結婚・子育ての一括贈与は1000万円まで非課税に 注意点も解説
結婚資金や出産費用の一括贈与は、条件を満たせば最大1000万円まで非課税となります。意外な対象範囲や手続き、注意点などをまとめました。
結婚資金や出産費用の一括贈与は、条件を満たせば最大1000万円まで非課税となります。意外な対象範囲や手続き、注意点などをまとめました。
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「結婚・子育て資金の一括贈与」とは、親や祖父母から、18歳以上50歳未満の子や孫へ、将来結婚や子育てに使うお金を、非課税で贈与できる仕組みです。非課税限度額は、受贈者(贈与を受ける人)1人につき、1000万円(結婚に関する支払いは300万円)までです。
手続きは金融機関の窓口で行います。親や祖父母は金融機関と管理契約を結び、その金融機関にある子や孫名義の口座に、一括で贈与資金を入金します。子や孫は結婚や子育てにお金を使ったことを証明する領収書等を提出すれば、非課税でお金を引き出せます。
目的外で引き出したお金には贈与税がかかります。子や孫が50歳になるなどの理由で契約が終了したときも、その口座に残っていたお金に贈与税が課されます。
契約期間中に贈与者である親や祖父母が亡くなるケースもあるでしょう。そのときに、口座に残っている金額(管理残額)は相続等により受け取ったものとみなされ、相続税の課税対象となります。
相続税法の規定で、法定相続人でない孫が負担する相続税は、税額が2割加算されます。法改正前は、この制度で受け取った相続分(管理残額)に関しては2割加算の対象外でしたが、改正後の2021(令和3)年4月1日からは相続税額の2割加算の規定が適用されるようになりました。
なお、結婚・子育て資金口座の開設(契約)は、2025年3月31日までの期間限定です。次章は専用口座開設から、結婚・子育て資金の支払いを受けるまでの流れを詳しく説明します。
この制度を利用して、結婚・子育て資金を非課税で受け取るには、取扱金融機関で、次の手続きが必要です。
まずは受贈者名義の専用口座を開設します。
口座開設等を行った金融機関を経由して、信託や預入などをする日(通常は専用口座の開設等の日)までに、結婚・子育て資金非課税申告書を、受贈者の納税地の税務署に提出します。
贈与者から金融機関にある受贈者の口座に入金します。入金方法は「信託受益権の付与(信託銀行)」「贈与する金銭の振込み(銀行など)」「贈与する金銭で有価証券等を購入(証券会社など)」の方法があります。
金融機関の口座からの払出には二つの方法があります。
① 支払ったあとに、領収書等を金融機関に提出して払出しを受ける。
② これから支払う金額の請求書等を金融機関に提出して払出しを受ける。
制度の対象となる結婚・子育て資金には、どんなものが当てはまるでしょうか。披露宴や出産以外にも、幅広い項目が認められています。
① 挙式費用、衣装代等の婚礼(結婚披露)費用(婚姻日の1年前以降に支払われるもの)
② 家賃、敷金等の新居費用、転居費用(一定の期間内に支払われるもの)
③ 不妊治療・妊婦健診の費用
④ 分べん費等・産後ケアの費用
⑤ 子の医療費、幼稚園・保育所等の保育料(ベビーシッター代を含む)など
※(1)は300万円まで。(2)は(1)と合計で1,000万円まで
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相続の相談が出来る税理士を探す結婚資金や出産・子育て資金の贈与について、実際にかかった金額を随時贈与するなら、原則として贈与税は非課税となります。例えば、披露宴は元々、家のイベントとみなされるため、親や祖父母が費用を負担しても贈与とはならないのが一般的です。
ただし、今後かかるであろう数年分の費用を一括で贈与された場合、すぐに使うわけではない部分の金額は、贈与税の対象となります。
この制度は、親や祖父母が認知症などにならないうちに、目的がはっきりした資金を、非課税枠を使ってあらかじめ贈与しておけるというものです。
一括贈与には、将来かかることが予想される結婚・子育て資金を、自分の意思で子や孫に贈与しておけるメリットがあります。この制度を利用すれば、自分が認知症や死亡で金銭の支払いができなくなった場合にも、結婚・子育て資金を負担してあげられます。
一方で、制度の活用には注意点もあります。まず、受贈者となる子や孫には所得要件があり、前年の合計所得金額が1,000万円以下の場合に利用できます。また、受贈者が50歳になったときには契約は終了し、残額には贈与税が課されます。
さらに、契約期間中に贈与者が死亡した場合には、口座の残額(管理残額)は相続税の対象となります。
日本では少子化が進んでいますが、その理由に「お金がなくて、そもそも結婚できない」「子どもは欲しいが子育てにはお金がかかる」「不妊治療にはお金がかかる」といったものがあります。
こういった悩みや不安に対して、親や祖父母のお金を使ってもらいたいというのが、制度が導入された理由のひとつでしょう。ただし、実際の運用では、資産家の相続対策に使われてしまうことも予想されるため、受贈者の所得制限や、贈与者死亡時にはすぐに相続税の対象になる、という運用になっているものと思われます。
この制度を利用したあとに、「お金をあげすぎた。解約したい」といっても、一度結んだ契約は、原則として取り消せません。また贈与者の死亡や契約終了によって、相続税や贈与税がかかることになり、非課税の恩恵を受けられないこともあります。他の子や孫への贈与等とのバランスを考えることも必要です。もしも契約を交わす前に不安を感じたら、ささいなことでも税理士に相談してみてください。
(記事は2024年2月1日時点の情報に基づいています)
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