目次

  1. 1. 親に自筆証書遺言を書いてもらう際の注意点
    1. 1-1. 遺言書作成セミナーに一緒に参加することを勧める
    2. 1-2. 遠回しに遺言書に関心を持ってもらうよう誘導する
    3. 1-3. 単刀直入に気持ちを伝える
    4. 1-4. 自筆証書遺言の書き方のルールを知ってもらう
  2. 2. 自筆証書遺言は第三者に保管してもらうのが安全
    1. 2-1. 遺言書保管制度を利用する際の手続き
  3. 3. 検討しておきたい遺言書預かりサービス
    1. 3-1. 弁護士や司法書士などの専門家が提供する遺言書預かりサービス
    2. 3-2. 金融機関が提供する遺言信託
    3. 3-3. 民間会社が提供するオンライン遺言サービス
  4. 4. まとめ:家族の状況などを鑑みて、適切なサービスを利用しよう

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将来の「争族」を防ぐためには、親に遺言書を書いてもらうことが有効です。しかし、遺言は「死」を連想させるため、なかなか話を切り出しづらいものです。切り出し方を間違えると、本人の機嫌を損ねてしまうなど、かえって話をこじらせてしまうことにもなりかねません。

遺言書を書いてもらうにあたっては、本人の納得感を得ることが大切です。遺言に限りませんが、お子さんなどのご家族が生前対策を主導している場合、ご本人が途中で躊躇してしまい、断念せざるを得ないことがあります。

話の切り出し方は、親との関係性や親の性格などを考慮して、個別的に考えるべきものでしょう。たとえば、次の四つのような切り出し方が考えられます。

遺言書を作成するメリットや方法がわからないとなかなかモチベーションが上がりません。そこで、利点や書き方を知ってもらうために、遺言書作成セミナーへの参加を勧めることが有効です。その際は、お子さんが予約を取るなどして主導しつつ、一緒にセミナーに参加することがおすすめです。

私が所属する事務所でも遺言や相続に関するセミナーを定期的に開催しており、親子で参加される方が多いです。一緒に参加することで、セミナーの内容に関する会話をきっかけに、話を進めることができるでしょう。

友人や会社の同僚などに相続が発生した際やテレビ番組で遺言や相続を特集している際などに、徐々に遺言を話題に出していく。そうすることで、親の遺言書に対する関心を高め、主体的に動いてもらうという方法です。一般的には、このような方法をとる方が多いのではないでしょうか。

ただ、遠回しに進めていた結果、結局、遺言書を書いてもらえないまま親が亡くなってしまったというケースも少なくありません。親の気持ちを尊重して、親に主体的に動いてもらうことが望ましいものの、次に説明するように単刀直入に気持ちを伝えることが必要な場合もあるでしょう。

単刀直入に「遺言書を書いてほしい!」と伝える方も少なくありません。「死」を連想させる話を持ち出すことで親の気を悪くしてしまうこともあるでしょう。そのため、伝え方には細心の注意を要します。

もっとも、将来のことを真剣に心配している気持ちが親に伝われば、むげに扱われることもないはずです。何を心配しているのかを具体的に説明することで気持ちもより伝わりやすいでしょう。

せっかく親に遺言書を書いてもらっても、法的に無効となってはトラブルの回避につながりません。自筆証書遺言は、気軽に作成できる反面、法律で定められた形式に違反しているために無効となるケースが少なくありません。

そのため、市販の遺言書キットを活用するなどして親に書き方のルールを知ってもらいましょう。その結果、遺言書を書く行為に前向きになってくれるかもしれません。

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かつて自筆証書遺言は自宅で保管する方が大半でした。ただし、その場合、遺言書の紛失、相続人等による遺言書の隠匿や変造、破棄のおそれや遺言書の存在に気付いてもらえないおそれなどの問題がありました。

しかし、令和2年7月に始まった遺言書保管制度を利用することで、紛失や偽造といった問題を回避できるようになりました。これは、法務局の遺言書保管所が遺言書の原本を保管してくれる制度です。この制度によって、遺言書の紛失や隠匿等を防止できるのみならず、遺言書の存在の把握も容易になるため、遺言者の最終意思の実現や相続手続きの円滑化が図られました。

遺言者の手続きや相続人等の手続きを以下で解説します。なお、詳細は、法務省のホームページをご確認ください。

◎遺言者の手続きと注意点

遺言書保管制度を利用するには、まず申請書の作成が必要です。法務局のホームページでダウンロードすることが可能ですので、あらかじめ記入しておきましょう。そして、予約のうえ、申請書や遺言書などの必要書類を持って、管轄の遺言書保管所に保管の申請をします。手数料が1通3900円かかります。

注意点としては、余白の設定など、遺言書の様式が定められていることが挙げられます。様式に従って遺言書を作成しないと、受け付けてもらえません。あらかじめ法務局のホームページで様式を確認しておきましょう。

◎相続人等の手続き

予約のうえ、法務局の遺言書保管所で遺言書保管事実証明書の交付請求をします。この証明書によって、自分を相続人や受遺者とする遺言書が保管されているか否かの確認ができます。全国のどの遺言書保管所でも請求でき、手数料は1通800円かかります。

そして、遺言書があった場合は、別途、遺言書情報証明書の交付請求をして、遺言書の内容を確認します。手数料は1通1400円です。請求する証明書の種類によって必要書類が異なりますので注意しましょう。

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遺言書は弁護士等の専門家や金融機関、民間会社などで預かってもらうことが可能です。それぞれのメリットやデメリットを解説します。

弁護士や司法書士は守秘義務を負っていますので、遺言の内容はもちろん、遺言の有無が第三者に漏れることはありません。また、費用についても、金融機関と比較すると安価であることが多いようです。そのため、遺言書作成を弁護士などの専門家に依頼した場合には、そのまま遺言書保管を依頼するのも良いでしょう。

ただ、すべての専門家が遺言書預かりサービスを提供しているわけではないので、必ずしも依頼できるとは限らないことがデメリットです。また、個人事務所の場合、病気などで廃業してしまう可能性がありますので、金融機関に比べると安心感は劣ります。

遺言信託とは、遺言書の作成から保管、遺言執行までをサポートをするサービスです。金融機関が提供するサービスですので、さまざまな場所で利用することができ、安心感が得られることがメリットです。

デメリットは、一般的に費用が高いことです。あらかじめホームページの料金案内を確認するなどして、専門家や民間会社が提供するサービスにかかる費用と比較検討しておくと良いでしょう。

上記と毛色が異なりますが、近年、オンライン遺言サービスが話題です。たとえば、昨年リリースされた「タイムカプセル」というLINEで作成できる遺言サービス。これはコミュニケーションアプリのLINEで聞かれた質問に答えていくだけで手軽に遺言を残すことができるというものです。LINEのトーク感覚で手軽に作成できることなどがメリットでしょう。

ただ、ここでいう「遺言」とは法的に効力を持つものに限らず、「自身の最期に向けての意思を残すこと」を指し、このサービスを利用するだけでは、法的に有効な遺言にはなりません。そのため、オンライン遺言サービスを利用する場合、「争族」を避ける意味でも別途遺言書を作成することが必要です。

近年は、遺言書保管制度やオンライン遺言サービスなど、遺言に関する制度やサービスが続々と増えてきており、多様な選択肢が存在します。

それぞれの家族のあり方に合った遺言の方式や保管の方法があります。遺言書作成を思い立ったら、弁護士等の専門家に相談して意見を聞きつつ、いろいろと比較検討してみることがおすすめです。

(記事は2021年2月1日時点の情報に基づいています)

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