相続放棄したかどうか確認できる「照会」 家庭裁判所の手続きを弁護士が解説
自分より相続で先順位の人が相続放棄をしたかどうかを確認したい場合、どうすればよいでしょうか?その相続人本人に尋ねるのが、一番手っ取り早いでしょう。しかし、疎遠になっていると、あまり連絡をとっておらず、相続放棄をしたかどうかを尋ねるのに二の足を踏むこともあります。そういった時に利用できるのが「相続放棄の照会」です。相続放棄の照会をするための家庭裁判所での手続き方法を弁護士がまとめました。
自分より相続で先順位の人が相続放棄をしたかどうかを確認したい場合、どうすればよいでしょうか?その相続人本人に尋ねるのが、一番手っ取り早いでしょう。しかし、疎遠になっていると、あまり連絡をとっておらず、相続放棄をしたかどうかを尋ねるのに二の足を踏むこともあります。そういった時に利用できるのが「相続放棄の照会」です。相続放棄の照会をするための家庭裁判所での手続き方法を弁護士がまとめました。
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亡くなった方(被相続人)の遺産のすべて(プラスの財産である「資産」とマイナスの財産である「負債」の両方)を放棄することを相続放棄といいます。そして、原則として、被相続人が死亡し、自分が相続人となったことを知った日から3カ月以内であれば相続人は相続放棄をすることができます。
第一順位の相続人が相続放棄をすると、相続権が次順位の相続人に移ることになります。
例えば、こんな事例があったとしましょう。
川崎市に住む60代のAさんは、岩手県に住む兄が亡くなり、相続が発生しました。
兄には借金があったため、兄の子どもたち(甥と姪)は相続放棄すると聞ききました。兄の配偶者や父母は既に亡くなっています。
自分に相続権が回ってくるかもしれず、実際に甥や姪がすでに手続きを済ませたかどうかが気になりました。ただ、甥や姪は「叔父は父が借金を背負って大変な時期に助けてくれなかった」との思いからか、四十九日の連絡もなく、甥や姪から疎まれている気がしています。そこで、できれば直接、「相続放棄したかどうか」をきくのではなく、公的機関などで確認できないかインターネットを検索してみました。
すると、照会という手続きがあることを知りました。
上記の事例でいうと、Aさんの兄の相続について、第一順位の相続人であるAさんの子らが相続放棄をすると、相続権が第二順位の兄の弟であるAさんに相続権が移ることになります。
すると、Aさんは、兄の子らから自分に相続権が移ると兄の借金を相続しないためには相続放棄の手続きをする必要があります。なお、先順位の相続人である兄の子らに相続放棄をしたことをAさんに知らせる義務はありません。
Aさんは兄が死亡し、自分が兄の相続人となったことを知った日から3カ月以内であれば相続放棄できます。そのため、Aさんは兄の子らが相続放棄をしたということを誰かから教えてもらうまで待っていても良いようにも思えます。
しかし、相続放棄は家庭裁判所で行う審判手続きですので、兄の死から時間が経つほど、裁判官に自分が兄の相続人となった時期や経緯などについて詳しく説明する必要が生じます。そのため、できるだけ早期に相続放棄した方が確実に相続放棄ができ安心でしょう。
よって、事例のような先順位の相続人と次順位の相続人が疎遠である場合などは、先順位の相続人が(限定承認または)相続放棄をしたかを確認するために、次順位の相続人などは家庭裁判所に照会をする手続をとることができるのです。
相続放棄の照会ができる人は、下記の2通りです。
● 相続人
● 被相続人の利害関係人。例えば、被相続人にお金を貸していた債権者など
相続放棄の照会を申し立てる裁判所は、被相続人が亡くなった住所地を管轄する家庭裁判所です。なお、被相続人の最後の住所地は住民票除票又は戸籍の附表で確認することができます。
まず、相続放棄の照会にあたっては、照会者が相続人、利害関係人を問わず下記の2種類を家庭裁判所に提出する必要があります、
● 照会申請書
※相続放棄の申述の有無の照会をするための申請書は、提出先の各家庭裁判所によって、書式が少し異なりますので、照会先の裁判所のHPから申請書をダウンロードするとよいでしょう。
● 被相続人等目録
また、下記のとおり照会時に原則として必要となる添付書類については相続人と利害関係人で異なります。
[相続人が照会する場合の添付書類]
● 被相続人の住民票の除票(本籍地記載のもの)
● 相続人と被相続人との関係が分かる戸籍謄本
● 相続人の住民票(本籍地記載のもの)
● 返信用封筒と返信用切手
※弁護士に照会手続の代理を委任する場合は委任状
なお、相続放棄の照会において代理人となれるのは弁護士のみです。
※相続関係図(手書き可)の提出の協力を求められる場合があります。
[利害関係人が照会する場合の添付書類]
● 被相続人の住民票の除票(本籍地記載のもの)
● 照会者の資格を証明する書類(個人であれば住民票、法人であれば商業登記簿謄本または資格証明書)
● 利害関係の存在を証明する書面のコピー(ex 金銭消費貸借契約書、債務名義の写し)
● 返信用封筒と返信用切手
※弁護士に照会手続の代理を委任する場合は委任状
なお、相続放棄の照会において代理人となれるのは弁護士のみですが、照会者が法人の場合には申請会社の社員を代理人とすることができます。この場合には、代表印のある社員証明書の提出が必要です。
※相続関係図(手書き可)の提出の協力を求められる場合があります。
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事例のように被相続人の遺産が負債ばかりの場合、相続放棄の照会手続きの結果、自分に相続権が回ってきたことを知ったAさんは、自分に相続権が回ってきたことを知った日から3カ月以内に相続放棄をすべきでしょう。
また、被相続人に負債があった場合、被相続人の預金を使ってしまったり、財産を売却するなどしてしまうと相続放棄ができなくなります。このように思わぬ形で相続放棄ができなくなり、負債を相続させられることもありますので、相続放棄は弁護士に依頼して間違いなく進める方が安心です。
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相続の相談が出来る弁護士を探すもし、自分で相続放棄の申述の有無についての照会手続をとることが不安だという方がおられたら、相続放棄の照会手続の代理だけではなく、その後の相続放棄の手続(本当に負債の方が多いのか財産調査したり、相続放棄の手続をどのように行うかなど)の相談にも乗ってもらえますので、弁護士に依頼してみるとより安心でしょう。
(記事は2021年8月1日現在の情報に基づきます)
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