目次

  1. 1. 相続したマンションの名義変更とは
    1. 1-1. 相続登記によって売却が可能に
    2. 1-2. 2024年4月から相続登記の義務化がスタート
  2. 2. マンション相続、名義変更の流れ
    1. 2-1. 遺言書を確認する
    2. 2-2. 相続人・相続財産の調査
    3. 2-3. 遺産の分け方を決め、遺産分割協議書を作成
    4. 2-4. 相続税の申告と支払いをする
    5. 2-5. 名義変更(相続登記)をする
  3. 3. 相続したマンションの名義変更の必要書類
  4. 4. マンションの名義変更にかかる費用
    1. 4-1. 戸籍謄本などの書類の取得費用
    2. 4-2. 登録免許税
    3. 4-3. 司法書士への報酬
  5. 5. マンションの名義変更でよくある質問
  6. 6. まとめ|争いのない名義変更は司法書士に相談を

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不動産を誰が所有しているかなどのデータは、法務局で管理されており、土地・建物ごとに作成された「登記事項証明書(登記簿謄本)」に記載されています。ほとんどのマンションの登記事項証明書は所有する部屋ごとに作成されており、部屋番号の登記事項証明書を取得すると、敷地(マンションの底地)の情報も記載されています。この登記事項証明書の所有者の欄を亡くなった人の名義から相続人の名義に変更することを「相続登記」といいます。

亡くなった人が名義人となっているマンションに誰も住まなくなったため売却したいと相続人が考えても、そのままでは売却することができません。不動産会社に売却の相談に行くと、まずは相続登記をするように促されます。死者名義のままでは、相続人として不動産の所有権を第三者に主張できず、売却することも、買主の名義に変更することもできないからです。相続人の名義に変更してはじめて、売却の手続きを進められます。

2024年3月末までは相続登記は必ずしもしなければならない手続きではなく、手続きを放置することによるペナルティもありませんでした。そのため長年相続登記がなされていない不動産が多く存在しています。何世代にもわたって相続が発生し、もはや登記事項証明書に記載されている名義人の相続人が誰なのかわからないものもあります。

このような状況を解消するため、2024年4月1日より相続登記が義務化されました。そのため、マンションを売却するか否かに関わらず「自分が不動産を相続したことを知ってから3年以内(遺産分割があった場合には、遺産分割成立の日から3年以内)」に相続登記の申請をしなければなりません。

相続登記の義務化について詳しく知りたい方は以下の記事を参考にして下さい。
【関連】相続登記の義務化を徹底解説 罰則から過去の相続分の扱いまで

マンションを相続した場合、次のような手順が必要となります。

マンションの名義変更の流れ。遺言書の確認や相続人・相続財産の調査、遺産分割協議書の作成などが必要になります
マンションの名義変更の流れ。遺言書の確認や相続人・相続財産の調査、遺産分割協議書の作成などが必要になります

亡くなった人(被相続人)が、生前に遺言書を作成していたか否かを調べます。遺言書の中でマンションを承継させる相続人を指定していれば、死亡と同時にその相続人がマンションの所有権を取得することになります。

遺言書は、①本人が自筆しどこかに保管しているケース、②公正証書遺言を作成しているケース、③本人が自筆した遺言書を法務局で保管してもらっているケースがあります。②は公証役場、③は法務局に調べてもらうことができますが、①の場合は自宅や貸金庫など心当たりのある場所を探すことになります。見つけても勝手に開封せずに、家庭裁判所で開封しましょう。

遺言書で相続財産の承継方法が定められていない場合には、相続人全員で話し合って決定することになります。その前提として被相続人(亡くなった人)の出生から死亡までの戸籍を取り寄せて相続人を特定するとともに、相続財産がどれだけあるかを調査しなければなりません。

不動産の場合には、固定資産納税通知書に所有不動産が記載されているのでそれを参考にしましょう。市区町村ごとに個人が所有している不動産をリストアップしたもの(名寄帳)を発行してもらえるので、亡くなった人のゆかりのあった市区町村役場に請求してみるのもよいでしょう。

なお、2026年2月2日から、法務局にて個人が所有する不動産をリストアップしてくれる「所有不動産記録証明制度」がスタートします。これにより、亡くなった人が所有していた不動産を漏れなく特定しやすくなるでしょう。

相続人全員が話し合いのできる状態になり、相続財産もすべて判明したら、誰がどの財産を承継するかを相続人全員で話し合います。これを遺産分割協議といいます。また、この協議の結果を書面で作成したものを「遺産分割協議書」といい、相続登記の申請を含め各相続手続きの際に印鑑証明書とセットで提出を求められます。

ある程度の相続財産がある場合には、相続税の申告をしなければなりません。相続税の申告期限は「被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10カ月以内」となっています。ただ、相続税は控除される額が大きいため、相続税申告の対象外になる方も多いです。

相続税の控除額は、「3000万円+(600万円×法定相続人の数)」です。例えば、相続人が配偶者と子供2人であれば、3000万円+(600万円×3)=4800万円となります。つまり、相続財産が4800万円を超えない場合には相続税の申告が不要となるわけです。

