贈与の取り消しは可能? 条件や方法、取り消した場合の贈与税について解説
一度誰かに贈与した財産について、あとから気が変わったとして、贈与を取り消すことはできるのでしょうか。贈与を取り消せるかどうかは、民法に定められたルールによって決まります。贈与の取り消しが可能な場合には、贈与税に関する留意事項があるため、法律と税務の両面につき十分に注意して対応しましょう。贈与を取り消すための条件と取り消しの方法、取り消した場合の贈与税などについて、弁護士が解説します。
一度誰かに贈与した財産について、あとから気が変わったとして、贈与を取り消すことはできるのでしょうか。贈与を取り消せるかどうかは、民法に定められたルールによって決まります。贈与の取り消しが可能な場合には、贈与税に関する留意事項があるため、法律と税務の両面につき十分に注意して対応しましょう。贈与を取り消すための条件と取り消しの方法、取り消した場合の贈与税などについて、弁護士が解説します。
目次
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民法上、以下のいずれかにあたる場合には、贈与契約の取り消しが認められています。
民法550条本文は、書面によらない贈与は各当事者が解除できる旨を定めています。したがって、口頭で約束した贈与については、贈与者が解除することが認められます。
ただし、すでに履行が終わっている部分については、例外的に解除が認められず、目的物の返還を請求することもできません(同条但し書き)。
<贈与の履行に当たる場合の例>
贈与が書面・口頭のいずれによって行われた場合でも、錯誤・詐欺・強迫によって贈与の意思表示を行った場合、その意思表示を取り消すことが認められます。
この場合、すでに贈与の目的物を受贈者に交付している場合でも、返還を請求することが可能です。
ただし、錯誤については、表意者に故意または重過失がある場合、原則として贈与の取り消しが認められないので注意が必要です(民法95条3項)。
また、錯誤・詐欺・強迫のいずれについても、善意無過失の第三者に対しては、贈与の取り消しを対抗することができません(民法95条4項、96条3項)。
(例)
錯誤を理由に、AがBに対するX不動産の贈与の取り消しを主張したが、その時点でBはすでにCに対してX不動産を贈与していた場合
→AはCに対して、贈与の取り消しを対抗できないので、X不動産はCのものになる
未成年者が贈与を行う際には、法定代理人に同意を得る必要があります(民法5条1項本文)。法定代理人の同意なく未成年者が贈与を行った場合、未成年者・法定代理人のどちらかが、贈与を取り消すことが可能です(同条2項)。
また、成年被後見人が単独で贈与を行った場合、成年被後見人・成年後見人のどちらかが、贈与を取り消すことが認められます(民法9条)。
なお、未成年者や成年被後見人が単独で行った贈与の取り消しは、錯誤、詐欺、強迫とは異なり、善意無過失の第三者にも対抗可能です。
贈与を行う見返りに、受贈者の側で何らかの義務を果たすべきとされる場合があります。これを「負担付贈与」といいます。
<負担付贈与の例>
ペットを引き取って育ててもらうことを条件に、毎月20万円を贈与する。
負担付贈与については、その性質に反しない限り、双務契約に関する規定が準用されます(民法553条)。受贈者が負担を履行しない場合は、債務不履行解除に関する規定が準用され、贈与者は贈与契約を解除できます(民法541条、542条)。
贈与者と受贈者が合意した場合には、理由を問わず、贈与契約を解約することができます。
反対に、以下のいずれかにあたる場合には、原則として贈与契約を取り消すことができません。
書面によらない贈与を解除できることの反対解釈として、書面による贈与については、原則として解除が認められません(民法550条本文)。
「書面」の代表例は契約書ですが、それに限らず、内容証明郵便や調停調書など、贈与契約締結に向けた当事者双方の意思が明確に表れた書類はすべて「書面」に該当します。
なお、書面による贈与であっても、錯誤・詐欺・強迫による取り消しや、未成年者・成年被後見人による単独行為の取り消しについては認められます。
口頭で行われた贈与であっても、すでに履行が終わった部分については原則として解除できず、したがって目的物の返還を求めることもできません(民法550条但し書き)。
ただし、錯誤・詐欺・強迫による取り消しや、未成年者・成年被後見人による単独行為の取り消しについては、贈与の履行が完了していても依然として認められます。
贈与を取り消す方法については、法律上、特にルールが決まっていません。したがって、何らかの方法で受贈者に取り消し(解除)の意思を伝えればよく、口頭の意思表示であっても有効です。
ただし、取り消しの意思表示を行ったことや、意思表示の日時を明確にするため、内容証明郵便などを活用することをお勧めいたします。
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相続の相談が出来る弁護士を探す贈与が取り消された(解除された)場合について、贈与税が課税されるかどうかの取り扱いは、以下のように整理されます。
参考:名義変更等が行われた後にその取消し等があった場合の贈与税の取扱いについて|国税庁
(1)履行前に贈与が取り消された場合
→贈与税は課税されません。
(2)履行後に贈与が取り消され、受贈者から贈与者に対して目的物が返還された場合
①贈与者から受贈者に対する目的物の移転について
(a)法定取消権または法定解除権に基づく取り消し、解除の場合
(例)書面によらない履行前の贈与の解除、錯誤、詐欺、強迫による取り消し、未成年者・成年被後見人による単独行為の取り消し、負担付贈与の負担が履行されない場合の債務不履行解除
→目的物の名義を受贈者から贈与者に戻すなどの方法により、取り消し、解除が確認された場合には、贈与税は課税されません。
すでに贈与税が課税されている場合には、税務署に対して更正の請求ができます(国税通則法23条2項)。
(b)(a)以外の場合
(例)合意解約
→贈与税が課税されます。
②受贈者から贈与者に対する目的物の返還について
→贈与税は課税されません。
上記のうち、特に以下の2点に留意しておきましょう。
締結済みの贈与契約を取り消せるかどうかは、民法のルールに従い、ケースバイケースで判断しなければなりません。また、贈与の取り消し(解除)を行う際には、贈与税の課税にも注意する必要があります。
もし判断に迷った場合には、法的な論点については弁護士に、贈与税については税理士にご相談ください。
(記事は2021年9月1日時点の情報に基づいています)
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