目次

  1. 1. 農地は四種類に分けられている
  2. 2. 農業委員会への届け出は、権利を取得したことを知ってから10か月以内
  3. 3. 農地の評価方法
  4. 4. 農地を相続した時の納税猶予の特例
  5. 5. 納税猶予の特例は、3年ごとに継続の届出が必要

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農地の相続税評価方法は宅地と異なるため、注意が必要です。農地は、農地法などの規定により宅地への転用が制限されており、立地や都市計画などにより地価も大きく異なるため、四種類に区分して評価することとなっています。

1 純農地
純農地とは、原則として、農用地区域内にある農地や、市街化調整区域内にある農地のうち、第1種農地または甲種農地に該当するものなどを指します。法律上、宅地に転用することがとても難しい農地であると理解するとおおむねよいかと思います。

2 中間農地
中間農地とは、原則として、第2種農地に該当するものなどを指します。純農地に比べると、宅地に転用できる可能性がある土地です。

3 市街地周辺農地
市街地周辺農地とは、市街地農地に該当する農地を除く、第3種農地に該当するものなどを指します。

4 市街地農地
市街化農地とは、原則として、市街化区域内にある農地などを指します。農地は宅地に転用する場合、原則として許可が必要ですが、市街化区域内の農地については、農業委員会への届出で転用が可能です。

土地を相続しても、登記上の所有者は自動で変わりませんので、相続登記を行う必要があります。所有権移転登記は土地の所在地を管轄する法務局に申請します。宅地など、農地以外の場合は相続登記以外の手続きは特にありませんが、農地を相続した場合は相続登記のほかに農業委員会への届け出が必要です。

現行法においては、相続登記には特に期限はなく、罰則もありません。農業委員会への届け出は、権利を取得したことを知ったときから10か月以内にしなければならないと定められています。期限内に届出をしなかった場合は、10万円以下の過料が科される可能性がありますので、注意しましょう。

農業委員会への届け出は、農地の相続等の届出書と、相続登記済みの登記簿謄本など、相続したことの確認ができる書面を提出して行います。提出者は農地を取得した人です。相続人が複数いる場合、遺産分割協議や相続放棄によって、権利取得者が確定していれば、手続きは権利を取得した人のみで足ります。ですが、遺産分割協議が未了の場合は、相続人全員が届出を行うことが求められますので、注意しましょう。

評価方法について説明しますが、こちらも難解です。まず、純農地と中間農地の評価額は、倍率方式によって評価します。倍率方式とは、固定資産税評価額に、国税局長が定める一定の倍率を乗じて評価する方法を指します。評価額は、農地所在地の自治体から郵送される固定資産税納付書に添付されている書類で確認するか、市役所等の窓口で評価証明書を取得することで確認しましょう。

市街地周辺農地の評価額は、その農地が市街地農地であるとした場合の評価額の80%が評価額になります。市街地農地の評価額は、宅地比準方式または倍率方式により評価します。宅地比準方式とは、その農地が宅地であるとした場合の1平方メートル当たりの評価額から、農地を宅地に転用するために必要であると認められる1平方メートル当たりの造成費を控除した金額に、地積を乗じて計算した金額により評価する方法です。

計算を間違えると思わぬペナルティを受ける可能性もありますので、手続きの必要が生じた場合は、専門家に相談することが無難だと思います。

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農地を相続した場合については、納税猶予の特例が設けられています。制度の概要としては、農業を営んでいた被相続人などから条件に合う相続人が一定の農地を相続や遺贈によって取得し、引き続き農業を営む場合などについて、一定の要件に従って、相続税の納付が猶予または免除されます。

この制度の適用を受けられる被相続人としては、死亡の日まで農業を営んでいた人などが該当します。相続人は、被相続人の相続人で、相続税の申告期限までに農業経営を開始し、その後も引き続き農業経営を行うと認められる人などが該当します。また、農地は、期限内に提出された相続税の申告書に特例の適用を受ける旨が記載されたものであり、かつ、被相続人が農業の用に供していた農地等で相続税の申告期限までに遺産分割されたものである必要があります。

特例の適用を受けるための手続きとしては、まず相続税の申告が必要です。申告書には、特例の適用を受けるために、所定の事項を記載したうえで期限内に提出するとともに、納税猶予税額および利子税の額に見合う担保を提供することが求められます。また、申告書には相続税の納税猶予に関する適格者証明書や、担保関係書類など、一定の書類を添付することが必要です。

納税猶予の特例は、一度届け出れば永続するわけではなく、3年ごとに継続の届出を行わなければなりません。具体的には、納税猶予期間中は相続税の申告期限から3年目ごとに、引き続いて納税猶予の特例の適用を受ける旨および対象の農地についての農業経営に関する事項などを記載した届出書を提出し、特例の適用を継続する手続きを行う必要があります。また、要件を満たさなくなった場合は、猶予された税額および税額にかかる利子税を納付しなければならなくなりますので、注意が必要です。

このように、農地の相続に関する手続きは、専門的でとても難しいため、専門家が関与せずに行うことはリスクが高いです。相続税に関しては税理士、相続登記に関しては司法書士、農業委員会への届出に関する手続きは行政書士の業務範囲になりますので、状況に応じて相談を検討しましょう。

(記事は2021年3月1日現在の情報に基づきます)

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