目次

  1. 1. 遺産を独り占めされるパターン
    1. 1-1. 遺言書に「長男に全部相続させる」と書いてあった場合
    2. 1-2. 親と同居していた長男が遺産分割協議に応じない
    3. 1-3. 父の遺産を、母が独り占めするケース
  2. 2. すでに独り占めされ使いこまれた場合
    1. 2-1. 銀行口座を凍結する
    2. 2-2. 取引履歴を調べる
    3. 2-3. 使い込みの有無を判断する
    4. 2-4. 使い込まれた分を取り戻す
    5. 2-5. 実家などの不動産を独り占めされた場合
  3. 3. 遺産を独り占めされたら、弁護士に相談する
    1. 3-1. 弁護士が対応してくれること
    2. 3-2. 弁護士に依頼するメリット
  4. 4. 同意のない独り占めはトラブルのもと、絶対に避けよう
  5. 5. まとめ

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特定の相続人に遺産を独り占めされるパターンには、いくつかあります。

まずは遺言書により、「長男に遺産を全部相続させる」と指定されているケースです。かつての家督相続(跡取りの長男に遺産全部を相続させるという旧民法の遺産相続方法)の名残がある地域でよくあるケースです。

この場合、まずは遺言書が有効かどうかを確認しましょう。自筆証書遺言の場合、要式を満たさず無効になるケースがよくあります。また遺言書が偽造、変造されている恐れも。遺言書が無効なら、遺言書を無視できます。

遺言書が有効だった場合には、指定通りに長男に遺産が相続されます。その場合でも、他の子どもや配偶者は長男へ「遺留分」を請求できます。遺留分とは、故人の兄弟姉妹以外の相続人に最低限保障された一定割合の相続財産がもらえる権利のことを言います。

ただ遺留分行使には時効があるので、早めの対応が重要です。遺留分侵害額請求は、相続開始と不公平な遺言を知ってから1年以内に行わねばなりません。確実に証拠を残すため、内容証明郵便で遺留分を請求しましょう。

関連記事:遺留分侵害額請求 弁護士に依頼すると費用はいくら? 弁護士の選び方やメリットも解説

遺言書がなくても、同居していた長男が遺産を抱え込んで分割に応じないケースが多々あります。

そういった場合には、遺産分割には法定相続分と呼ばれる分け方の目安があることを伝え、
納得させましょう。長男が「家に住み続けたいから、不動産を分けられない」と主張するなら、代償金の支払いを要求してみてください。

どうしても合意できない場合には、家庭裁判所で遺産分割調停を申し立てましょう。調停では調停委員が長男を説得してくれます。それでも合意できなければ最終的に「審判」となり、裁判官が遺産分割の方法を決定してくれます。審判では「法定相続分」に応じて遺産が分割されるので、独り占めは認められません。

親が亡くなるとき、財産を持つ父親が母親よりも先に亡くなるケースが多いでしょう。

そんな時に、残される母親の身を案じた父親が「妻に全部相続させる」との遺言書を残すことがあります。子どもたちがその遺言の内容に納得するなら問題ありませんが、納得ができなければ前述のように遺留分を請求することもできます。

遺言書がない場合でも、遺産分割協議で子どもたち全員が合意した上で、すべての財産を母親に相続させることがあります。

しかし、この場合、母親が亡くなった後の二次相続の段階で、子どもたちで争いになる恐れがあります。母親もいる一次相続の段階であれば、母親への配慮もあって、冷静な話し合いが可能になりやすいものです。しかし子どもたちだけで話し合うと、感情的になってしまいがちです。

また、一次相続で母にすべて財産を相続すると、二次相続での相続税が非常に高額になる恐れがあります。一次相続より、相続人の数が減るので、基礎控除(一人あたり600万円)が減りますし、子どもがほかの場所に住居を構えていたら「小規模宅地等の特例」も使えません。

結果、母親に遺産をすべて相続したゆえにトータルの相続税が高くなってしまう可能性があります。遺産分割では二次相続まで考えた上で、判断する必要があるといえるでしょう。

遺言書もないのに、特定の相続人が遺産を使い込んで独り占めしてしまうケースも多々あります。そんなときには、以下のように対処しましょう。

預金を使い込まれている場合には、まずは預金口座を凍結しましょう。放っておくとどんどん出金される恐れがあります。銀行に「名義人が死亡した」と通知すれば口座を凍結してもらえるので、早めに連絡しましょう。

