今日から始める終活!年賀状より大事なのは…PCスマホのパスワード共有
相続での家族間のトラブルを無くすため「終活弁護士」として活動する伊勢田篤史弁護士。目の前のPCやスマホからでも始められる、すぐに始められる相続の一歩目をわかりやすく解説します。
相続での家族間のトラブルを無くすため「終活弁護士」として活動する伊勢田篤史弁護士。目の前のPCやスマホからでも始められる、すぐに始められる相続の一歩目をわかりやすく解説します。
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こんにちは、終活弁護士の伊勢田篤史です。
この度、相続会議にて、「終活弁護士が教える相続対策」という連載コーナーを担当することになりました。
連載では、終活の中でも、特に「残された家族を揉めさせないための」相続対策についてお話ししたいと考えています。「相続対策」と聞くと、なにやら小難しそう、面倒くさそう等という印象を持たれる方もいらっしゃるかと思います。ですので、本コーナーでは専門用語をなるべく使用せず、かつ今日からできる具体的な対策についてお話できればと思います。どうぞ、よろしくお願い致します。
相続対策と聞くと、何から手を付けていいのかわからない!という方も多くいらっしゃると思います。
確かに、巷では、エンディングノートを書きましょう、遺言書を書きましょう、等ということをよく耳にするかと思います。しかし、エンディングノートを書くといっても、非常にたくさんの項目を書かなければならず、げんなりしてしまった方も多いのではないでしょうか。また、遺言書についても、思い立ってすぐに書けるものではないですよね。
そこで、まず何から始めればよいのか分からない!という方のために、とっておきの第一歩をお伝えしたいと思います。
それは・・・、
「普段使っている、パソコンやスマホ(タブレット)のログインパスワード(パスコード)を共有する」です。
こちらの連載コーナーをお読みの方は、パソコンやスマホ、タブレットを利用されている方が多いでしょう。普段お使いのパソコン、スマホ、タブレットについて、パスワードロックをかけていらっしゃる方は、意外と多いのではないでしょうか。このパスワードが「ログインパスワード」となります。
ご自身のパソコンやスマホ等にパスワードロックを掛けている方の中には、家族とそのパスワードを共有している方もいらっしゃると思いますが、自分だけがパスワードを知っているという方も多いのではないでしょうか。
現代社会においては、パソコンやスマホなしでは仕事や生活ができないというくらい、デジタル機器に依存しています。裏を返せば、個人の生活に必要な情報や万が一のときに必要となる情報は、すべてパソコンやスマホの中に入っていると言っても過言ではありません。
もしも、ご自身に万が一のことがあった場合、ご自身のパソコンやスマホのパスワードを家族が知らなかったら・・・どんなことが起こると思いますか。
まず、葬儀の遺影となる写真をパソコンやスマホから取りだせないというトラブルが考えられます。最近では、現像して紙に印刷しなくても、スマホの画面で簡単に写真を確認できるようになりました。つまり、写真をデータで管理できるようになりました。これは、写真データにアクセスできない限りは、その写真を遺影として使えないということを意味します。パソコンやスマホの中に入っている写真データは、パソコン・スマホのパスワードが分からなければ取りだすことはできません。実際に、パソコンやスマホのパスワードが分からず、葬儀の遺影の写真に困ったという事例は多くあるようです。
次に、友人の連絡先が分からず、葬儀に呼ぶことができないというトラブルが考えられます。一昔前であれば、各家庭に手書きの電話帳がありました。しかし、現代では、それらはすべてスマホの電話帳にとって代わりました。これは、スマホ内の電話帳にアクセスできなければ、友人などの連絡先が分からないということにつながります。
実際に、故人の友人への連絡に苦労したという話や連絡がそもそもつかなかったという話はよく耳にします。
他にも、インターネット金融機関(銀行や証券等)等、パソコンやスマホには亡くなった故人に関する情報がたくさん詰まっています。
それらを適時に取りだすことができなければ・・・相続の話以前に、遺族をトラブルに巻き込んでしまいます。
最後に、パソコンやスマホのログインパスワードをどうやって共有するか、ということについてお話したいと思います。
万が一の時、家族がパスワードを知ることができる手段について生前から話をしておくとよいでしょう。
一方、生きている間は知られたくない!という方もいらっしゃるかもしれません。
エンディングノートを書いている方は、エンディングノートに書いておく、という方法も考えられます。「万が一のことがあったら見てね」と伝えておくとよいでしょう。
「そんなことを言ったら、逆に怪しまれて見られてしまう」という方には、白地のカードサイズの紙(普通の紙きれでも構いません)を用意し、パスワードを記入した上で、財布の中に入れておくと良いでしょう。
相続というのは、ただ「財産を分けるだけの手続」ではありません。相続に至るまでには、故人のパソコンやスマホのチェックをはじめ、様々なプロセスを経ることとなります。
しかし、故人のパソコンやスマホについては、ログインパスワードが分からなければ、出だしからつまずきかねません。
パソコンやスマホのパスワードの共有自体は、1分もあれば完了します。
このコーナーをきっかけに、是非相続対策の第一歩を踏み出していただければと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
次回も、すぐにできる相続対策についてお話したいと思います。
(記事は2019年9月1日時点の情報に基づいています)