目次

  1. 1. 一次相続が未分割のうちに二次相続が発生した場合の相続税申告
    1. 1-1. 一次相続・二次相続でそれぞれ相続税申告が必要
    2. 1-2. 申告期限に遺産分割が間に合わない場合は、暫定的な申告を行う
    3. 1-3. 配偶者控除・小規模宅地の特例の取り扱いについて
  2. 2. 一次相続・二次相続それぞれについて、遺産分割協議書の作成が必要
  3. 3. 一次相続未分割での二次相続は、トラブルが生じやすい
  4. 4. 一次相続が未分割で二次相続が発生した場合、税理士・弁護士に相談を
  5. 5. まとめ|二次相続は税務・法務両面で慎重な対応が必要

父親が死亡し、その後まもなく母親が死亡した場合には、先行する父親についての相続(一次相続)と、後から発生した母親についての相続(二次相続)が二重に生じるケースがあります。
また、父親死亡時に遺産分割を怠っており、その状態で母親が死亡してしまったケースなどでも、同様の問題が発生します。

このような場合に、気を付けなければならないポイントの一つが「相続税申告」です。
一次相続と二次相続のそれぞれにおいて、相続税申告に関して注意すべき点を解説します。

一次相続と二次相続が同時に発生している場合でも、相続税申告は、それぞれに分けて行う必要があります。

一次相続については、一次被相続人が死亡時に有した遺産総額等を基準に、相続税を計算します。
これに対して二次相続では、二次被相続人が死亡時に有した遺産総額等に、一次相続によって二次被相続人(兼一次相続人)が取得する財産を加えたうえで、相続税を計算しなければなりません。

その他、各種特例の適用などについても、一次相続・二次相続の兼ね合いによって変わってくるので、トータルでの税額シミュレーションを行うことが大切です。

相続税申告は、各相続が発生したこと知った日の翌日から10カ月以内に行わなければなりません。
そのため、一次相続・二次相続のそれぞれについて、期限に間に合うように申告を行う必要があります。
もし申告期限までに遺産分割が完了しなかった場合には、暫定的な相続税申告を行いましょう。

具体的には、法定相続分どおりに遺産を相続したものと仮定して、いったん相続税申告を行います。
その後、実際の遺産分割の結果に合わせて「修正申告※」または「更正の請求※」を行い、相続税の追加で納付し、または還付を受けましょう。

※修正申告:申告した税額が過小であった場合に、正しい金額に修正して再申告し、不足額を追加で納付すること
※更正の請求:申告した税額が課題であった場合に、正しい金額に修正して再申告し、超過額の還付を求めること

遺産分割が終わっていないからといって、相続税申告を行わずにいると、「無申告加算税」や「重加算税」という重いペナルティを受けてしまうので要注意です。

相続税を軽減する効果のある特例として、「配偶者控除」と「小規模宅地等の特例」が知られています。

参考:配偶者の税額の軽減|国税庁
参考:相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)|国税庁

これらの特例の適用を受けるには、対象となる相続について、遺産分割が完了している必要があります。

遺産分割未了のまま相続税申告をせざるを得ない場合は、申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しましょう。
その後、相続税の申告期限から3年以内に遺産分割を行い、分割日の翌日から4カ月以内に「更正の請求」を行うと、相続税の還付を受けられます。

参考:相続財産が分割されていないときの申告|国税庁

一次相続・二次相続は、トータルでの結果を考えることが大切なので、遺産分割協議はまとめて行われることも多いでしょう。
ただし、遺産分割協議書については、一次相続・二次相続のそれぞれについて作成すべき点に注意が必要です。

遺産分割協議書を作成する際には、各相続における当事者の立場が明確になるような記載を心がけましょう。

【例】
● 一次相続の相続人が、二次相続の被相続人でもある場合、一次相続の遺産分割協議書において「相続人兼被相続人」と表記する
● 一次相続、二次相続の両方において相続人の場合、「相続人兼○○の相続人」と表記する(「○○」には、別の相続に係る被相続人を記載する)

遺産分割協議書を一次相続・二次相続で書き分けるのは、かなり複雑な作業になりますので、弁護士へのご相談をお勧めします。

一次相続に係る遺産分割が未了の状態で二次相続が発生した場合、遺産の分け方や相続税の課税関係が複雑になります。
また、親が2人とも亡くなってしまうと、兄弟間の仲裁役がいなくなり、遺産を巡る激しい対立が発生してしまいがちです。

そのため、一次相続・二次相続を同時に処理するケースでは、全体的にトラブルが発生しやすくなります。

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錯綜する一次相続・二次相続を、適切に処理・解決するためには、税務・法務に関する専門的知見を踏まえて対応する必要があります。

そのため、相続税申告については税理士に、遺産分割などの法律問題については弁護士に相談するとよいでしょう。
税理士・弁護士のどちらかに相談すれば、提携先として別の士業を紹介してもらえるケースも多いので、周囲の専門家に一度相談してみることをお勧めします。

一次相続の遺産が未分割のまま、二次相続が発生してしまうと、税務・法務の両面で複雑な問題が発生します。

適切な処理ができないと、本来よりも高額の税金が発生したり、遺産分割に関するトラブルが起こったりする危険があります。
そのため、一次相続と二次相続が同時に発生した場合には、早い段階で税理士や弁護士にご相談ください。

(記事は2021年10月1日時点の情報に基づいています)