目次

  1. 1. 遺言執行者とは
    1. 1-1. 遺言の内容を実現してくれる人物
    2. 1-2. 選任は遺言書の中でできる
    3. 1-3. 相続権をなくしたいときなどには選任が必要
    4. 1-4. 遺言執行者は誰でもなることができる
  2. 2. 遺言執行を弁護士に依頼するメリット
    1. 2-1. 手続きスムーズ、相続人間の対立・紛争を避ける
    2. 2-2. 信託銀行よりも費用が安いことが多い
  3. 3. 遺言執行の流れ
    1. 3-1. 就任通知書及び遺言書の写しを送付
    2. 3-2. 相続財産目録を作成する
    3. 3-3. 遺産の分配を行う
    4. 3-4. その他
  4. 4. 遺言執行者の費用
  5. 5. まとめ まずは弁護士に相談を

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遺言の内容を実現することを、遺言の執行といいます。遺言は遺言者が亡くなった時点で効力が発生するため、遺言者自身が遺言の執行をすることはできません。そのため、基本的には、遺言者の相続人が遺言の執行をします。

もっとも、相続人が多いと、全員で協力して手続きをすることは、なかなか大変です。また、不動産ごとに登記申請や引き渡しをしたり、預貯金ごとに各金融機関での払い戻しの手続きや分配をしたりと、専門家ではない人が遺言の執行をするのは、複雑で負担が大きいことも少なくありません。

そのようなとき、遺言の執行を任せることができる特定の人物を選任しておくことで、手続きをスムーズに進めることができます。その人物を遺言執行者(いごんしっこうしゃ)といいます。

遺言執行者は、遺言書の中で指定することができます。また、遺言執行者を決めてくれる人物を指定することもでき、この場合、その人物が、別の誰かを遺言執行者に指定することになります。

なお、遺言書の中で遺言執行者が指定されていない場合でも、利害関係人が家庭裁判所に請求することで遺言執行者を選任してもらうことも可能です。

便宜上、遺言執行者の選任をすることが望ましいですが、常に必要というわけではありません。

ただし、遺言で認知や推定相続人の廃除(または取消)をする場合には、必要です。認知はともかく、「推定相続人の廃除」という言葉は、聞きなれない方も多いでしょう。被相続人が、遺留分を有する推定相続人から虐待や侮辱等を受けたことを理由に、その人の相続権をなくす制度のことで、この場合、遺言執行者の指定をしておく必要があります。

遺言執行者には、民法で定められた欠格事由(未成年者や破産者)に該当しない限り、誰でもなることができます。そのため、相続人の一人を遺言執行者に指定することも少なくありません。遺言の内容が単純であったり、相続人間での紛争が想定できなかったりする場合には、相続人を遺言執行者にしても、特に問題はないでしょう。

一方、相続財産が多数に及んだり、相続方法が指定されていたり、あるいは第三者への遺贈があったりするなど、遺言の内容が複雑であると、遺言執行者には相応の負担がかかります。このような場合、弁護士を遺言執行者に指定しておけば、相続人に負担を掛けずに済みます。加えて、弁護士であれば、その知識や経験に基づいて、スムーズに手続きを進められます。

また、相続人の一人を遺言執行者に選任したときに、他の相続人から、公正にやってくれているのか、財産を隠していないか、あるいは手続きが遅いのではないかといった不安や不満が生じ、相続人間の対立や紛争を招くことも少なくありません。実際、ご相談も多く、代理人として介入するケースもあります。

そこで、相続人間での対立・紛争が想定される場合には、あらかじめ、中立的な立場である弁護士を遺言執行者に指定しておくことで、これを避けることができます。

弁護士以外には、信託銀行に遺言執行(遺言信託)をお願いすることも可能です。実際、安心感などから信託銀行に依頼される方もいらっしゃいます。ただ、弁護士に依頼する方が費用は安く済むことが多いです。

信託銀行では、基本的に最低報酬額が定められているので、特に、相続財産が3000万円を下回るような場合には、弁護士と比較して、多くの費用がかかります。

サービス内容が必ずしも同じではないので、一概にどちらが良いとは言えませんが、費用面を重視するのであれば、弁護士への依頼がおすすめです。いずれにしても、事前にホームページを調べたり、あるいは相談したりして、費用やサービス内容の比較をしておくと良いでしょう。

遺言執行者は、遺言執行者に就任することを承諾したら、直ちに任務を行わなければなりません。そして、任務を開始する際には、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければなりません。そこで、まずは、相続人に対し、就任通知書及び遺言書の写しを併せて送付することが一般的です。

次に、遺言執行者は、相続財産の目録を作成し、これを相続人に交付しなければなりません。目録の作成にあたっては、不動産の全部事項証明書や預貯金の残高証明書などの各資料を集めることになります。

そして、遺言書の内容に沿って、実際に遺産を分配します。具体的には、不動産の所有権移転登記の申請や預貯金の払い戻しなどを行います。

認知や相続人の廃除が内容となっていれば、遺言執行者が、役所に認知の届出をしたり、家庭裁判所に廃除の申し立てをしたりします。

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遺言執行者の費用は、遺言書で定めることができます。遺言書で定めなかった場合には、遺言執行者は報酬の付与を家庭裁判所に請求することができます。いずれにしても、この費用は、相続財産から支払われます。

弁護士に遺言執行者への就任を依頼する場合、私の事務所もそうですが、旧日本弁護士連合会報酬等基準に従っている法律事務所が多い印象です。同基準に基づく費用は、下記のとおりです。相続財産の金額によって、費用が変わります。

相続財産の総額が
300万円以下の場合・・・30万円
300万円を超え3000万円以下の場合・・・2%+24万円
3000万円を超え3億円以下の場合・・・1%+54万円
3億円を超える場合・・・0.5%+204万円

例えば、相続財産が2000万円の場合は64万円(2000万円×2%+24万円)です。このように、少なくとも30万円以上の費用がかかることは覚悟しておいた方が良いでしょう。遺言書の作成や保管と併せて依頼する場合、上記の費用から、多少減額されることもあります。

相続人の一人を遺言執行者としたために、相続人間の対立や紛争を招き、かえって多くの費用がかかってしまうことがあります。また、相続人以外の第三者に不動産を遺贈するなど、相続人と受遺者の利害が対立する内容となっている場合、相続人が手続きに協力してくれないこともあります。このように、遺言執行者を選任しておけばトラブルを避けられたと思われるケースも少なくありません。

そこで、遺言書を作成するにあたっては、その内容をスムーズに実現するため、利害関係者である相続人ではなく、かつ相続に関する法律知識や経験がある弁護士を遺言執行者に選任することも一つの選択肢として検討しておくと良いでしょう。
遺言書の作成を思い立ったら、まずは一度、弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

(記事は2021年1月1日時点の情報に基づいています)

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