ほかにも「小規模宅地等の特例」といって、亡くなった人の自宅の相続税評価額を最大8割軽減できる制度などもあります。

相続登記には、遺言書に基づく相続登記、遺産分割協議に基づく相続登記、法律で定められた相続分割合でする相続登記(法定相続登記)があります。

法定相続登記は、相続人全員で話し合う必要はなく、相続人のうちの1人が全員分の相続分を登記申請することができます。法律で定められた相続分なので、相続人の誰かが勝手に登記しても他の相続人には不利益にならないからです。

ただし、共有状態になっている不動産を売却するには全員が関与しなければなりません。売却しない場合には、将来的にそれぞれの持分にそれぞれ相続が発生することになり権利関係が複雑になるため、なるべく避けることをおすすめします。

なお、相続登記の義務化に伴い、相続人申告登記という制度がスタートしました。この制度を利用すれば、相続人であることを登記記録に残すことで、ひとまず相続登記を怠った場合の罰則を回避できます。

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マンションの場合には、ほとんどで建物と敷地権(マンションの底地)が一体化されており、建物と土地を別々に申請しないのが特徴的です。敷地権と一体化したマンションを「敷地権付区分建物」といいます。ただし、一部には建物と敷地の登記事項証明書が分かれているものも存在します。

名義変更(相続登記)申請に必要な書類は以下のようになります。

〈市区町村役場で取得する書類〉
戸籍謄本・除籍謄本・原戸籍謄本・印鑑証明書・戸籍の附票・住民票・固定資産評価証明書

〈自分で作成する書類〉
登記申請書・遺産分割協議書・相続関係説明図

上記の書類は、遺言書による相続登記・遺産分割協議による相続登記・法定相続登記により、それぞれ必要な書類が変わりますので、詳しくは下記の図表を参照の上、ご自身に合ったものをご用意ください。

相続登記の添付書類の一覧
相続登記の添付書類の一覧。どの相続登記を申請するかによって必要書類も変わります

相続登記の必要書類を一覧表で紹介! 有効期限や取得方法、綴じ方も解説

マンションの名義変更にかかる費用は、大きく3つに分けられます。

戸籍謄本などの市区町村役場に支払う発行手数料です。基本的には1通数百円ですから、ほとんどの場合は10,000円以下で揃います。

相続登記の申請の際に法務局に納める収入印紙代です。固定資産評価額に1000分の4(0.4%)を乗じた額が登録免許税の収入印紙代になります。

マンションの敷地(土地)の評価額は、マンション全体の評価額が固定資産評価証明書に記載されているケースが多いため、必ず敷地権割合を乗じた額に1000分の4を掛けて算出してください。マンションの部屋は被相続人の所有物ですが、敷地はマンションを所有している人が全員で共有しています。ですから、登記事項証明書に記載されている敷地権割合を乗じた額が被相続人が所有していた土地の評価額になります。ただし、自治体によっては、固定資産評価証明書にあらかじめ敷地権割合を乗じた額を記載している場合もあり、この場合には敷地権割合を掛けてはいけません。

また、登録免許税の特例として、評価額が100万円以下の土地の登録免許税は非課税となっています。敷地権割合を乗じて計算した結果が100万円以下であれば、土地には登録免許税はかからず、建物部分の評価額に1000分の4を乗じた額が登録免許税となります(建物は100万円以下でも非課税になりません)。

司法書士に相続登記の代理を依頼した場合には、上述の実費とは別に報酬がかかります。すべて依頼するか、必要書類の取り寄せは自分でしてそれ以外を依頼するかなどにより報酬は変わります。また、司法書士には業界一律の報酬規定はなく、事務所単位で報酬基準を決定できます。したがって、事務所によっても変わってきますから、あらかじめ見積もりを依頼するのもよいでしょう。

相場としては、戸籍謄本等の収集からすべて依頼した場合には10万円前後(実費別)になることが多いかと思います。

Q. 相続したマンションの名義変更は自分でできる?

相続登記は、時間がある方は調べながら用意していくことも可能です。

ただし、売却予定で買主が決まっていて、急いで相続登記しなければならない場合や相続人間の仲が良くなく書類の失敗によるやり直しがきかない場合などには、司法書士に依頼することをおすすめします。

相続登記を自分で手続きするには? 必要書類や費用、デメリットや注意点を解説

Q. マンションの相続放棄はできる?

相続放棄すると、相続人ではなくなり、プラスの財産もマイナスの財産もすべて承継しないことになります。マンションだけを相続放棄することはできません。

マンションの権利を承継したくない場合には、そのマンションを他の相続人に譲り、その分を預貯金などの遺産で承継できるよう遺産分割協議で話し合いましょう。

相続登記義務化が始まったことで、これからはマンションの名義変更も今まで以上に身近な存在になってきます。相続人間に争いのない相続登記手続きは、司法書士に依頼することにより、時間的な負担がなくスムーズに終わらせることができます。相続が発生したら、まずは司法書士に相談してみましょう。

(記事は2024年5月1日時点の情報に基づいています)

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