外出自粛中、「サブスク」にハマった私

今回の相談者はさいたま市で暮らす70代男性。ご自身が持つデジタル資産についてのご相談です。

「仕事でも趣味でも昔からパソコンを使っています。写真や住所録も居間のパソコンで管理していますが、大事なものの保管場所は妻に伝えているので、そこは心配していません。不安なのはサブスクです。

前々からウイルス対策ソフトとMicrosoftのオフィスアプリ、あとはNetflixと契約していますが、外出自粛が長引くうちにSpotifyとHuluも利用するようになりました。今後も増えるかもしれません。

そこでふと、自分の死後にこれらの契約はどうなるのかと思いまして。やはり妻がひとつ一つ解約することになるのでしょうか?」

IT以外にも広がるサブスク

「サブスク」ことサブスクリプション(subscription)はもともと雑誌などの定期購読を指す言葉でしたが、近頃は一定期間使える権利を月額や年額などで提供するタイプのサービス全般を指すようになっています。

男性が契約しているMicrosoftのオフィスアプリ(Office 365)や動画配信サービスのNetflixとHulu、音楽配信サービスのSpotifyなどが典型例です。ウイルス対策ソフトもおそらくは年間契約のサブスクタイプではないでしょうか。IT関連以外でも、いつ来店してもコーヒーが飲める権利を月額契約で提供する飲食店や、契約期間中は好きに車をレンタルできるサービスなどがあります。

利用者にとっては便利なサービスが定額で使え、提供側にとっては継続的に安定した収益が得やすいメリットがあり、今後も広がっていきそうです。

しかし、多くのサブスクは契約期間が満了後に自動で更新される仕組みになっているため、利用者が能動的に契約解除しないと支払いの流れは止まりません。どうすればいいのか。遺族の側からみてみると、整理しやすくなります。

引き落とし先のストップで解決?

現状、故人のサブスク契約は、自動引き落とし先となっているクレジットカードや預金口座を停止・凍結することでストップしているケースが多いと思われます。数ヶ月や半年など、支払いが一定期間滞れば規約に従って自動的に契約が破棄されるサービスがほとんどのため、滞納によって契約自体も消滅するという流れです。

実際に、故人のクレジットカードを停止してしばらく経った後、支払い明細を追っている最中にサブスクサービスに気づいたという遺族を数人知っています。あるいは、サブスクの契約自体に気づかないままでいるケースもありました。

「停止」は最終手段

本人が何の準備もしないまま亡くなってしまったら遺族が全容を把握するのは困難ですし、マイクロソフトのように故人の契約解除の方法として、引き落とし先の停止を推奨している場合もあります。このため、遺族がサブスクを一網打尽に処理する効率的な方法といっていいでしょう。

ただし、引き落とし先の停止はあくまで最終手段と捉えるのがベターです。この方法には二つの懸念があります。

延滞分請求とクラウド消失のリスク

一つは、契約破棄までの滞納分の請求が別途届く可能性があるという点が挙げられます。

契約の生死を確認しようがない提供元からすれば、数カ月分の滞納が発生したうえでの契約破棄ということになるので、当然未納分の回収を考えるでしょう。そのうえで、回収コストや契約者の死亡確認コストとのバランスもあって、現在は「厳しい追跡が行われないことが多い」という事情があります。

滞納分が高額になれば、別途遺族に請求が届くケースも増えるわけです。これはサブスクではありませんが、オンライン決済サービス大手のペイパルが、がんで亡くなった女性宛に約3200ポンド(約47万円)の未払い分の支払いを求めたケースが報じられたこともあります。

思い出の写真や動画まで消してしまう?

もう一つは、サブスクサービスのなかに故人のかけがえのないデータが保存されているケースもあるということです。

クラウドサービス(オンラインストレージ)やレンタルサーバーのサブスク契約を解除してしまうと、そこだけに保存されていた個人のファイルやブログなどのデータにはアクセスできなくなってしまいます。

スマホで撮った写真を直接クラウドに上げたり、ブログ記事をレンタルサーバー上で編集したりして、端末内には何も残っていないというケースもあります。契約内容を調べずに一網打尽に破棄してしまうと、そうしたデータも知らずのうちに捨ててしまうリスクがあるのです。

サブスクもリストアップすべき

以上を踏まえて、サブスク契約をしているご本人はやるべきなのは情報整理と共有だと思います。どんなサブスクサービスを使っているのかをリストアップしておき、いざというときに家族に伝わるようにしておくのが最善です。

普段から明け透けにする必要はなく、エンディングノートでも手帳でもいいので書き留めておくのがいいでしょう。リストを印刷して預金通帳などと一緒に保管しておくこともお勧めです。

とにかく自分の身に何かあったときに情報共有できれば、家族は情報を得て「判断」できますから。デジタル資産を見えない存在にするのも、見える存在にするのも、持ち主自身という側面があるのです。

前回は、故人の「仮想通貨」を相続する方法について書きました。今後もこちらのコラムで、デジタルの遺品や相続にまつわる疑問や不安にお応えしていきます。

(記事は2020年5月1日時点の情報に基づいています)