「相続会議」の税理士検索サービス

制度の使いづらさが改善

  • 昨年末に発表された税制改正大綱には、生前贈与についての変更点が多かったようですね。

    父・一郎
  • はい、今回は累計2500万円までの生前贈与なら、贈与税がかからない相続時精算課税制度について説明します。この制度は2500万円までなら贈与税はかかりませんが、贈与した人が亡くなって相続することになった段階で、贈与を受けた金額も相続財産に加えて計算する制度です。いわば、贈与税の支払いを先延ばしにしておき、相続税を計算する時に贈与分も精算するものです。

    ソーゾク博士
  • 知っていますよ。2500万円まで贈与税がかからない点は魅力だと思いましたが、結局、僕が相続する段階になったら、贈与でもらった分も相続財産に加えて相続税を計算するんですよね。忘れた頃に税金がかかるのは、困りますよ。

    太郎
  • この制度を使うと決めたら、年110万円以内なら贈与税がかからない暦年贈与ができなくなるんですよね。しかも、少額の贈与をした場合でも、その都度税務署に申告する必要があると聞いたので、あまりメリットを感じられずに、わが家はこの制度を使っていませんでした。

    一郎
  • お二人とも、ずいぶん詳しくなりましたね。その通りです。ただ、今回の税制改正で、この制度に新たに年110万円までの基礎控除が設けられました。つまり、相続時精算課税制度を使った場合でも、年110万円以内の贈与なら、贈与税も相続税もかからず、申告も不要になるんです。

    博士
  • えっ! そうなんですか。グッと使い勝手もよくなりますね。

    太郎
  • 確かに、この制度の使いづらさとして指摘されていた点が改正されました。大綱の中でも今回の改正が「生前にまとまった財産を贈与しにくかった人にとっても、次世代に資産を移転しやすい税制」だとしています。

    博士
  • 父さん、わが家も早めに財産を移す準備をしようよ。

    太郎
  • 新制度は、いつから使えるんですか?

    一郎
  • 2024年1月以降の贈与から適用されます。太郎さん、この制度を使うべきかどうかは、慎重に考えてください。2500万円までは贈与税がかからないので、多額の財産を生前に移転しやすいのは魅力です。ただ、贈与税がかからないといっても、相続する段階で、贈与分も相続財産に加えて相続税を計算する必要があります。

    博士

生前贈与の選択肢の一つに

  • 24年以降、新制度はどんな人にとって使いやすいでしょうか。

    一郎
  • この制度で贈与した財産は、贈与してもらった段階の時価で相続財産に加えます。株式など、今後値上がりが期待できる資産を持っている方や、そもそも相続税がかからない人にとっては早い段階で財産を移転できるメリットがあります。  また、新設された110万円の基礎控除は、亡くなる直前の贈与であっても、相続財産に加算する必要がありません。この点が暦年贈与の基礎控除と違う点です。高齢の方で、これから贈与を検討する場合には有望な選択肢の一つになります。制度の活用を考えたら、税理士への相談をお勧めします。

    博士

 今回のソーゾク博士=税理士法人山田&パートナーズ・税理士清三津裕三さん、構成=相続会議編集部

■新・相続時精算課税制度とは
・2024年以降の贈与が対象
・年110万円まで基礎控除
・基礎控除は生前贈与加算の対象外

(記事は朝日新聞土曜別刷り紙面「be」に掲載した内容を基に掲載しています。2023年1月1日時点での情報に基づきます)