目次

  1. 1. 包括遺贈の受遺者は慎重に
  2. 2. 遺贈と相続放棄
  3. 3. 包括遺贈の放棄は家庭裁判所へ
  4. 4. 特定遺贈でも意思は早めに
  5. 5. 遺贈で判断に迷ったら

遺贈には2つの種類があります。包括遺贈と特定遺贈です。

包括遺贈とは、「全財産をAに」「財産の3分の1をBに」というように、財産の内容を個別に特定せずに配分割合を示して遺贈します。それに対し、特定遺贈は「現金500万円をCに」「東京都中央区××の土地をDに」といったように、財産を特定して遺贈することをいいます。

大した違いはないではないか、と思われるかもしれませんが、とんでもありません。大きな違いがあります。包括遺贈の場合、プラスの財産ばかりでなく、もしもマイナスの財産があればそれもまとめて引き受けることになります。つまり、借金の返済義務や連帯保証債務、損害賠償義務などがあった場合、遺贈を受けた側(受遺者といいます)はその支払いもしなければならないのです。特定遺贈の場合、あくまでも指定した財産だけを贈るので、マイナスの財産があっても受遺者が責任を負うことはありません。

受遺者にすれば、債務に気づかずに包括遺贈を受けたはいいけど、あとになって多額の返済を債権者から請求されでもしたら目も当てられません。財政規模が小さなNPOなどは、組織存亡の危機にもなりかねないのです。

ですから、受ける側からすれば包括遺贈には慎重にならざるをえません。遺贈の受け取りが拒まれる可能性もあります。せっかく思いがあって、社会に還元したいと思った遺産が活かされなくなる恐れがあるのです。NPOなどへ遺贈する場合は、特定遺贈にしたほうが無難だといえるでしょう。

いま、「拒まれる」と書きました。相続の場合、「相続放棄」という言葉を耳にしたことがあると思います。同じように、遺贈の場合にも放棄が制度としてあります。これも包括遺贈と特定遺贈では手続きに違いがあります。いま遺贈をお考えの方には「関係ない」と思われるかもしれません。

でも、ある日突然、だれかがあなたに遺贈しないとも限りません。それに、ここまで読まれただけで、「マイナスの財産だけを切り離す方法がありそうだ」と思い始めた方がいるかもしれません。そのことについては、放棄の説明をした後で触れたいと思います。

包括遺贈を放棄する場合、相続財産の放棄と同じように家庭裁判所に申請する必要があります。期限も相続の場合と同じく、自分に遺贈されることを知った日から3カ月以内に手続きしなければ、放棄ができなくなる可能性があります。手続きが終わると、放棄したことを証明する書類が裁判所から発行されます。万一、債権者から請求があっても、これによって「自分は無関係」と証明することができます。もちろん、プラスの財産も放棄したことになります。

特定遺贈の場合は、家庭裁判所に申請する必要はありません。遺贈を受ける気持ちがなければ、ほかの相続人や遺言執行者に遺贈を放棄すると意思表示すれば事足ります。通常は内容証明郵便を使うなどして、意思表示の証拠とすることが多いようです。また、いつまでに放棄しなければならないという期限の定めもありません。

とはいえ、ほかの相続人などから遺贈を受ける意思があるかどうかを尋ねられてはっきりしないでいると、認めたと判断されてしまうことがあり、その場合には放棄はできなくなります。常識的に早めに意思を伝えた方が無難です。

先ほど、「マイナス財産だけを切り離す」と書きました。論理的には、プラスの財産を特定遺贈して、マイナスの財産を相続財産として残し、それを相続放棄すれば万々歳となりそうです。ですが、さすがにこれは信義則に反するため、通りません。詐欺とみなされる恐れもあります。こんな方法がまかり通れば、債権者は泣くに泣けませんよね。

では、マイナスの財産が少しでもあったら遺贈はできないのかというと、それも違います。判断に迷われた場合は、弁護士ら専門家に相談してみてください。

次回は「遺贈の意思を実現するには」がテーマです。

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(記事は2020年3月1日時点の情報に基づいています)