家族信託終了後の取りまとめをする「清算受託者」とは 業務内容を解説
家族信託では、一般的には親を看取ったことにより契約が終了します。信託終了後は「清算受託者」が債務及び諸費用の支払いや未収債権の取りまとめをします。いわば、遺言における「遺言執行者」の業務に似ています。宮田浩志司法書士が詳しく解説します。
家族信託では、一般的には親を看取ったことにより契約が終了します。信託終了後は「清算受託者」が債務及び諸費用の支払いや未収債権の取りまとめをします。いわば、遺言における「遺言執行者」の業務に似ています。宮田浩志司法書士が詳しく解説します。
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契約書で定めた家族信託の契約が終了する時期を迎えた場合、これまで財産管理を担っていた「受託者」は、信託終了後の清算事務を行う業務に変わることになります。
このことは、一般的に株式会社を閉じる際に、株主総会の解散決議によりそれまでの取締役が自動的に退任し、改めて会社の清算事務を行う「清算人」が選任される仕組みに似ています。
清算受託者の主な職務は、信託業務の清算(プラスの資産のとりまとめ、信託財産に関する債務及び諸費用の支払いなど)とその後に残ったプラスの信託財産(これを「残余財産」といいいます。)を信託契約書の中で財産の承継者として指定された「帰属権利者」に引渡すという2つになります。
業務内容としては、通常の相続発生時における遺産に関して遺言内容を実現する「遺言執行者」の業務と非常に近いイメージです。
では、「清算受託者」は誰がなるのかというと、実務上は、信託終了時点の受託者がそのまま清算受託者となるケースが多いです。(その後、当該清算受託者が残余財産の帰属権利者先としてそのまま自分で資産を引き継ぐことも多いです。)
信託終了時の受託者と残余財産の帰属権利者が異なる場合を考えてみます。
たとえば、複数の家族・親族に残余財産を分配する場合や行政や公的団体に遺贈寄付するような場合、その実行性を高めて家族・親族への負担も軽減するために、あえて司法書士・行政書士・弁護士のような法律専門職が客観的な第三者として清算受託者に就任して、信託業務の清算を行うこともあります。
清算受託者は、財産を預かって管理処分するのが職務ではなく、清算活動が主な職務ですので、信託業法の適用もなく専門家が清算受託者となり報酬を受領することも可能だと考えます。
なお、清算受託者は、信託財産に関する債務及び諸費用の支払いのすべてを先に行い、その後の残余財産を「帰属権利者」に引き渡す義務を負います。したがって、債務の弁済が終わっていない段階で、信託金銭を分配したり、信託不動産について帰属権利者名義にする登記手続きをしたりすることはできませんので、ご注意ください。
前回は、「受益者代理人」の制度概要について解説しました。
引き続きこの連載では、家族信託に必要な知識やトラブル予防策を読み解いていきます。
(記事は2020年7月1日時点の情報に基づいています)
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