目次

  1. 1. 残高チャージタイプの○○ペイは大半が相続できない
  2. 2. 払い戻しの個別相談に応じてもらえる可能性がある
  3. 3. いつのまにか解約されてしまう可能性も…

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2019年10月の消費税増税とともにキャッシュレス化のキャンペーンが加速しています。なかでも目立っているのが「○○ペイ」といった電子決済システム。サービスによっては独自のポイントをチャージできるものもあります。連載「知って備えるデジタル相続」の4回目は、この○○ペイに関する質問にお答えします。

質問:「自分が死んだらスマホに入れている○○ペイの残高はどうなりますか? できれば銀行の口座などと一緒に家族に渡したいんですが・・・」

○○ペイには、登録してあるクレジットカードやデビットカードから直接支払う仕組みのものと、サービス内に残高をチャージしてそこから支払うタイプがあります。最近利用者数を伸ばしている「PayPay」や「LINE Pay」「メルペイ」などは後者のタイプになります。

残高の上限はPayPayが500万円で、LINE Payは100万円。メルペイは非公開ながら残高が100万円以上ある場合は追加チャージできない構造になっています。つまり、数十万円やときには100万円を超えるような残高を持つ使い方も想定されているわけです。その状態で持ち主が亡くなったら・・・。

2019年12月現在、大半の○○ペイは一身専属性のスタンスをとっています。契約するのはその人だけで、相続や譲渡には応じないルールです。100万円近くある○○ペイの残高であっても、持ち主が死んでしまったら使う権利が露と消えてしまうというわけです。少なくとも規約上はそうなっています。

しかし希望を捨ててはいけません。実際のところは、そこまで無慈悲なケースばかりではなく、遺族からの問い合わせを受けたら、個別にやりとりしたうえで指定口座に払い戻すという運営元が多いです。

2019年9月に取材した際、PayPayは2ヶ月に1回のペースでそうした遺族からの相談を受けていると話していました。LINE Payも同様の対応を実施していることを明言しています。また、類似のサービスとしてSuicaは亡くなった会員の残高を払い戻すための専用フォームを公開しています。

申請する際は契約者の死亡証明書や申請者との続柄が分かる公的書類などを揃える必要がありますが、遺族が気づきさえすれば、少なくとも残高に対しては払い戻しの相談に応じてもらえる余地があるといえます。

ただ、これらの救済の道は遺族がアクションしないと開けません。少なくとも、亡くなった家族がどんな○○ペイを持っているか分かっていないとアプローチのしようがありません。

すると故人のアカウントは誰にも気づかれないまま利用規約により解約となり、残高が遺族の元にわたる可能性が失われることも考えられます。実際、前回のコラム「故人のLINEデータは残せるのか?スマホの解約後には注意が必要」で解説したとおり、LINEはアカウントと紐付いている電話番号が解約されたら、いつ設定が初期化されるかわかりません。

ですから、自分が亡くなったあとに○○ペイ残高を遺族に託したいのなら、使っている○○ペイの種類や登録名が家族に伝わるように日頃から意識しておくことが重要です。日頃から話しておくのでも、エンディングノートに書き留めておくでもいいです。いざというときに家族が分かるような備えを普段から心がけておきましょう。

(記事は2019年12月1日時点の情報に基づいています)

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