目次

  1. 1. 電話番号は再利用され別人のものに 
  2. 2. LINEのサービス利用は契約者のみに
  3. 3. 故人のプライバシーの尊重を忘れずに

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老若男女問わず、多くの人がコミュニケーションに「LINE」を使っています。なかには、ずっと残しておきたいメッセージもあるのではないでしょうか。連載「知って備えるデジタル相続」の3回目は、故人のスマートフォンに残ったLINEのデータの取り扱いについて解説します。

今回の編集部からの質問は次の通りです。最近、プライベートでも似た相談を受けました。

質問:「亡くなった家族のスマホを解約したいんですが、LINEメッセージだけは残しておきたいです。形見としてずっと大切にしたいと思っています。どのような方法がありますか?」

亡くなった家族が使っていたスマホは、通信契約を解除しても手元に残ります。内部に保存されたデータも、遺族が持ち続けられます。ただし、インターネットにつないだ時、故人が生前に交わしたメッセージは消えているかもしれません。その理由は、次の通りです。

LINEのサービス利用者一人一人が作成するアカウントは、電話番号がもとになっています。実は、解約された電話番号は、一定の期間を空けてから再利用されます。明確な規定はありませんが、最近は電話番号が足りなくなりがちで、その期間が短くなっていると言われています。3年前に業界を取材したところ、固定電話回線は2~3年のスパンを空けることが多い一方、携帯電話の回線は、それより短いと分かりました。私が聴いたところでは「契約を解除した携帯電話の番号が、3ヶ月後には違う人のものになっていた」という話もあります。

再利用した電話番号でアカウントが作成されると、LINEのデータはアップデートされ、故人のデータは失われます。「ある日突然、亡くなった家族のLINEが赤の他人のものに・・・」という事態は、しばしば起きていて運営元のLINE株式会社も把握しています。

そもそも、LINE自体が形見にできないタイプのサービスです。LINEグループのすべてのサービスは「一身専属」。つまり、契約者だけに使う権利を提供しています。このため、家屋であっても、引き継げないのです。ユーザーページやメッセージだけでなく、生前に利用していたスタンプや音楽、書籍なども同様です。

故人の息吹が感じられるものをずっと持ち続けていたいという気持ちは分かりますが、LINEページを形見として持っておくことがルール違反になります。

一方で、残された家族が受け取った故人からのメッセージは、その後も閲覧できます。しかし、電話番号の変更などで失われることに備え、バックアップしたりスクリーンショットをとったりして保存することをお勧めします。

LINEがこのようなスタンスをとっていのは、サービスのプライバシー性が高いからです。特定の相手やグループだけに向けたメッセージは、たとえ家族であっても知られたくないこともあるでしょう。やりとりしている人も、家族が見ることを想定していないはずです。相続可能にしてしまうと、将来、誰かに見られることも考えて使わなければなりません。ちょっと現実的ではないですよね。

故人のプライバシーを守る視点は、デジタル遺品に限らず、いろいろなものを巡って議論されています。ですが、明確に保護する法律は、どこの国でも見かけたことがありません。一方で、いたずらに侵害していいものではないという合意は世界中で形成されていると思います。

デジタル遺品の中には、故人の思いが非常に生々しく残されているものもあります。それらとどう向き合っていくのか。亡くなった人に対する思いやりや倫理観が問われるテーマだと思います。今後、こうした議論は活発になるかもしれません。

(記事は2019年12月1日時点の情報に基づいています)

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