次に預金の取引履歴(入出金履歴)を調べましょう。銀行に申請すれば、指定した期間の取引履歴を出してくれます。
戸籍謄本や本人確認書類等の必要書類をもって金融機関へ行き、取引履歴を出してもらってください。自分で対応するのが難しければ弁護士に依頼する方法もあります。

銀行から受け取った取引履歴の内容をみて、使いこみがあったかなかったかを判断しましょう。以下のような場合、使い込みがあった恐れが高くなります。

  • 死後に出金されている
  • 1度に数十万円以上など、不自然に大きな金額が引き出されている
  • 数日にわたって継続的に出金されている
  • 相続人名義のクレジットカードの引き落としがある

一方、生前に生活費レベルの出金がある程度では「使いこみ」とはいいにくいでしょう。自分で判断するのが難しければ、弁護士に相談してみてください。

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使いこみが発覚したら、使い込まれた財産を取り戻しましょう。前述のように、一定の相続人には、最低限保障された一定割合の相続財産がもらえる権利である遺留分があります。遺留分は遺言書よりも優先される権利ですので、堂々と主張しましょう。

まず、任意に返してもらえるなら、話し合いによって返還を受けてください。話し合いができない場合、争いのレベルが小さければ、家庭裁判所の遺産分割調停で解決できる可能性もあります。

一方、金額が大きく争いの程度が大きければ、「不当利得返還請求」「損害賠償請求」などの訴訟をしなければ解決できません。訴訟になったら弁護士に依頼しましょう。

長男が実家の不動産を独り占めしている場合、必ずしも出ていかせることはできません。遺産分割協議や調停で実家の分け方を決めましょう。

長男が実家を取得するなら、他の相続人へ「代償金」を払わねばなりません。任意に代償金を払わないなら家庭裁判所で調停、審判を申し立ててください。長男に代償金の支払い能力がない場合、家を売却して相続人が法定相続分に従ってお金を受け取ることができます。最終的に長男が売却に応じなくても「審判」になれば家の競売命令が出るので、法定相続分に従ったお金を取得できるでしょう。

遺産を独り占めにされて困ったときには、早めに弁護士に相談するようお勧めします。

弁護士には以下のようなことをお願いできます。

  • 遺言書があるかどうかの調査
  • 遺言書が有効か無効かの判断
  • 遺言書の無効を確認するための手続き
  • 預金など遺産内容の調査、取引明細書の取得
  • 取引履歴の解析、使いこみの有無や使い込まれた金額の判断
  • 遺産分割協議の代理人
  • 遺産分割協議書の作成
  • 遺産分割調停、審判の代理人
  • 遺留分侵害額請求の代理人

弁護士に各種手続きの代理を依頼すると、各種の手続きを有利に進められます。

遺産の独り占めをされたとき、公正な方法で取り戻すには法的な知識やスキルが必須です。損をしないように、自己判断で動く前に弁護士に依頼してください。

また遺産相続では親族同士のやり取りとなるので、どうしても感情的になってしまうものです。弁護士であれば「第三者」としての客観的な視点から動けますし、相手も冷静に対応しやすくなります。自分たちで話し合うより、穏便に解決しやすくなる点もメリットとなります。

ここまで説明してきたことからもわかるように、遺産の独り占めはトラブルのもとです。特に特定の相続人が独占することに他の相続人すべての同意がない場合は、なおさらです。

「跡取りの長男が遺産すべてを独り占めするのは当然」という家督相続の考え方も今や昔であり、通用しません。それでも遺産の独り占めを強行しようとすれば、「不当利得返還請求」「損害賠償請求」などの訴訟を起こされ敗訴してしまい、いわば「バチに当たる」ことになってしまうでしょう。さらに親族間の仲も引き裂かれるという悲しい末路をたどる可能性も高まります。他の相続人の同意のない遺産の独り占めは絶対に避けましょう。

遺産を独り占めされてしまったら、まずは遺言書があるかどうかを確認しましょう。遺言書がない場合、独り占めしている相続人に対し、公正に遺産分割するよう求める必要があります。

自分たちで話し合おうとすると、トラブルが悪化してどうしようもなくなるケースも少なくありません。困ったときには弁護士に相談してみてください。

(記事は2022年12月1日時点の情報に基づいています)

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