目次

  1. 1. ペットへの遺産相続はできる?できない? 
  2. 2. 飼ってもらう代わりに財産を残す負担付遺贈
  3. 3. 生前に贈与内容を契約する負担付死因贈与契約
  4. 4. 信託という方法も
  5. 5. まとめ

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高齢者がペットを飼育する際に気がかりになるのが、飼い主よりもペットの方が長生きをする場合です。飼い主は、自分の死後もペットが今と同じように飼育してもらえるのか、心配になるかもしれません。ペットの生活を守るため、相続や新しく世話をしてくれる人の指名など、生前からできることはあるのでしょうか。ペットへの相続の可否と、新しい飼い主を指名する際の注意点について解説します。

結論から言うと、日本では人以外に財産を相続することはできません。ペットは大切な家族ですが、法的には「動産」という扱いになり、ペットに直接金銭などを相続するのは不可能です。それでは残されたペットのことが心配だという人もいるでしょう。そのために、「負担付遺贈」や「負担付死因贈与契約」があります。

負担付遺贈とは、財産を受け取る受贈者に一定の義務を負ってもらう見返りに財産を贈るというものです。例えば、自分が亡くなった後、子どもや孫に住宅ローンを引き続き返済してもらう代わりにその住宅を相続させる、という行為は負担付遺贈にあたります。

 ペットの負担付遺贈は、残されたペットの飼育をしてもらう代わりに、飼育を引き受けた人に財産を残すというものです。この場合、生前にペットの新しい飼い主をあらかじめ決めておく必要があります。そのうで遺言などで誰に何を依頼して、何を遺贈するかをしっかり明記しておかなければなりません。

 ただし、注意点もあります。遺贈は一方的に遺言をするだけでできるため、受贈者が受け取りを放棄することもできる点です。遺贈を放棄する場合、受贈者は財産を受け取れませんが、ペットの飼育も拒否できます。

 もし負担付遺贈のデメリットをカバーしたいのならば、「負担付死因贈与契約」を検討する必要があります。

負担付死因贈与契約は財産を贈る贈与者と、受け取る受贈者が、生前から贈与内容について契約を交わすものです。一方的に遺言をするだけでもできる負担付遺贈と違い、契約なので特段の事情がない限り撤回ができません。

そのため、負担付遺贈では自分の死後、ペットの飼育を本当に請け負ってもらえるか心配という場合は負担付死因贈与契約をお勧めします。

負担付死因贈与契約を結ぶ際は、口頭で約束を交わすだけでなく、お互いにきちんと書面にして残しておきましょう。

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自分の死後、ペットの飼育を誰かに依頼したいのならば、負担付贈与、負担付死因贈与契約という2つの方法があります。ただ、これらの方法では元の飼い主が満足するレベルで受贈者がペットを世話してくれるのかまでは確認ができません。

しかし、その心配は「信託」を利用することで解消可能です。

信託では、元の飼い主を「委託者兼当初受益者」、飼育を引き受けてくれる人を「受託者」とする信託契約を結びます。併せて、どのペットの飼育をお願いするかの取り決めを行い、飼育費用を信託財産として専用の口座に入れておきます。

受託者はペットの世話を引き受ける対価として、信託財産から飼育費用を受け取ることができます。

信託契約では信託を開始する条件や、どのような飼育を希望するかも指定することができます。例えば死亡時に限らず、飼い主が介護施設に入った時期を信託開始時期とすることも可能です。またペットの死後、葬儀方法を指定することもできます。

信託財産がきちんとペットのために使われるか心配な場合は、第三者の信託監督人を置きます。そうすることで、受託者が確実にペットの世話をしているかを監視できるのです。

なお、委託者兼当初受益者が亡くなった場合は、元の飼い主の相続人が第二受益者となり、信託契約は続行します。

この方法であれば確実にペットの世話を頼むことができますが、信託契約を結ぶ際に司法書士などの専門家に支払う経費や信託監督人を依頼するための費用もかかります。費用対効果を考えてから利用を決めましょう。

高齢になってからペットを飼い始める場合、ペットの方が長生きした場合の備えも必要です。元気なうちに、ペットの世話について家族と話し合っておくことをお勧めします。

(記事は2020年2月1日時点の情報に基づいています)

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