• 僕が父さんの財産を相続したら、相続税がかかるんだよね。だったら、相続する前にお金をもらっちゃえばいいのかな。

    長男・太郎
  • 子どもにお金をあげても、贈与税がかかるんですよね。

    父・一郎
  • はい。年間110万円を超える金額を贈与すると、もらった人に贈与税がかかります。

    ソーゾク博士
  • もらった人ってことは僕か。相続でも贈与でも、税金がかかるんですね。でも、家族同士のお金のやり取りまでチェックされるのかな。

    太郎
  • 税務署の職員には質問検査権があって、銀行などを調査できます。たとえば一郎さんから太郎さんにお金が振り込まれたら、税務調査ですぐにわかります。

    博士
  • 振り込みでなく、現金でやり取りをしたらわからないのかな?

    一郎
  • たとえ現金でやり取りをしても、いずれ税務署が調べればわかります。まとまったお金を贈与するには、銀行などから引き出しますよね。税務職員がそうした出金を見つけたら、お金の行き先を徹底的に調べます。生前贈与の可能性も視野に入れています。

    博士
  • それは怖い。税務署の人が勝手に調べるわけじゃないんでしょ?

    太郎
  • はい。税務調査をする前に、対象者に通知が届くのが原則です。

    博士

相続税調査の際、過去のお金の動きも調査

  • 控除額を超える生前贈与を受けたのに申告しないと、通知が来て贈与税の調査が行われるんですか?

    一郎
  • 贈与税の調査は、相続することになった場合に相続税の調査と一緒に行われるケースが多いです。一郎さんが亡くなった際、相続税調査のために過去のお金の動きを調べます。その調査の過程で過去に生前贈与があったことがわかると、贈与税の申告を求められることが多いのです。

    博士
  • 具体的に、どんなお金の動きだと税務署が確認するんでしょうか?

    一郎
  • 税務調査でとくにチェックされるのは、「亡くなった人の口座からの出金」です。例えば、一郎さんの生前に口座から1年で計1千万円の現金出金があったとしましょう。普通に生活をしていたら、そんな大金を引き出すことはないですよね。すると、生前贈与の疑いをもたれやすくなります。

    博士
  • 相続税調査のときには父さんはいないわけだから、僕が説明するんですよね。僕の口座もチェックされるんでしょうか?

    太郎
  • はい。たとえば太郎さんの預金口座に大きな入金があったり、自宅購入などで多額の出費があったりすると、そうした情報をヒントに、生前贈与があったかどうかについて、聞き取り調査が行われます。

    博士
  • お金を相続まで残すにせよ、贈与するにせよ、税金のルールをしっかり押さえて控除額を超える分はしっかり申告することだな。

    一郎

■正しく生前贈与をするために

● 年110万円を超える場合は贈与税申告をする
● 申告するのはもらった人
● 現金の手渡しでも申告を

(今回のソーゾク博士=元国税専門官・ライター小林義崇さん、構成=相続会議編集部)

(記事は朝日新聞土曜別刷り紙面「be」に掲載した内容を基に掲載しています。2022年5月1日時点での情報に基づきます)