相続税の申告漏れがあった場合、どんなペナルティがある?
相続税の申告は被相続人の死亡後10カ月以内という期限があります。この期限に遅れた場合や、申告したものの、漏れや誤りがあった場合、どんなペナルティが課されるのでしょうか。元東京国税局国税専門官のライターが解説します。
相続税の申告は被相続人の死亡後10カ月以内という期限があります。この期限に遅れた場合や、申告したものの、漏れや誤りがあった場合、どんなペナルティが課されるのでしょうか。元東京国税局国税専門官のライターが解説します。
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2019年12月に国税庁が発表した「平成30年事務年度における相続税の調査の状況」(以下「相続税調査状況資料」によると、1年間に全国の国税局や税務署は相続税の実地調査を12,463件実施し、そのうち10,684件で、相続税の申告漏れ等の違法行為に当たる非違がありました。この他、実地調査ではなく文書や電話などにより非違を指摘された件数は2,287件でした。
一方、国税庁による相続税の統計情報を見ると、相続税の税額が生じる課税件数は、税制改正により課税対象が拡大した平成27年以降、年間10万件から11万件程度で推移しています。つまり、相続税が発生した件数のうち、およそ10%程度が税務調査等で非違を指摘されたということです。
相続税調査状況資料では、申告漏れ財産の内訳も明らかにされています。申告漏れ相続財産の総額3,474億円のうち、もっとも金額が多いのが、「現金・預貯金等」の1,268億円です。続いて、「土地」が422億円、「有価証券」が388億円となっています。また、国税当局が把握した、申告漏れ等の非違があった海外資産の課税価格は、59億円でした。
現金・預貯金等の申告漏れを防ぐには、被相続人が利用していた預金口座を残さず把握することはもちろん、口座の明細からお金の流れを把握することも重要です。たとえば、相続開始前に多額の出金があった場合、そのお金が「どこの口座に振り込まれたのか」「どんな支払にあてられたのか」「現金として残っていないか」といったことを確認する必要があります。
相続税の申告をした後に、国税局や税務署から実地調査等により申告漏れを把握された場合、修正申告を求められます。このときに課せられる追徴税が「過少申告加算税」です。過少申告加算税は、本来納めるべき税額よりも少なく申告した場合、その差額に対して以下の税率で算定されます。
上記の表の「法定申告期限等から調査通知前まで」とは、税務署から調査の通知が来る前に、自主的に修正申告を行った場合を指します。この場合は過少申告加算税の対象外となりますから、申告漏れに対する追徴課税はありません。
次の「調査通知以後から調査による更正等予知前まで」は、税務調査の通知を受けた後、税務調査で指摘を受けるまでの間に自主的に修正申告をした場合です。たとえば、調査通知が来たことをきっかけに申告内容を見直し、誤りに気付いて修正申告をしたような場合が当てはまります。
最後の「調査による更正等予知の後」は、税務調査が行われ、具体的な指摘を受けた後に修正申告を出したケースをイメージしてください。この場合、もっとも高い税率で過少申告加算税が課せられます。
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相続の相談が出来る税理士を探す相続税の申告期限までに申告をしなかった場合、期限後に相続税の申告(期限後申告)を行う必要があります。このときに課せられる追徴税が「無申告加算税」です。
過少申告加算税と同様、無申告加算税も、期限後申告を行うタイミングによって税率が変わります。ただ、比較すると過少申告加算税よりも無申告加算税のほうが高いことが分かるでしょう。たとえば、調査通知の前に自主的に修正申告をすれば過少申告加算税はかかりませんが、同じタイミングで自主的に期限後申告をした場合、5%の無申告加算税がかかります。
申告漏れに気付いた場合や、申告期限に遅れてしまった場合は、できるだけ速やかに正しい内容で申告することをお勧めします。説明したとおり、過少申告加算税と無申告加算税のいずれも、もっとも税率が低くなるのは、国税局や税務署から調査通知が来る前に自主的に申告をしたケースです。たとえ期限内に相続税の申告を終えたとしても、申告内容を見直し、申告漏れ財産や計算間違いに気付いた場合は、速やかに修正申告をしましょう。申告手続きに不安があったり、期限内に終えたりすることに不安を感じる場合には、相続に詳しい税理士に早めに相談してみてください。
(記事は2020年1月1日時点の情報に基づいています)