目次

  1. 1. 寄与分とは?
    1. 1-1. 寄与分はもめることが多い
  2. 2. 寄与分を求める調停は2種類
  3. 3. 寄与分を求める調停と審判の流れ
    1. 3-1. 調停の流れ
    2. 3-2. 審判の流れ
    3. 3-3. 審判に不服があれば即時抗告できる
  4. 4. 寄与分の調停を申し立てる方法
  5. 5. 寄与分を認めさせる方法
  6. 6. 寄与分の調停、審判を弁護士に依頼するメリット
    1. 6-1. 法律的にきちんとした主張・立証ができる
    2. 6-2. 調停や審判手続きなどの対応を代行してもらえ、心理的な支えにもなる
    3. 6-3. 寄与分に限らずトータルでサポートしてもらえる
  7. 7. まとめ

寄与分とは、被相続人の財産維持または増加について特別の寄与をした相続人がいる場合に、その相続人に対して相続分以上の財産を取得させる制度をいいます。被相続人の介護に従事していたことを理由に寄与分を主張するケースが多く見られます。

他の相続人が被相続人の介護などに従事したことを尊重してくれて、従事した相続人の相続分を増やすことに賛成してくれるのであれば、話し合いでの解決も期待できるでしょう。しかし、他の相続人に被相続人の介護や事業を任せておきながら、いざ相続が発生すると「法定相続分どおりに均等に分けるべき」と主張する相続人も少なくありません。介護に従事した相続人からすると、このような主張は納得しがたいでしょう。そうなると話し合いでの解決は難しくなってきます。

相続人の間での話し合いで解決できない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てるしかありません。調停とは、調停委員会(原則として裁判官1名と調停委員2名の計3名)が仲介して当事者間の合意を成立させるための手続きです。

寄与分を求める調停には、「遺産分割調停」と「寄与分を定める処分調停」があります。「遺産分割調停」は寄与分を含めた遺産分割方法全般を決めるための調停、「寄与分を定める処分調停」は寄与分を決めるための調停です。どちらかを申し立てれば寄与分に関する話し合いができますが、両調停は併せて申し立てることが望ましく、その場合は併合して手続きが行われます。

調停を申し立てると、調停委員会が、当事者双方から事情を聴き、必要に応じて資料などを提出させた上で、解決案を提示したり、解決のために必要な助言をしたりして、合意を目指した話し合いが進められます。調停は、おおむね1カ月~1カ月半の間隔で平日に行われ、1回あたりの時間はおおむね2時間程度です。

話し合いがまとまらず、調停が不成立になった場合には、「審判」という手続きに移行します。審判手続きでは、裁判官が当事者双方から聞いた事情や提出された資料など一切の事情を考慮して、寄与分を認めるか、認める場合にはどの程度の寄与分を認めるかの判断を下すことになります。審判が確定すると、その内容に従って相続人が財産を取得することになります。

なお、審判に移行する場合、「遺産分割審判」と「寄与分を定める審判」の両方の申立てが必要です。そのため、どちらか一方の調停しか申し立てていない場合には追加で申し立てをしなければなりません。

審判に不服があれば、即時抗告をすることができます。即時抗告をした場合、遺産分割審判をした家庭裁判所を管轄する高等裁判所がその当否を判断することになります。家庭裁判所の裁判官とは異なる裁判官が判断するため、家庭裁判所で認められなかった主張でも認められる可能性はあります。

ただ、判断する裁判官が変わっても、きちんとした主張や立証ができていなければ認められない可能性が高いです。そのため、抗告する場合は審判書の内容を精査して、主張が認められなかった理由を分析することが大切です。

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寄与分の調停を申し立てるには、相手方(=他の相続人)のうちの一人の住所地の家庭裁判所に下記の書類を提出しましょう。遺産分割調停も寄与分を定める処分調停も基本的に必要書類は一緒です。ただし、各家庭裁判所独自の必要書類を定めていることもありますので、管轄の家庭裁判所のホームページも確認してみてください。なお、両方の調停を一緒に申し立てる場合、重複する書類はどちらかで提出すれば十分です。

  • 申立書
  • 収入印紙1200円分
  • 連絡用の郵便切手 ※裁判所によって異なる
  • 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本
    ※相続人の中に兄弟姉妹が含まれる場合などは追加で戸籍謄本が必要
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 被相続人の戸籍附票または住民票除票
  • 相続人全員の戸籍附票または住民票
  • (遺産に不動産があるとき)不動産登記事項証明書及び固定資産評価証明書
  • 遺産に関する資料の写し(預貯金の通帳・残高証明書や有価証券・投資信託に関する取引口座の残高報告書など)

寄与分が認められる要件は厳しいので、単に「介護に尽くした」「事業を手伝っていた」と主張しても簡単に認めてはもらえません。他の相続人に寄与分を認めさせるには、調停であっても、法律や裁判例に沿った主張・立証活動をしっかり行うべきです。主張や立証に説得力があれば、調停委員からも相手方に説得してくれるでしょう。なお、審判に移行した場合は、裁判官が判断することになりますから、なおさら証拠が重要です。

弁護士は、専門的な知識や経験に基づいて、寄与分を適切に考慮した遺産分割方法を考えてくれますし、寄与分を立証するための証拠集めもサポートしてくれます。このように、弁護士に依頼することで法律的にきちんとした主張・立証ができるようになるため、調停や審判を有利に進められる可能性が高まります。

特に審判は、話し合いではなく訴訟に近い手続きですから、より一層、法律的にきちんとした主張・立証が求められます。そのため、審判に移行した場合は弁護士に依頼することが必須といえるでしょう。

調停になると、家庭裁判所に何度も行かなければなりませんし、裁判所に提出する書面や資料の準備もしなければなりません。調停は平日に行われることから、仕事が忙しくて行けない方もいらっしゃるでしょう。

弁護士に依頼すれば、代わりに家庭裁判所に弁護士が行ってくれますし、書面や資料の準備もしてくれますから、手間やストレスが大幅に減ります。助言や共闘してくれる味方がいることは大きな心理的な支えにもなるでしょう。

遺産分割では、寄与分に限らず、特別受益や使い込みなどいろいろなことが問題になりがちです。例えば、被相続人と同居していた場合、他の相続人から預貯金の使い込みを疑われることもあるでしょう。このように寄与分以外のことが問題になっても、弁護士にサポートしてもらえます。

寄与分の調停や審判を有利に進めるには弁護士の助けが必要です。寄与分について他の相続人と争いがあるなら、早めに相続に詳しい弁護士に相談すると良いでしょう。

(記事は2021年10月1日時点の情報に基づいています)