目次

  1. 孫への生前贈与が非課税になる場合
    1. (1)必要な入学金・学費等は非課税
    2. (2)毎年の贈与は、110万円まで非課税
    3. (3)相続時精算課税制度を利用
    4. (4)贈与税の非課税制度を利用する
  2. 教育資金の一括贈与制度とは
  3. 塾や留学費用も対象?教育資金の範囲
    1. (1) 学校等に直接支払うもの
    2. (2) 学校等以外に対して直接支払うもの
  4. 非課税にならないケースに注意
  5. 所得要件・対象年齢を再確認
    1. (1)受贈者には所得要件がある
    2. (2)受贈者が23歳以上になると、教育資金の範囲が限られる
    3. (3)30歳で契約終了。残額には贈与税が課される
    4. (4)相続税の対象になることがある

贈与とは、あげる人(贈与者)ともらう人(受贈者)との契約です。「あげます」「ありがとう。もらいます」というやり取りがあれば、原則として口約束でも成立します。ですから、祖父母は孫に、何を贈与しても構わないと言えます。

一方、個人間の贈与では受け取った側に「贈与税」がかかります。親族間でも、一定額以上のお金や資産の贈与があったときには、贈与された側に課税されるのです。

まずは贈与税のかかり方に着目して、課税、非課税のポイントを見ていきます。

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親や祖父母などの扶養義務者から、子や孫がもらった教育費や生活費に関し、「通常必要と認められるもの」については、そもそも贈与税の課税対象になりません。当然の費用負担をしているから、贈与税の対象となる贈与ではないという解釈です。

贈与税の対象とならない「教育費」とは、子や孫を教育する上で通常必要と認められる学資、教材費、文具費等を指します。通学のための交通費(定期券代など)や学級費、修学旅行参加費等も対象です。また「生活費」とは、日常生活を営むのに必要な費用で、治療費や養育費等も含みます。

ただし、たとえば数年分の教育費を一括で贈与された場合、すぐに教育費として充当されない部分の金額は、贈与税の対象となります。

暦年贈与(通常の贈与、1年ごとの合計額で申告が必要)の場合、受け取った金額の合計が基礎控除の110万円を超えた場合には、受け取った人に申告納税の義務が発生します。複数の人から贈与を受けている場合は、合算して税額を計算します。

合計額が年間110万円以内なら、非課税になります。贈与の税率は、直系尊属(祖父母や父母など)からの贈与の場合の特例税率と、それ以外の一般税率があり、特例税率の方が少し低くなっています。

贈与税の特例税率

たとえば、孫が祖母から500万円相当の暦年贈与を受けて、他に贈与を受けていない場合、孫が支払う贈与税額は以下の通りです。

(500万円-110万円)×15%-10万円=48万5,000円

贈与税は、税務署に確定申告をした後、申告した税額を納めます。

相続時精算課税制度は、父母や祖父母から遺産を前渡しで子や孫に引き継ぐ制度です。累計で2500万円までの贈与には贈与税がかからない代わりに、相続時には贈与した財産が、亡くなった人の相続財産に加えられて、相続税を計算する制度です。

主な特徴は以下の通りです。

①60歳以上の父母や祖父母から、20歳以上の子や孫への贈与が対象

②父親から子A、祖母から孫Bのように、1対1の関係で適用される

③制度を選択すると、利用した関係の間では通常の贈与(暦年贈与)は適用されない

④一度選択すると、取り消しできない

⑤制度を利用したあとは、贈与があるたび翌年3月15日までに申告する

⑥累計で2,500万円まで非課税。2,500万円超の部分には20%の贈与税が課される

⑦贈与する人(贈与者)が亡くなったときには、贈与された分を、他の相続税の対象となる財産と合算して、相続税の申告を行う

⑧この制度で納めた贈与税の総額と、支払うべき相続税額を比較して、相続税額の方が多ければ税金を追納する。逆に相続税額の方が少ないときには、すでに納めた税金(贈与税)が払い戻される。

親や祖父母から子や孫への贈与については、以下の目的に使う資金であれば、今後かかる費用についても、一定額まで非課税で贈与できます。

ただし、非課税で利用できるのはあらかじめ決められた目的に限られること、期限が決められていること、贈与者が死亡したり期限を過ぎたりすると、未使用の金額に対して贈与税や相続税がかかる可能性があることなどの注意点があります。

