孫に遺贈をするケースです。これを停止条件付遺贈といいます。
今回はこのうち、遺贈に条件を付す停止条件付遺贈について詳しく説明していきます。
遺言は、本来、遺言者が亡くなった時点で効力が発生します。これに対し、停止条件付遺贈は、遺言で定めた条件が成就した時に効力が発生します。
停止条件という言葉はあまり聞き慣れないかもしれませんが、ここでは一般的に用いられる「条件」や「前提条件」と同じ意味の言葉と考えていただいて問題ありません。以下で停止条件付遺贈についての具体例を見ていきましょう。
都内在住の70代の男性Aさんの例です。Aさんの財産としては、自宅不動産と預貯金がありました。Aさんの子どもは息子B(50代)の一人であり、Bには、息子C(Aさんとの関係では孫・20代)がいました。
Aさんは妻に先立たれ自宅で一人暮らしをしていましたが、Cの勤務先の近くに自宅があったことから、Cが度々Aさん宅を訪れ、病院への付き添いや買い物の手伝いをしてくれていました。そこでAさんは「基本的には自分の財産は息子のBが相続してくれれば良いが、Cが結婚をして家庭を持つようになれば、いろいろと世話をしてくれているCにお金を残してあげたい」と考えるようになりました。
このような場合「Cが婚姻した場合には、Cに甲銀行の預金を遺贈する」という条件付きの遺言を作成することで、Aさんの希望を実現することができます。
大学に進学した場合や競技で好成績を残した時にそのお祝いとして財産を渡すこともできます。この場合には「孫Dが大学に進学した場合には、乙銀行の預金を遺贈する」、「孫Eが〇〇大会で3位以上の成績を残した場合には、丙社の株式を遺贈する」という条件付きの遺言を作成します。
また「一番世話になった姪に甲不動産を遺贈したいが、管理の負担などを理由に姪が遺贈を拒否した場合には、懇意にしていた友人に甲不動産を遺贈する」ということもできます。この場合には「姪Aに甲不動産を遺贈する。ただし、Aが遺贈を放棄した場合は、友人Bに甲不動産を遺贈する」といった条件付きの遺言を作成します。
上記のように、遺言者に「何かしらの条件が成就した場合に限り、その人に相続財産を渡したい」という意向がある場合、停止条件付遺贈を活用することができます。
停止条件付遺贈の遺言書を書くうえで注意すべきことがいくつかありますので、ご説明します。
まず、条件の成就前や遺言者が亡くなる前に受遺者が亡くなった場合、遺言者が別段の意思表示をしていなければ、遺贈は失効してしまいます。そのため、これらの場合に備えた定めを設けておくことが大切です。
また、遺言者が亡くなる前に条件が成就した場合に備えておくことも大切です。この場合、何もせずとも遺言者が亡くなった時点で遺贈の効果は生じるため、そのままでも大きな問題は生じませんが、混乱を避けるためには遺言書の書き直しをすべきでしょう。また、生前に贈与しておくことも考えられます。ただし、贈与については、相続税に比して贈与税の税率が高いことから、税負担の大きさに注意が必要です。
遺言者が亡くなった後、条件が成就するまでの間、遺贈の目的物は原則として法律上の定めに従って、一旦、相続人が取得したことになります。後に条件が成就した時に、受遺者が目的物を取得し、相続人は目的物を失います。このように、条件が成就するかどうかが確定するまでの間の権利関係が不安定になってしまうので、その期間が長期間にならないよう工夫する必要があります。
停止条件付遺言に限られませんが、遺言を残す場合には遺留分を侵害しないような内容にすることを検討すべきです。
どうしても遺留分を侵害する内容にしたい場合には、遺留分が侵害される相続人に対してそのような内容にした理由を事前に説明したり、あるいは遺言書に書いておいたりするなどして、将来の紛争を防ぐ手立てを講じておくことが大切です。
遺言は、民法上の定められた方式に則って作成しなければ無効になってしまいますので、その点も注意が必要です。例えば、遺言者がパソコンで文字を打ち込んで遺言書を作っており、民法上有効な遺言書としては認められないケースが少なからず見られます。
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相続の相談が出来る弁護士を探すいずれにしても、停止条件付遺言を作成したいのであれば、法律上不備がないように、また将来揉め事の種にならないように、遺言の内容や書き方や保管方法も含め、一度、弁護士に相談するほうがいいでしょう。
(記事は2020年12月1日時点の情報に基づいています)
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