目次

  1. 1. 抵当権つき不動産を相続したら 抵当権の内容を理解しよう
    1. 1-1. 抵当権の内容を調べる方法
  2. 2. 負債が資産を上回るなら相続放棄の検討も
    1. 2-1. アンダーローンなら売却して完済する方法も
    2. 2-2. 相続放棄も不動産売却もしない場合
    3. 2-3. 住宅ローンの場合やすでに完済している場合の注意点
  3. 3. 第三者の債務を担保している場合は?
  4. 4. まとめ 抵当権つき不動産は速やかに債務の確認を

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抵当権は、代表的な担保権の一つです。たとえば住宅購入の際、購入者は購入資金を銀行から借りることが多いと思います。当該住宅に抵当権を設定しておけば、当該住宅に住み続けながら借金を返済することができます。一方で、銀行は、購入者が住宅ローンを返済できない場合には、当該住宅を強制的に売却し、その売却代金を債務の回収に充てることができます。このように購入者にも銀行にもメリットがあり、広く利用されています。

抵当権のついている物件を相続したら、まずは抵当権の内容を調べましょう。もし借金も相続した場合には相続放棄を検討する選択肢があります。また、債務を完済したら抵当権抹消登記をしなければならず、第三者の借金を担保している場合には第三者が返済するかどうかで不動産の運命が変わってくるなど、抵当権が設定された土地や建物を相続した際に認識しておきたいポイントがいくつか存在します。

抵当権は、主に土地や建物といった不動産に設定されています。

抵当権の有無やその内容を調べるには、司法書士に頼んで、不動産登記簿等を取り寄せましょう。不動産登記簿には、「表題部」「権利部(甲区)」「権利部(乙区)」の区分で記載があります。このうち、「権利部(乙区)」には、抵当権に関する事項が記載されています。ここには、「抵当権設定」の記載の他、「権利者その他の事項」という欄があり、抵当権が、誰が誰に対し、何の債務をいくら担保するために設定されたものかといった内容を確認することができます。

ここで注意すべき点は2点あります。

一つ目は、「抵当権設定」の記載があったとしても、抹消されている可能性がある点です。「抵当権設定」に関する記載事項に下線が引かれている場合には、当該抵当権の登記は抹消されていることになります。当該記載の下方を見ると「抵当権抹消」に関する記載があるので、これらの点を確認しましょう。

二つ目は、「債権額」の記載は、抵当権設定時に、当該不動産がいくらの債務を担保しているのかを示しているにすぎないという点です。債務者はその後約定に従って返済しているはずなので、相続発生時においては、当該不動産が担保している債務額は減少している可能性が大きいと言えます。

そこで、相続発生時の債務額を把握するには、債権者である金融機関に確認する必要があります。金融機関に問い合わせる際には、借入金の残高証明書の他、預貯金の残高証明書も請求しておくと相続財産の把握に役立ちます。その際の必要書類については、各金融機関で定められているので、各金融機関に問い合わせたり、ホームページを確認したりすると良いでしょう。

なお、債権者が銀行等の金融機関ではなく全く知らない第三者の場合には、抵当権のついている債務以外の借金がないかも調べましょう。特に被相続人が事業を行っていた場合は注意が必要です。

そのうえで、多くの債務が判明した場合には、弁護士に相談したほうが良いでしょう。

相続人は、被相続人の資産だけではなく、借金も承継します。そのため、相続が発生した際、相続人は資産と負債がそれぞれいくらあるのか把握し、負債が資産を上回っている場合には相続放棄を検討する必要があります。相続放棄する場合には、その旨を家庭裁判所に申し出る必要があります。

相続放棄できる期間は、通常であれば、被相続人が亡くなってから3カ月以内と定められています。被相続人が亡くなり、さまざまな諸手続きをする必要がある中で、非常に短く限定されています。

アンダーローン、つまり抵当権を設定されている不動産の時価が住宅ローンの残高を上回る場合には、相続人としては、当該不動産を売却し、債務を弁済することも選択肢の一つになるでしょう。

そのため、相続人が相続放棄をするかの判断の際には、抵当権の担保する債務額だけではなく、当該不動産の時価も確認する必要があります。不動産の時価は、不動産仲介会社に無料で査定を依頼できます。

相続放棄も抵当権を設定された不動産の売却もしない場合には、相続人が法定相続分に従って債務を承継し、返済することになります。

ただし、権利関係を簡明にする観点から、当該不動産を相続する者が新たな抵当権設定者になり、債務を承継することを前提にした遺産分割協議を行うことが一般的には望ましいとされています。法定相続分に従わない債務の承継については、銀行等の債権者の承諾が必要なため、遺産分割協議と並行して債権者への相談も行いましょう。

住宅ローンの利用に伴い、通常は当該住宅に抵当権を設定します。同時に団体信用生命保険も活用されていることが多く、住宅ローン利用者の死亡等により、住宅ローンの債務が完済されることになります。そのため、団体信用生命保険加入の有無を確認しましょう。

また、担保する債務が完済され、抵当権が消滅しているにもかかわらず、抵当権の登記のみが残っている場合もあります。その場合には、司法書士や弁護士に相談のうえ、抵当権抹消登記手続きを速やかに行いましょう。銀行等の債権者に抹消に必要な書類を出してもらうことも必要です。

第三者である債務者のために、被相続人が自らの所有不動産に抵当権を設定することもあります。この場合、自ら債務を負っているわけではないので、第三者である債務者が完済すれば、自分で債務を弁済する必要はありません。また、当該不動産を強制的に売却されてしまうこともありません。

もっとも、当該不動産を売却する際は注意が必要です。当該不動産の価値を時価から第三者の債務額を控除されて評価されたり、そもそも買い手が見つからなかったりといった不利益を被る可能性があります。

第三者の債務額は、被相続人の遺産の評価には影響を与えません。前に述べたように、第三者である債務者のために、被相続人が自らの所有不動産に抵当権を設定している場合、債務者が完済してくれさえすれば、経済的な負担はないからです。

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相続人は、相続財産の中に抵当権を設定された不動産を発見した場合、被相続人死亡から3カ月以内という短期間のうちに、相続財産の評価を前提に、相続放棄すべきかの判断を行う必要があります。そのため、相続人は、相続財産の中に抵当権が設定された不動産を発見した場合、当該不動産の登記簿等を確認のうえ、債務完済の有無、債務残高の確認、およびその他の債務の確認を速やかに行うのが賢明と言えます。単純な相続とは思えない場合には弁護士に相談するほうが良いでしょう。

(記事は2021年3月1日時点の情報に基づいています)

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