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加算機関の延長は相続税に影響

  • 贈与税の暦年課税制度を活用した生前贈与の加算期間が3年から7年に延長される、というニュースを見たけど、生前贈与の何が、どう変わるんだろう。

    夫・一郎
  • 生前贈与には関心を持つ人も多いと思います。一方で、難しい言葉が出てきて理解するのが難しい点もあります。今回は加算期間の延長について、できるだけ分かりやすく解説しましょう。

    ソーゾク博士
  • 暦年課税制度は、1年間の贈与額が基礎控除額の110万円以下だったら、贈与税がかからない仕組みでしたね。加算期間の延長は、贈与税に関係するのかしら。

    妻・正子
  • 贈与税ではなく、相続税に関わるんです。まずは基本的なポイントから考えます。相続税は、亡くなった人が所有していた財産に課されます。亡くなる前に子どもたちに財産を分けておけば相続税を減らせます。

    博士
  • 負担が減らせそうですね。

    一郎
  • しかし、亡くなる直前に駆け込みで贈与されると、どうでしょう。国からすると、課税できたはずの財産が減って納税額も低くなります。このため、亡くなった日から逆算して、一定の期間内の生前贈与の財産は、相続したものとして相続税の課税対象として計算するのです。これが生前贈与加算です。今回のポイントは、この逆算する期間が変わったことです。

    これまでは亡くなる前の3年間でした。しかし、2022年12月に発表された「与党税制改正大綱」では、7年に延長することが盛り込まれました。

    博士
  • 具体的には、どう逆算すればいいんでしょう。

    正子

加算機関の逆算方法

  • 対象になるのは、24年以降の贈与です。現在、23年1月1日に亡くなった人の場合は、3年前にあたる20年1月1日を起算日とします。その日から亡くなるまでに贈与した財産は、相続財産として加算する必要があります。この期間が、3年から7年に延びることになるのです。

    博士
  • 期間が一気に倍以上になるのか。

    一郎
  • 注意点もあります。亡くなる前の3年間に贈与された財産の扱いは、これまで通りです。しかし、4~7年間に贈与した財産は、総額から100万円を差し引いた金額で相続税を計算するのです。

    博士

生前贈与加算の注意点

  • なんだか複雑ね。生前贈与は財産を確実に引き継げるのがメリットだけど間違えると損をしそう。

    正子
  • 複雑に感じる人も多いでしょうね。ほかにも注意点があります。たとえば、親が亡くなったような場合、財産を相続していなければ、生前贈与加算の対象にはなりません。また、法定相続人ではない孫や子どもの配偶者は、遺言や生命保険の受取人として財産をもらっていなければ生前贈与加算の対象外です。

    博士
  • 自分だけでシミュレーションするのは難しそうだ。

    一郎
  • 生前贈与は、長い視野に立った計画性が必要。生前贈与加算の期間が延びたこともあり、より早く始めることも大切です。確実に手続きを終わらせるためには、税理士に相談してみてください。

    博士

 今回のソーゾク博士=税理士法人山田&パートナーズ・税理士清三津裕三さん、構成=相続会議編集部

■生前贈与加算のポイント

・加算期間が7年に延長
・2024年以降の贈与が対象
・4~7年前に贈与した財産は100万円を差し引く

(記事は朝日新聞土曜別刷り紙面「be」に掲載した内容を基に掲載しています。2023年1月1日時点での情報に基づきます)

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