目次

  1. 1. 遺留分の基礎知識
  2. 2. 遺留分に関する相続トラブルのよくあるパターン
    1. 2-1. 遺言書による遺産配分が偏っている
    2. 2-2. 一部の相続人のみに対して生前贈与が行われた
    3. 2-3. 相続財産や贈与財産の評価に争いがある
    4. 2-4. 遺言書の内容を覆すことを他の相続人が拒絶する
    5. 2-5. 遺留分侵害額請求権の消滅時効を援用される
  3. 3. 遺留分侵害額請求の方法・手続き
    1. 3-1. 口頭・メールなどでの請求
    2. 3-2. 内容証明郵便による請求
    3. 3-3. 遺留分侵害額の請求調停の申し立て
    4. 3-4. 遺留分侵害額請求訴訟の提起
  4. 4. 遺留分侵害額請求を弁護士に依頼するメリット
  5. 5. まとめ|遺留分は相続人の権利、遠慮せずに請求しましょう

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遺留分とは、兄弟姉妹以外の相続人に認められた、相続できる財産の最低保障額を意味します(民法1042条1項)。
具体的には、被相続人の配偶者と子、さらに子がいない場合には直系尊属(両親など)に遺留分が認められます。

遺留分割合は、故人の父母や祖父母など直系尊属のみが相続人の場合は法定相続分の3分の1、それ以外の場合は法定相続分の2分の1です。
遺贈や生前贈与によって、他の相続人に財産が多く与えられた結果、遺留分割合を下回る遺産しか相続できなかった場合、遺留分の侵害が発生します。

遺留分が問題になる相続トラブルの主なパターンとしては、以下の例が挙げられます。

遺言書で一部の相続人を優遇するような遺産配分が指定された場合、それ以外の相続人について遺留分侵害が発生することがあります。
例えば、「長男にすべての遺産を相続させる」といった内容の遺言書は、遺留分侵害を発生させるものの典型例です。

生前贈与によって一部の相続人が優遇された場合にも、遺留分侵害が発生することがあります。
相続人に対する生前贈与は相続開始前10年間、相続人以外に対する生前贈与は相続開始前1年間に行われたものが、遺留分侵害額請求の対象です(民法1044条1項、3項)。

例えば1000万円の相続財産を、相続人である子AとBの2人で500万円ずつ均等に分けたものの、Aだけが相続開始の5年前に5000万円の生前贈与を受けていたとします。
この場合、1000万円の相続財産に5000万円の生前贈与を加えた6000万円が、遺留分計算の基礎となります。
したがって、Bの遺留分は1500万円となるところ、Bは500万円しか遺産を相続できていないので、Bの遺留分が1000万円分侵害されたことになるのです。

一部の相続人だけに生前贈与があった場合に遺留分侵害になる場合もあります
一部の相続人だけに生前贈与があった場合に遺留分侵害になる場合もあります

遺留分侵害に関しては、相続財産や贈与財産の評価も重要になります。
特に不動産など、絶対的な評価方法が存在しない資産が相続や生前贈与の対象となった場合、評価額の如何によって、遺留分侵害の有無や金額が変わるからです。

例えば、子Aが不動産Xを、子Bが1000万円の預貯金をそれぞれ相続したとします。
このとき、不動産Xの評価額が3000万円であったとすれば、Bの遺留分額は1000万円なので、ぎりぎり遺留分侵害が発生していません。

これに対して、不動産Xの評価額を4000万円とした場合、Bの遺留分額は1250万円となり、Bの遺留分が250万円分侵害されたことになります。さらに、不動産Xの評価額を5000万円とした場合、Bの遺留分額は1500万円となり、Bの遺留分侵害額は500万円に増加します。

相続財産の不動産の評価額の違いによって遺留分が発生するケース
相続財産の不動産の評価額の違いによって遺留分が発生するケース

このように、不動産をいくらと評価するかによって、遺留分侵害の有無や金額に大きな影響が生じます。
そのため、遺留分侵害を主張する側とその相手方で、財産の評価に関して争いが生じることがあるのです。

遺留分侵害額請求を行うと、遺言書や生前贈与の内容を、少なくとも一部覆すことになります。
そのことが「けしからん」と言わんばかりに、正当な遺留分侵害額請求を受けても、頑として支払いに応じない相続人が稀に存在します。
このような態度の相続人が出てきた場合には、訴訟などを通じて遺留分侵害額請求を行うことになる可能性が高いでしょう。

遺留分侵害額請求を行ったところ、相手方から消滅時効を援用されるケースがあります。
遺留分侵害額請求権の時効期間は、相続の開始および遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知った時から1年です(民法1048条)。
消滅時効の完成の有無が争われる際には、権利者が相続の開始と贈与・遺贈の事実を知った時期などが、主な争点となるでしょう。

遺留分侵害額請求を行うと、被相続人の財産を多く受け取った者から、金銭の支払いを受けることができます(民法1046条1項)。
遺留分侵害額請求は、相手方との関係性や、これまでのやり取りの経緯などを踏まえて、段階的に以下の手順で行うとよいでしょう。

相手方との関係性が良好であれば、口頭・メールでカジュアルに請求することも考えられます。

相手方と疎遠な場合や、口頭・メールでの請求を阻止された場合には、正式な請求であることを示すために内容証明郵便を送付しましょう。
なお、内容証明郵便による請求には、消滅時効の完成を6カ月間猶予する効果があるため(民法150条1項)、時効完成が迫っている場合には、いったん内容証明郵便を送付しておきましょう。

調停は、調停委員の仲介の下で、和解による解決を目指す手続きです。
当事者間での請求交渉がうまくまとまらない場合には、調停手続きの利用が有力な解決手段となります。
参考:遺留分侵害額の請求調停|裁判所

和解による解決が望めない場合には、遺留分侵害額請求訴訟を提起し、裁判所の判決による強制的な解決を求めましょう。

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遺留分侵害額請求を行う場合、以下の理由から、弁護士へのご依頼をお勧めします。

  • 相手方にプレッシャーがかかり、任意に遺留分侵害額の支払いを受けられる可能性が高い
  • 交渉、調停、裁判の手続きを代行してもらえるため、労力が軽減される
  • 適正な遺留分侵害額を計算したうえで請求を行うことができる
  • 示談のポイントについてアドバイスを受けられる
  • 調停や訴訟の手続きも任せられるので安心

一日も早く弁護士にご依頼いただくことが、遺留分問題の早期解決に繋がります。
相続の内容にご不満をお持ちの方は、すぐにでも弁護士にご相談ください。

遺言書や生前贈与の結果として、相続できた遺産が非常に少なかった場合には、遺留分侵害が発生している可能性があります。
遺留分侵害額の計算や、実際の遺留分侵害額請求の手続きは、弁護士にご依頼いただくのがスムーズですので、ぜひお早めにご相談ください。

被相続人の意思に背くようで抵抗があるという方もいらっしゃいますが、遺留分は相続人に認められた正当な権利です。もし遺留分の侵害が疑われる場合には、今後の方針を決める判断材料とするためにも、一度弁護士にご相談されてはいかがでしょうか。

(記事は2021年12月1日時点の情報に基づいています)

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