目次

  1. 1. 遺言で不動産の売却を指示できる「清算型遺贈」
    1. 1-1. 遺産の処分代金を分配する清算型遺贈
  2. 2. 遺言執行者はどうやって選んだら良い?
    1. 2-1. 遺言執行者は誰でもなることができる
  3. 3. 遺言執行の流れを把握しておこう
    1. 3-1. 就任通知書及び遺言書の写しを送付
    2. 3-2. 相続財産目録を作成する
    3. 3-3. 遺産の分配を行う
    4. 3-4. 遺言執行者の費用を決める
  4. 4. まとめ|相続や不動産に精通した専門家に依頼を

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不動産をそのまま相続させるのではなく、それを現金に変えたうえで相続させたほうが良いケースもあります。たとえば、自宅やアパート、駐車場という複数の不動産を保有しており、これらをお子さん3人に相続させたいケース。この場合、それぞれの不動産の価値が異なりますから、単に、長男に自宅、次男にアパート、三男に駐車場を、という分け方では、相続人間の平等が図れません。

だからといって、各不動産をお子さん3人の共有にすると、各不動産の管理や処分の方法を巡って争いが起こりやすいので、あまり好ましい方法とは言えません。

そこで、このような場合に不動産を現金化したうえで相続させる内容の遺言を作成しておくことで、相続人間の平等を図ることが可能になります。これを「清算型遺贈」といいます。

清算型遺贈とは遺言による財産処分による「遺贈」の一つで、遺産を処分したうえで、その処分代金を受遺者に分配する形の遺贈のことを指します。たとえば、遺言書で「甲不動産を売却し、その売却代金を甲と乙に各2分の1ずつ遺贈する」と定める場合です。このような遺贈も有効です。

ただし、清算型遺贈を行う場合、遺言執行者を指定しておくべきです。なぜなら、遺言の内容に不満があるなど、遺言の執行に非協力的な相続人が出てくる可能性があるからです。遺言執行者がいない場合、不動産の売却などは相続人全員で行う必要があるので、非協力的な相続人が出てくると支障をきたします。遺言執行者は単独で遺言を執行できますから、相続人の協力・非協力的を気にする必要がありません。

遺言執行者は、遺言書の中で指定することができます。また、遺言執行者を決めてくれる人物を指定することもでき、この場合、その人物が、別の誰かを遺言執行者に指定することになります。

遺言執行者には、未成年者や破産者など民法で定められた欠格事由に該当しない限り、誰でもなることができます。そのため、相続人の一人を遺言執行者に指定することも少なくありません。遺言の内容が単純であったり、相続人間の紛争が想定できなかったりする場合には、相続人を遺言執行者にしても特に問題はないでしょう。

もっとも、清算型遺贈の場合、不動産の売却などの手間を要しますので、遺言執行者には相応の負担がかかります。また、相続人の一人を遺言執行者に選任したときに、他の相続人から、公正にやってくれているのか、あるいは手続きが遅いのではないかといった不安や不満が生じます。相続人間の対立や紛争を招くことも少なくありません。

そのため、費用はかかってしまいますが、相続や不動産に精通した弁護士や司法書士、税理士などの専門家に遺言執行者を依頼するほうが良いでしょう。なお、遺言執行者としての費用は、遺言者が亡くなった後に相続財産から支払われますので、遺言者自身が支出する必要はありません。

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遺言執行者を指定し、遺言の内容を実現する遺言の執行を問題なく進めてもらうためにも、主な流れを把握しておくに越したことはありません。遺言執行者の任務は多岐にわたります。信頼できる人間に託すと安心感が増すはずです。

遺言執行者は、遺言執行者に就任することを承諾したら、ただちに任務を行わなければなりません。そして、任務を開始する際には、滞りなく遺言の内容を相続人に通知しなければなりません。そこで、まずは各相続人に対して就任通知書及び遺言書の写しを送付することが一般的です。

次に、遺言執行者は相続財産の目録を作成し、これを相続人に交付しなければなりません。財産目録の作成にあたっては、不動産の全部事項証明書などの資料を集めることになります。

そして、遺言書の内容に沿って、実際に遺産を分配します。清算型遺贈の場合、通常、不動産の売却など財産の換価処分を行います。それから、その処分代金から譲渡所得税や登記費用、仲介手数料などを差し引いたうえで、その残額を相続人や受遺者に分配します。

遺言執行者の費用は、遺言書で定めることができます。遺言書で定めなかった場合には、遺言執行者は報酬の付与を家庭裁判所に請求することができます。いずれにしても、この費用は相続財産から支払われます。

不動産の売却には登記費用や仲介手数料等の費用が生じます。一般的に、これらの遺言執行に伴う費用は、売却代金から支出することが多いです。また、譲渡所得税の課税に注意が必要です。譲渡所得税とは、土地や建物などの資産を譲渡することによって生じる所得に対する税金のことです。不動産の売却にあたっては、損をすることがないように、事前に税理士に相談することが大切です。

遺言執行者による売却の内容に不満がある場合もあるでしょう。民法1012条1項に記されているとおり、遺言執行者は遺言の執行をするため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利や義務を有しています。そのため、売却代金に不満があるなど、相続人や受遺者が不動産の売却を進めることに反対したとしても、遺言の執行の妨げにはなりません。

もっとも、遺言執行者としても、トラブルを避けるため、相続人や受遺者の意見にも配慮してくれる場合もあります。遺言執行者に意見を伝えることには問題ありません。

清算型遺贈を行う場合は、遺言執行者の指定は不可欠です。また、財産の換価処分が絡むために複雑であり、紛争を招かないように慎重な検討を要します。そのため、清算型遺贈を希望する場合は、相続に精通した弁護士や司法書士、税理士等の専門家に、遺言書の作成と併せて、遺言執行者の就任を依頼することをおすすめします。

(記事は2021年2月1日時点の情報に基づいています)

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