目次

  1. 1. 遺言の内容は代襲相続されない
    1. 1-1. 遺言で指定された相続人が先に死亡して代襲相続が問題になる典型的なケース
    2. 1-2. 代襲相続とは
    3. 1-3. 遺言と代襲相続
  2. 2. 相続人の子どもに代襲相続させたい場合
    1. 2-1. 遺言で対応する方法
    2. 2-2. 遺言以外で対応する方法
  3. 3. 代襲相続を防ぐ方法
    1. 3-1. 「代襲相続させない」遺言は有効
    2. 3-2. 兄弟姉妹や甥姪には遺留分もない
  4. 4. 代襲相続と絡んだ遺言を残したいなら自己判断は禁物
  5. 5. まとめ|手続きが不安なら弁護士に相談を

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「遺言で指定された相続人が先に死亡して『代襲相続』が問題になった事案」といわれても、イメージしにくいかもしれません。具体例で理解しましょう。

父親(A)には長男(X)と長女(Y)がいます。
長女Yは結婚して家を出ているので、父親Aは「息子に家を継いでほしい」と思い、長男Xへ自宅を相続させる遺言をしました。しかし長男Xが父親Aより先に死亡してしまいました。
この場合、「遺言書によってXの子どもであるCが相続できるのか(代襲相続)、それとも遺言書は無効になって長女Yが相続するのか」というのが今回取り上げる問題です。

代襲相続とは、相続人が被相続人より先に死亡した場合、相続人の子どもが代わって相続することです。例えば長男が父親より先に死亡した場合、父親の遺産は長男の子ども(孫)が代襲相続します。
代襲相続が法定相続のケースで適用されることは、法律上明記されています。法定相続とは、遺言による指定がないときに民法の原則に従って行われる相続を意味します。

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法定相続のケースではなく「遺言」の場合にも、上記の代襲相続が発生するのかが今回の課題です。

最高裁判所は、上記で紹介したのと同様のケースにおいて「遺言には代襲相続が適用されない」と判断しました。つまり冒頭のケースでは「長男Xの子どもであるCは代襲相続できない、そうではなく長女Yが相続する」という結論になります(最判平成23年2月22日)。

最高裁が遺言による代襲相続を認めなかった理由は「遺言は死亡時に効力が発生するので、死亡時に受取人が存在している必要がある」からです。死亡時に既に指定された相続人が存在しない以上、遺言の効果は失われるという考えにもとづきます。

このように、せっかく遺言書を遺しても、子どもが先に死亡してしまったら孫へ相続させることはできないので、注意しましょう。

相続人が先に亡くなる場合に備え、代襲相続を見越した遺言書を作成するのは簡単ではありません。もしも、こういったお悩みがあれば、法律の専門家である弁護士に相談してみてください。

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相続人の万一に備えて、相続人の子ども(孫など)に代襲相続させたい場合、以下のように対応しましょう。

長男に相続させたいけれど、長男の死期が迫っていて「もしものとき」には孫に相続させたい場合、以下のような遺言方法がお勧めです。

・「予備的・補充的」な遺言
基本的には長男に相続させるけれど、長男に万一のことがあれば孫に相続させる、という予備的な遺言方法です。
「不動産は長男に相続させる。ただし死亡時に長男が亡くなっていた場合、長男の子である孫に相続させる」
このように表記しておけば良いでしょう。

・孫へ直接財産を遺贈する
長男の死期が迫っているケースでは、遺言によって孫へ直接財産を相続させるのも1つの対応策です。

遺言以外で対応する方法もあります。

・生前贈与
まずは「生前贈与」を検討しましょう。
長男の死期が迫っているなら、直接孫へ不動産等を生前贈与すれば、長男を飛び越して孫へ財産を受け渡せます。

・家族信託
家族信託とは、信頼できる家族に財産を預けて自分や第三者のために管理してもらう契約です。管理が終了した後の最終的な財産帰属先も指定できます。

家族信託の利用例をみてみましょう。
例えば孫に不動産を信託して、当初は自分や長男のために不動産を管理させます。そして自分や長男が死亡したときの「最終的な財産帰属先」を孫に指定しておけば、目的の財産を最終的に孫に受け継がせることができます。

おひとり様や夫婦だけで子どもがいない人の場合、「兄弟姉妹の子ども(甥姪)には相続させたくない」と思うケースが少なくありません。

法定相続では、兄弟姉妹が自分より先に死亡していると、その子どもである甥姪が代襲相続してしまいます。しかし生前ほとんど付き合いのない甥姪に遺産が行き渡るのは不本意でしょう。そういった場合にも「遺言」で対応可能です。

甥姪に相続させたくない場合、遺言によって「甥姪には代襲相続させない」と記してください。そうすれば自分より先に兄弟姉妹が死亡しても、甥姪に財産が引き継がれることはありません。

一定範囲の法定相続人には「遺留分」が認められます。遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に認められる最低限の遺産取得割合で、遺言によっても奪えません。
相続人の遺留分を侵害すると、死後に権利者が侵害者へ「遺留分侵害額請求」という金銭請求をしてトラブルになるリスクが高くなります。

実は兄弟姉妹や甥姪には遺留分が認められません。遺言によって「甥姪に相続させない」と明記したら、甥姪は遺留分侵害額請求できません。よって遺留分トラブルが起こる心配は不要です。

付き合いのない甥や姪に相続させたくなければ、遺言で「甥姪には相続させない」と記しておいてください。

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専門家に相談を検討するのは、次のような場合を想定しておくといいでしょう。

  • 遺言により相続人として指定した長男が自分より先に死亡するかもしれない
  • 甥姪に代襲相続させない遺言を遺したい

このように、代襲相続の可能性を含めた遺言内容は複雑になりがちです。状況によってもとるべき対処方法が異なってくるでしょう。素人判断で誤った対応をすると、目的を達成できなくなってしまうおそれが高まります。
確実に希望を実現するには、弁護士などの法律の専門家によるアドバイスが不可欠となるでしょう。

遺言書を無効にしないためには、公正証書遺言の利用が推奨されます。ただ自分で手続きするのが面倒、あるいはやり方がわからないという人も多いと思います。

代襲相続が絡んだ遺言を遺したい場合には、弁護士ら専門家へ相談しながら進めるのがベストな対処方法です。まずは一度、法律事務所などへ問合せをしてみてください。

(記事は2020年12月1日時点の情報に基づいています)

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