遺産を独り占めされてしまったときにすべきこと 使い込みを取り戻す方法も

相続の際、特定の相続人が遺産を独り占めしようとしてトラブルになってしまうケースが少なくありません。よくあるのが、親と同居していた長男が預金を独り占めするパターン。親の預金内容の開示に応じなかったり勝手に使われたりしたら、他の相続人はどうすればいいのでしょうか? 話し合いで解決できなければ、やむを得ず訴訟をしなければならない可能性もあります。今回は遺産を独り占めされたときの対処方法を解説します。
相続の際、特定の相続人が遺産を独り占めしようとしてトラブルになってしまうケースが少なくありません。よくあるのが、親と同居していた長男が預金を独り占めするパターン。親の預金内容の開示に応じなかったり勝手に使われたりしたら、他の相続人はどうすればいいのでしょうか? 話し合いで解決できなければ、やむを得ず訴訟をしなければならない可能性もあります。今回は遺産を独り占めされたときの対処方法を解説します。
特定の相続人に遺産を独り占めされるパターンには、いくつかあります。
まずは遺言書により、特定の相続人に「遺産を全部相続させる」と指定されているケースです。
この場合、まずは遺言書が有効かどうかを確認しましょう。自筆証書遺言の場合、要式を満たさず無効になるケースがよくあります。また遺言書が偽造、変造されている恐れも。遺言書が無効なら、遺言書を無視して通常とおり遺産分割協議により遺産を分け合えます。
遺言書が有効だった場合には、指定通りに長男に遺産が相続されます。その場合でも、他の子どもや配偶者は長男へ「遺留分」を請求できます。遺留分とは、兄弟姉妹以外の相続人に最低限認められる遺産取得分。
ただ遺留分行使には時効があるので、早めの対応が重要です。遺留分侵害額請求は、相続開始と不公平な遺言を知ってから1年以内に行わねばなりません。確実に証拠を残すため、内容証明郵便で遺留分を請求しましょう。
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遺言書がなくても、同居していた長男が遺産を抱え込んで分割に応じないケースが多々あります。
そういった場合には、遺産は法定相続分に従って分けなければならないルールを伝え、納得させましょう。長男が「家に住み続けたいから、不動産を分けられない」と主張するなら、代償金の支払いを要求してみてください。
どうしても合意できない場合には、家庭裁判所で遺産分割調停を申し立てましょう。調停では調停委員が長男を説得してくれます。それでも合意できなければ最終的に「審判」となり、裁判官が遺産分割の方法を決定してくれます。審判ではほとんど必ず「法定相続分」に応じて遺産が分割されるので、独り占めは認められません。
遺言書もないのに、特定の相続人が遺産を使い込んで独り占めしてしまうケースも多々あります。そんなときには、以下のように対処しましょう。
預金を使い込まれている場合には、まずは預金口座を凍結しましょう。放っておくとどんどん出金される恐れがあります。銀行に「名義人が死亡した」と通知すれば口座を凍結してもらえるので、早めに連絡しましょう。
次に預金の取引履歴(入出金履歴)を調べましょう。銀行に申請すれば、指定した期間の取引履歴を出してくれます。
戸籍謄本や本人確認書類等の必要書類をもって金融機関へ行き、取引履歴を出してもらってください。自分で対応するのが難しければ弁護士に依頼する方法もあります。
銀行から受け取った取引履歴の内容をみて、使いこみがあったかなかったかを判断しましょう。以下のような場合、使いこみがあった恐れが高くなります。
一方、生前に生活費レベルの出金がある程度では「使いこみ」とはいいにくいでしょう。
自分で判断するのが難しければ、弁護士に相談してみてください。
使いこみが発覚したら、使い込まれた財産を取り戻しましょう。任意に返してもらえるなら、話し合いによって返還を受けてください。
話し合いができない場合、争いのレベルが小さければ、家庭裁判所の遺産分割調停で解決できる可能性もあります。
一方、金額が大きく争いの程度が大きければ、「不当利得返還請求」「損害賠償請求」などの訴訟をしなければ解決できません。訴訟になったら弁護士に依頼しましょう。
長男が実家の不動産を独り占めしている場合、必ずしも出ていかせることはできません。遺産分割協議や調停で実家の分け方を決めましょう。
長男が実家を取得するなら、他の相続人へ「代償金」を払わねばなりません。任意に代償金を払わないなら家庭裁判所で調停、審判を申し立ててください。
長男に代償金の支払い能力がない場合、家を売却して相続人が法定相続分に従ってお金を受け取ることができます。
最終的に長男が売却に応じなくても「審判」になれば家の競売命令が出るので、法定相続分に従ったお金を取得できるでしょう。
長男が遺産を独り占めして困ったときには、早めに弁護士に相談するようお勧めします。
弁護士には以下のようなことをお願いできます。
弁護士に各種手続きの代理を依頼すると、各種の手続きを有利に進められます。
遺産の独り占めをされたとき、公正な方法で取り戻すには法的な知識やスキルが必須です。損をしないように、自己判断で動く前に弁護士に依頼してください。
また遺産相続では親族同士のやり取りとなるので、どうしても感情的になってしまうものです。弁護士であれば「第三者」としての客観的な視点から動けますし、相手も冷静に対応しやすくなります。自分たちで話し合うより、穏便に解決しやすくなる点もメリットとなります。
遺産を独り占めされてしまったら、まずは遺言書があるかどうかを確認しましょう。遺言書がない場合、独り占めしている相続人に対し、公正に遺産分割するよう求める必要があります。
自分たちで話し合おうとすると、トラブルが悪化してどうしようもなくなるケースも少なくありません。困ったときには弁護士に相談してみてください。
(記事は2020年11月1日時点の情報に基づいています)
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