相続放棄申述書の書き方 自分でできる! 記入例と一緒に手順や注意点を解説
相続放棄をするためには家庭裁判所に「相続放棄申述書」を提出する必要があります。その後、家庭裁判所から送られてくる「相続放棄の照会書」への「回答書」も作成しなければなりません。相続放棄の申述書や回答書を適切に作成できないと、相続放棄が認められない可能性もあるので慎重な対応が必要です。今回は相続放棄の申述書や回答書の書き方について、詳しく解説します。
相続放棄をするためには家庭裁判所に「相続放棄申述書」を提出する必要があります。その後、家庭裁判所から送られてくる「相続放棄の照会書」への「回答書」も作成しなければなりません。相続放棄の申述書や回答書を適切に作成できないと、相続放棄が認められない可能性もあるので慎重な対応が必要です。今回は相続放棄の申述書や回答書の書き方について、詳しく解説します。
目次
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相続放棄申述書(そうぞくほうきしんじゅつしょ)とは、相続放棄を認めてもらうために家庭裁判所に提出する申請書類です。相続放棄をするには「相続開始を知ってから3か月以内」に家庭裁判所へ相続放棄申述書を提出しなければなりません。
申述書を提出すると家庭裁判所で審査が行われ、「相続放棄を認めてもかまわない」と判断してもらえたら相続放棄が正式に認められる、という流れです。
相続放棄申述書は、相続放棄の手続きを開始するために必須の非常に重要な書類であり、不備のないように適切な方法で作成しなければなりません。
相続放棄申述書には家庭裁判所の指定する書式があり、裁判所のホームページから入手できます。「家事審判の申立書」にアクセスし、「相続に関する審判の申立書」から「相続の放棄の申述」を選び、ダウンロードして下さい。また、全国の家庭裁判所にも置いてあり、窓口でもらうこともできます。
相続放棄の申述書は、以下のような手順で作成しましょう。裁判所のウェブサイトからダウンロードできる記入例も踏まえながら、説明していきます。
まずは申立書を作成した日付、提出先の裁判所名を書き入れて申述人の署名押印をします。申述人とは「相続放棄したい人」のことです。押印に使う印鑑は認印でもかまいません。
申述人の欄には、自分の本籍地と住所、氏名、生年月日、平日の日中に連絡がつく電話番号、被相続人との続柄を書いていきます。本籍地については「自分の戸籍謄本」、住所については「自分の住民票」を見て間違いのないように記載しましょう。
申述人が未成年の子どもの場合、法定代理人である親が「法定代理人」の欄に記入します。親の住所と電話番号、氏名を書きましょう。
被相続人の欄には本籍と最後の住所、氏名と死亡年月日を書く必要があります。
本籍地については、「被相続人の最後の戸籍謄本(除籍謄本)」に書いてあるので参照しましょう。最後の住所は被相続人が亡くなったときに住民登録していた住所です。住民票の除票を取得して確認してください。
死亡年月日は被相続人の最後の戸籍謄本に記載してあります。
相続放棄の申述書の2ページ目の記入例は以下のようになります。
「申述の理由」欄があり、その中に「相続の開始を知った日」という項目があります。
「相続の開始を知った日」とは、「被相続人の死亡を知った日」です。同居の親族などで「死亡日にすぐに知った」なら死亡日と同一ですが、離れて居住しており数日後、数週間後などに知らされたのであれば死亡日と異なります。「初めて死亡の事実を知った日」を書きましょう。
「相続の開始を知った日」は、相続放棄の期限と関連するので非常に重要です。
相続放棄は基本的に「相続の開始を知ってから3か月間」しかできないからです。もしも相続の開始を知った日から申述書の提出までに3か月以上が経過していると、相続放棄を認めてもらえない可能性が高くなります。
死亡日から長期間が経過しているケースでは、特に慎重な対応が必要です。不安があれば弁護士に相談してください。
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相続の相談が出来る弁護士を探す放棄の理由は選択式になっているので、もっとも近いものを選びましょう。
「生前贈与を受けている」「生活が安定している」「遺産が少ない」「遺産を分散させたくない」「債務超過」の5つがあります。どの理由を選んでも相続放棄は認められます。
別の理由がある場合「その他」を選んでカッコ内に具体的な理由を書きましょう。たとえば、被相続人やその親族と疎遠であることが理由の場合、「被相続人とは疎遠であったため、相続でも関わりたくない」などと書けばよいでしょう。相続放棄の理由に制限はないため、どのような理由でも相続放棄できます。
最後に「相続財産の概略」という欄があります。ここには現在把握している相続財産の内容を書きます。土地、建物、現金、有価証券(株式)です。負債も記入します。
金融機関や証券会社に問い合わせたり、登記簿をとったりして調べた結果を書きましょう。