以下の制度を利用した場合、一度決めた贈与を取り消すことはできません。利用に際しては制度をよく調べて、慎重に検討しましょう。

①教育資金の贈与の特例

親や祖父母から、30歳未満の子や孫へ「教育資金」を非課税で贈与できる制度。非課税限度額は最高1,500万円です。

②住宅取得等資金の贈与の特例 

親や祖父母から、20歳以上の子や孫へ「住宅購入等資金」を非課税で贈与できる制度。非課税限度額は、条件により700万~3,000万円です。

③結婚・子育て資金の贈与の特例

親や祖父母から、20歳以上50歳未満の子や孫へ「結婚・子育て資金」を非課税で贈与できる制度。非課税限度額は1,000万円です。

以上のうち、今回は「教育資金の贈与の特例」について、次章で詳しく解説します。

親や祖父母から30歳未満の子や孫へ「教育資金」を非課税で贈与できる制度です。非課税限度額は、受贈者1人につき、1,500万円(学習塾など学校以外への支払いは500万円)です。

手続きは金融機関の窓口で行います。親や祖父母は贈与した資金の管理契約を金融機関と結び、子や孫名義の口座に一括で入金します。子や孫は教育資金の領収書や請求書を提出することで、贈与税非課税でお金を引き出せます(目的外の引き出しには贈与税がかかります)。子や孫が未成年の場合、親などの保護者が手続きを行います。

受贈者である子や孫が30歳になったときには教育資金口座にかかる契約は終了し、口座に残っていたお金は贈与税の対象となります。また、契約期間中に贈与者である親や祖父母が死亡した場合、その時点の残額に対して相続税がかかることがあります(受贈者が23歳未満である場合や、2019年4月1日以降に受け入れた資金等がない場合は除く)。

教育資金の一括贈与制度

なお、教育資金口座の開設(契約)は、2021年3月31日までの期間限定です(ただし、将来、延長される可能性はあります)。

この制度の対象となる教育資金は、幅広い用途が対象になります。文部科学省の発表資料(2019年7月1日現在)では、以下のように定めています。

① 入学金、授業料、入園料、保育料、施設設備費又は入学(園)試験の検定料など

② 学用品の購入費や修学旅行費や学校給食費など学校等における教育に伴って必要な費用など

③ 教育(学習塾、そろばんなど)に関する役務の提供の対価や施設の使用料など

④ スポーツ(水泳、野球など)又は文化芸術に関する活動(ピアノ、絵画など)その他教養の向上のための活動に係る指導への対価など

⑤ ③の役務の提供又は④の指導で使用する物品の購入に要する金銭

⑥ ②に充てるための金銭であって、学校等が必要と認めたもの

⑦ 通学定期券代、留学のための渡航費などの交通費

(1)の非課税限度額は(2)との合計で1,500万円まで、(2)は500万円までとなっています。

※2019年7月1日以降に支払う③~⑤の金銭で、受贈者(子や孫)が23歳に達した日の翌日以降に支払われるものについては、教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受講するための費用に限る。

制度活用のメリットとしては、将来予想される教育資金を、自分が元気なうちに子や孫に非課税で贈与しておける点があります。自分が認知症や死亡により金銭の支払いができなくなった場合でも、教育資金を負担してあげられるのです。

ただし、非課税枠の全額が必ずしも非課税になるわけではありません。非課税となる教育資金の範囲内であること、証明するための領収書や請求書を提出することには注意が必要です。また、贈与者の死亡や、受贈者が30歳になって契約が終了するなどして非課税とならないケースもあります。

この制度を利用する上での注意点は以下のとおりです。

19年4月以降は、受贈者である子や孫の前年の合計所得金額が1,000万円以下の場合に利用できます。

①学校等に支払われる費用

②学校等に関連する費用(留学渡航費等)

③学校等以外では、教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練の受講費用のみ

30歳になったときには契約は終了し、残額には贈与税が課されます。ただし、30歳以降も学校等に在学中または教育訓練受講中であれば、残高があっても贈与税は課されません。その後、在学中・受講中ではなくなった年の年末または40歳になった場合には、その時点の残高に対して贈与税が課されます。

相続開始前3年以内に行われた贈与については、贈与者の相続開始日に、受贈者が23歳未満、または在学中または受講中である場合を除き、相続開始時の残高が相続財産に加算されます。

金融機関の方の話によると、この制度を利用したあとに、「お金をあげすぎた。解約したいのだが…」という申し出をいただくこともあるそうです。しかし、いったん結んだ契約は、原則として取り消すことはできません。また、使わずに残ってしまったお金には贈与税や相続税がかかることがあるので、他の子や孫への贈与等とのバランスを考えることも必要です。このため、利用する際には、制度をよく知った上で、誰にどのように資金援助するのか慎重な検討が不可欠です。税理士に相談して想いを形にしていくと、より適切な形の贈与にしていけるでしょう。

(注)贈与の年の1月1日に所定の年齢になっていることが条件になる場合と、契約時等にその年齢になっていることが条件になる場合があります。利用の際は、その他の条件を含めて、税務署や専門家にご確認ください。

(記事は2020年1月1日時点の情報に基づいています)