不動産の贈与を受けたら登記手続きも忘れずに

贈与は財産をあげる人(贈与者)ともらう人(受贈者)の合意で成立します。これは不動産の贈与も同じです。贈与者と受贈者の合意があれば不動産の所有権は移転しますので、贈与登記を申請しなくても贈与が無効になるわけではありません。

また、相続登記についてはこれを義務化する法律が成立しましたが、贈与登記にはこのような法律はありません。ですから、贈与登記を申請するか否かは当事者の判断に任されています。

ただし、登記する義務がないからといって登記せずに放置していると次のようなトラブルが生じるかもしれません。

第三者の登記が入ってしまう

AさんがBさんに不動産を贈与しましたが、贈与登記を申請していませんでした。Aさんは登記簿上の名義が自分になっていることを利用して、Cさんにこの不動産を売却しました。売買による所有権移転登記が申請され、登記簿上の名義がCさんになると、その不動産はCさんのものとなります。贈与契約書を交わしていたとしても、贈与登記を申請していなければ、Bさんは自分が所有者であることをCさんに主張できません。

登記をしないうちに贈与者が亡くなってしまう

Dさんは父親であるEさんから不動産の贈与を受けましたが、贈与登記を申請しないうちに父親のEさんが亡くなってしまいました。Eさんの相続人にはDさんのほかに姉のFさん、弟のGさんがいます。遺産分割の際に「この不動産は父の生前に自分がもらった」とDさんが主張しても、登記をしていないとFさんやGさんから贈与を否定されて、相続財産の一部とみなされてしまう可能性があります。

このように贈与登記を申請しておかないと、後々トラブルにつながる可能性があります。贈与を受けた際には自分の権利を守るためにも早めに贈与登記を申請することをおすすめします。

贈与登記の手順、必要書類は?

では、贈与登記はどのような手順で申請するのでしょうか。必要書類や費用も含めて確認していきましょう。

申請までの流れ

贈与登記は、対象不動産の所在地を管轄する法務局に対して申請します。なお、申請にあたってはいくつか事前準備が必要です。手順は以下のとおりです。

贈与登記の手続きの流れ
贈与登記の手続きの流れ

贈与登記にかかる費用は?

贈与登記にかかる主な費用としては、登録免許税と司法書士報酬の2つがあります。司法書士に依頼せずに自分で登記申請を行う場合には登録免許税のみとなります。なお、登記事項証明書や印鑑証明書と言った各種証明書の発行手数料、贈与契約書に貼付する印紙代なども必要ですが、これらは合わせても2000~3000円程度です。

1.登録免許税

登記申請の際には登録免許税を納める必要があります。贈与登記の登録免許税は固定資産税評価額の2%です。たとえば、固定資産税評価額が3000万円の土地の贈与であれば60万円の登録免許税がかかります。

2.司法書士への報酬

登記申請を司法書士へ依頼した場合には、司法書士の報酬も発生します。やや古いデータではありますが、平成30年に日本司法書士会連合会が実施した報酬に関するアンケートによると、贈与登記の司法書士報酬の相場は4万円程度であることが読み取れます。

ただし、司法書士報酬は完全に自由化されており、権利関係が複雑だったり贈与の対象となる不動産の数が多かったりする場合には報酬も相場より高くなることがあります。そのため、正式に依頼する前に報酬規程表を確認するか見積書を作成してもらうと良いでしょう。

なお、司法書士の報酬については、日本司法書士会連合会の司法書士の報酬のページにてご確認ください。

不動産の贈与にかかる税金は?

不動産の贈与を受けると登録免許税とは別にいくつか税金が課されます。贈与の対象となる不動産の評価額が高額であれば税額も高くなりますが、控除の特例や軽減措置があるため、その税額を試算するには専門的な知識が必要になります。

以下、贈与にかかる税金について概略を記載します。詳しくは国税庁のホームページや税理士に確認することをおすすめします。

1.贈与税

贈与税は、贈与を受けた財産の価額(評価額)の年間合計額が基礎控除額(110万円)を超える場合に、その超える金額について、その財産をもらった人(受贈者)に課税されます。

贈与税は他の税金と比較すると税率が高く、基礎控除後の評価額が200万円以下の場合でも10%、1000万円以下で40%、3000万円を超えると55%にもなります。不動産の贈与の場合には、不動産の評価額に伴い税額も高くなることが多いので注意が必要です。

ただし、贈与税についてはその税額を軽減するさまざまな制度があります。たとえば、夫婦間で居住用の不動産を贈与した場合は婚姻期間が20年以上の夫婦であれば基礎控除の110万円に加え、最大2000万円まで非課税となる配偶者控除があります。また、贈与税と相続税の課税を一体化して遺産相続時に税額を精算する相続時精算課税という制度もあります。生前対策として不動産の贈与を検討する際は、一度税理士に相談してみると良いでしょう。

2.不動産取得税

不動産取得税とは、土地や家屋などの不動産を取得した人に対して、都道府県が課税する地方税です。不動産の「取得」には、売買による取得だけではなく、贈与による取得も含まれます。不動産取得税の税額は、固定資産税評価額の4%とされていますが、土地と住宅用家屋の場合は3%に軽減されます(令和6年3月31日までの軽減措置)。

また、宅地については課税標準額が2分の1になったり、一定の要件を満たす住宅の敷地については税額を控除できたりと、さまざまな軽減措置があります。

3.固定資産税と都市計画税

不動産の贈与を受けると受贈者が所有者になりますので、贈与を受けた翌年からは受贈者に対して固定資産税と都市計画税が課税されます。贈与を受けた不動産の課税標準額の1.4%が固定資産税、0.3%が都市計画税となります。

不動産の贈与を検討する際には専門家に相談を

贈与登記を申請するときには、対象不動産の権利関係の確認や贈与契約書の作成など法律的な知識が必要になります。また、登録免許税のほかにも贈与税、不動産取得税などの税金が生じますので、どのくらいの税金を納める必要があるかを検討することも大切です。

書類に不備があって贈与登記がやり直しになってしまったとか、贈与したら思っていた以上に税金がかかってしまったということがないように、不動産の贈与を検討する場合は司法書士や税理士などの専門家にサポートしてもらうことをおすすめします。

(記事は2021年11月1日時点の情報に基づいています)