相続財産の内容については多少不正確でもかまいませんし、厳密でなくても相続放棄は認められます。ただ「本当は知っているのに書かない」など、虚偽記載をすると問題になる可能性があるので、正直に書きましょう。
また相続放棄したいなら、相続財産を使い込んではいけません。たとえば相続財産の概略に書かずにこっそり預貯金を使ったら相続放棄が認められなくなってしまうので、絶対にやってはいけません。
相続放棄申述書は手書きである必要はなく、パソコンで必要事項を記入しても問題ありません。代筆でも構いません。
1ページ目の冒頭部分に、800円の収入印紙を貼る欄があります。相続放棄を行うための手数料です。なお、この印紙には消印を押してはいけませんので注意しましょう。
収入印紙は、郵便局・裁判所・コンビニエンスストアなどで購入することができます。
申述書は、被相続人が亡くなった際の住所を管轄する家庭裁判所に提出します。相続人の住所の管轄する家庭裁判所ではありませんので注意して下さい。
また、相続放棄の必要書類である「被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本」「住民票除票(又は戸籍の附票)」なども一緒に提出します。
申述書の提出は、家庭裁判所に足を運んで窓口で提出しても、郵送する方法でもどちらでも問題ありません。
相続放棄の申述書を提出してから、1週間から10日程度で家庭裁判所から「相続放棄の照会書」が届きます。照会の目的は、自らの意思で相続放棄の申述をしたのか、法定単純承認事由(=相続放棄が認められなくなる事由)が存在しないかなどを確認することです。相続放棄を認めてもらうには「回答書」を作成して送らねばなりません。回答内容が不適切だと、相続放棄が認められない恐れもありますので注意が必要です。
相続放棄の回答書には、以下の事柄を書きます。
・被相続人の死亡を知った日
・把握している相続財産の内容
・生前の被相続人とのかかわり
・相続放棄が自分の真意にもとづくかどうか
「被相続人の死亡を知った日」から申述書の提出までに3か月以上経過していると、基本的に相続放棄が認められません。この日については慎重に記載しましょう。
また生前の被相続人とのかかわりが濃厚(たとえば同居している)なのに、死亡を知った日が死亡日とずれていると「なぜすぐに知ることができなかったのか?」と疑問を持たれます。そういったことも考えながら回答書を作成しましょう。
さらに相続放棄が真意でないなら相続放棄は認められません。相続放棄したいなら「真意にもとづきます」と書きましょう。
相続放棄が無事に認められると、家庭裁判所から「相続放棄の受理書」が送られてきます。これは「正式に相続放棄できた事実」を証明する重要書類なので、大切に保管してください。
また、家庭裁判所に正式に相続放棄を証明してもらうには、別途「相続放棄の受理証明書」を申請する必要があります。
相続放棄の受理書や受理証明書が必要になるのは以下のような場面です。
・債務者から催促を受けた
債権者から督促を受けた相続放棄の受理書や受理証明書を提示すれば、それ以上請求を受けることはなくなります。
・不動産の名義変更
他の相続人が単純承認して不動産を名義変更する際には、相続放棄者の「受理証明書」が必要です。ただ相続放棄者が自分で請求しなくても、登記申請をする本人(他の相続人)自身が請求できるので、わざわざ取得する必要はありません。
・預貯金払い戻しなどの相続手続き
他の相続人が預貯金を払い戻したり株式の名義変更をしたりする時にも、相続放棄の受理書や受理証明書が必要なケースがあります。この場合にも、払い戻しや名義変更をする本人が対応できるので、わざわざ自分で申請する必要はありません。
相続放棄申述書の書き間違えがあった場合、誤字に二重線を引き、その上に訂正印を押して、そばに訂正内容を記します。修正液は使用しないようにしましょう。
相続放棄申述書は代筆することも可能です。特に委任状の添付などは必要ありません。後日行われる裁判所からの照会によって、本人の意思による相続放棄であることが確認されます。弁護士に依頼すれば、申述書の提出から照会回答まで一括して対応してもらえます。
必ず必要になるのは、相続放棄申述書、被相続人の住民票除票または戸籍附票、相続放棄する者の戸籍謄本です。また、相続放棄が受理されたことを通知する書類「相続放棄申述受理通知書」を申述人に送付するため、切手を同封する必要もあります。ただし、相続放棄の必要書類は、放棄する人と被相続人の間の続柄によって異なります。特に亡くなった方の父母や兄弟姉妹が相続放棄をする場合は、必要書類が多くなりますので、事前にチェックしましょう。
相続放棄するときには「申述書」や「回答書」の書き方が重要なポイントとなります。確実に放棄を認めてもらうためには、家庭裁判所への提出前に弁護士に見てもらうと安心です。無料相談などを利用してアドバイスを受けておきましょう。
(記事は2023年8月1日現在の情報に基づきます)
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